消費者行動 データに潜む落とし穴:自己申告と実際の行動に大きなギャップがあると判明

DIGIDAY

考えてみてほしい。あなたの会社が取得する、消費者のオンライン行動に関する自社データの3分の1以上が正確でないことが判明したらどうなるだろうか。壊滅的ではないにしても、少なくとも問題になる可能性があるはずだ。

消費者インサイトを提供するディスコ(Disqo)が行った新たな調査では、消費者の38%が自分のオンラインでの行動を正しく覚えていないという結果が出た。4月12日の調査結果リリース前に、DIGIDAYはこの研究を見せてもらった。

「言動ギャップ」

ディスコの調査は、この差異を「言動ギャップ(say-do gap)」と呼んでいる。研究では約5万4000人の消費者を対象に過去30日間の購買行動に関する調査を行い、同じ30日間に収集された実際のデジタル行動データと自己申告を比較した。

ディスコのプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントであるアン・ハンター氏は語る。「ユーザーに自分が何をしたかを尋ねることが、必ずしも彼らの実際の行動を知るためのもっとも正確な方法ではないことを、このことは示している。しかし、行動の理由を尋ねることの価値を否定するものではない」。

ディスコは、オンラインショッピングを3つのカテゴリー(自動車、旅行、食料品の買い物)に分け、キーワード検索、ウェブサイト訪問、モバイルアプリ起動という行動をキーワード、ウェブサイト、アプリのリストに基づいて照合した。これらのデジタル関連の行動を5回以上行った消費者には、「アクティブショッパー」というラベルが付けられた。

車カテゴリーにおいて消費者の自己申告のアクションと実際の行動とのギャップは53%、食料品ではギャップは33%、旅行ではギャップは28%だった。

「(消費者に意見を尋ねる形で収集した)オピニオンソースは、膨大な自社データ収集の方法のひとつとしてブランドたちがますます起用しつつある。しかしオピニオンソースだけでなく、それを消費者の行動から収集したデータと照らし合わせる必要がある。(オピニオンソースのみで大量にデータを取得すると)行動による識別子を失うことになる。しかし行動ベースの識別子は、必ずしも人々の自己申告データに取って代わられることはできないことを(調査は)示している。そして、観察に基づく正確な行動に関する情報源を見つけて、オピニオンソースと組み合わせることがさらに重要だ」。

メディア各社の反応

メディアエージェンシーたちは、ディスコの調査結果はいくつかの点で裏付けられていると述べている。

ホライゾンメディア(Horizon Media)のホワイグループ(WHY Group)でヒューマン・インテグレーション部門シニア・バイスプレジデントを務めるスティーブ・グラント氏は、「人間の記憶の信頼性の欠如、そして私たちが『表現された意図』と『明らかにされた意図』と呼ばれるものの間のギャップについて、研究心理学がすでに明らかにしてきたことの多くを、この研究は裏付けている」と語る。「これは、マーケティング研究に社会心理学や消費者心理学を取り入れることが重要であることを示す好例である。(今回の調査における)いずれのカテゴリーについても、メッセージを通じて想起の手がかりを与え、選択の枠組みを通じて明確な行動の道筋を作ることは、消費者の記憶に役立ち、より実際の購買行動に火をつける可能性が高い」。

オムニコムメディアグループ(Omnicom Media Group:OMG)の一次資料研究部門のマネージングディレクターであるパメラ・マーシュ氏は「私たちはこれらの調査結果に驚きはしていない」と語る。なぜならこの結果は同社のハーツアンドサイエンス(Hearts&Science)が2019年の「コンシャスディスコネクターズ(Conscious Disconnectors)調査」で明らかにした、「オンラインでの行動の記憶と、実際の行動との間の食い違い」を裏付けるものだからだ。マーシュ氏は同社の調査では「自己申告による平均アプリ滞在時間(3.26時間)と、回答者が実際にアプリを見て過ごした平均実時間(5時間)には33%の差があった」と言った。

年齢層別に見ると、最も自己申告と実際の行動のギャップが大きかったのは35歳〜44歳であった。しかし、公平を期すために言えば、キャリアや子育てなどの問題を複数抱える最も忙しい年齢層であることは間違いない。ハンター氏によると、ディスコはこのギャップの理由を説明しなかったが、親となる年齢層が最大のギャップを持っているとデータは示している、と述べた。

ハンター氏にとってもうひとつの驚きは、「自分が正しく記憶している」という自信と、実際に記憶が正しいか、との間に逆の関係があることだった。一般的には男性、そして裕福な人々、中年層の方が自分の記憶に自信があったという。「ダニング=クルーガー効果(持っている知識が少ないほど、自分の知識が多いと感じてしまう効果)かもしれない」と彼女は指摘した。「ブランドが消費者に「(自分の記憶の正確さに)どれほど自信があるか」と質問するときには、それがデータが正確であることを示すシグナルなのか、あるいは逆にデータが不正確であることを示すシグナルなのかを批判的に考える必要がある」。

[原文:New study reveals large gaps in what consumers think they do online — vs. what they actually do

Michael Bürgi(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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