新興企業 は、 インフレ へどのように対処しているか?:「さらに強まる前兆がある」

DIGIDAY

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ここしばらく、D2Cのエグゼクティブは価格の上昇に頭を悩ませてきた。綿から配送コンテナまでのあらゆる品目のコストが、パンデミックによって急騰したためだ。しかし今年は一般の買い物客にとって、インフレがはるかに重圧となり、しかもさらに悪化しつつある。

連邦政府からの新しいレポートによれば、4月第3週のインフレは40年ぶりの高水準を記録した。これに対して、小売業者のエグゼクティブは、ここ数年にわたって対策を準備してきた。以前の記事で解説したように、D2Cブランドは過去2年間に渡って、価格上昇を避けるために、ベンダーとの価格交渉や原材料の前倒し購入など、できる限りの対策を行ってきたのだ。

しかし現在、インフレがますます切迫したものとなるにつれ、各ブランドは新たな現実に対処する必要に迫られている。すなわち、ますます価格を気にするようになった買い物客に対して、自社の価値提案を再考することだ。もちろん、多くのD2C経営者は、すでに高品質の製品を手頃な価格で顧客に提供していると言うだろう。一方、マーケティングメッセージのなかで、製品の耐久性や価値を強調する方法を模索する企業も増えている。また、より安価な製品が、今後数カ月で、より多くの売上を牽引することに賭けている、ほかのブランドも存在する。消費者のコスト意識が高まるにつれ、パンデミック初期に急成長を遂げたいくつかのブランドは、消費者が購入するものをより慎重に選ぶようになるため、新たな現実に直面することになるかもしれない。

輸送コストを抑える戦略

Tシャツブランドのグッドライフ(Goodlife)の共同CEOを務めるアンドリュー・コディスポティ氏は、「インフレがますます激しくなるという前兆がある」と筆者に語った。

グッドライフはTシャツを48ドル(約6140円)から販売しており、過去1年間は値上げを行わなかった。コディスポティ氏は、同社の商品の約75%は国内生産だと筆者に語る。米国での高騰にもかかわらず、同社はアジア国内での輸送コストの増加の影響を受けなかった。同氏は、グッドライフが戦略プランナーを雇用するなど、ほかの方法で社内の効率化も試みたという。

それでもコディスポティ氏は、顧客が今後数カ月で価格を気にするようになると予測していると語った。「人々の目が肥えていくにつれ、クローゼットの商品の品質と耐久性を気にするようになり、その機能性についても関心を持つようになる」と、同氏は述べている。

その結果、グッドライフは自社商品の耐久性を強調する、いくつかのマーケティングキャンペーンに取り組んでいると、同氏は語る。たとえば、Tシャツを何回も洗濯したあとでも優れた品質を維持しているなどの訴求だ。また同社は最近になって永久保証も開始した。

「マーケティングのあらゆる要素と同じように、これは繰り返し行われ、新しいコピーを継続的にテストして、なにがうまく機能するかを探求することになる」と同氏は述べている。

高品質を打ち出す戦略

筆者が取材したほかのD2Cのエグゼクティブは、さまざまな理由から、今後数カ月に販売を増やすため安価な商品を重視すると語った。

「当社はラグジュアリーブランドで、当社の顧客の中心層は一般に比べればそれほど価格を重視していない」と、D2Cのタオル会社であるウィージー(Weezie)のCEOを務めるリンゼー・ジョンソン氏はメールで述べた。しかし、同社は頭髪用やジム用のタオルなど、多くの安価なアイテムを、「インフレのなかで価格を気にするようになった顧客に対応するため」、最近発売した。同社のクラシックなパイプエッジのバスタオルは64ドル(約8190円)から、頭髪用タオルは34ドル(約4350円)からの価格で販売されている。

一方で、クールーフットウェア(Kuru Footwear)のプレジデントを務めるショーン・マクギニス氏は、整形用フットウェア企業である同社は、気候が暖かくなるにつれ、ブーツやスニーカーなど、同社のほかのシューズのほとんどより安価であるサンダルが売れるようになることを予測していると語った。たとえば、同社のもっとも安価なスニーカーのモデルは135ドル(約1万7400円)だが、女性向けサンダルの最低価格は104ドル(約1万3300円)だ。同社はこのための準備として、今年3つの新しいスタイルのサンダルを発売しており、「例年と同様に、より多くの顧客がサンダルを選ぶと考えられ、それによって当社のAOV(平均注文金額)は秋や冬よりも多少減少するだろう」と同氏はメールで述べた。

ウィージーはグッドライフと同様に、買い物客の目がさらに厳しくなるのに応じて、自社商品がどれほど高品質かを周知するための新しい方法を模索していると、ジョンソン氏は述べている。たとえば、ウィージーは自社工場の舞台裏の光景を見せるようなマーケティングを増やすと同氏は語る。また同社は、昨年アトランタで開設したポップアップストアを延長し、はじめての恒久的な小売店舗を最近開設した。ジョンソン氏はこれによって、自社商品を購入するかどうかを決めかねている新しい顧客が、商品の感触を試す機会を得られると考えている。

本当に顧客のためになることを

これらの戦略はいずれも、D2Cブランドが過去10年間に行ってきたものと、それほど異なっているわけではない。D2C分野で最初の先駆者だったワービーパーカー(Warby Parker)やキャスパー(Casper)は、自社ビジネスが中間業者を排除することで、顧客にとって支出の削減に役立つと位置付けることに注力していた。

しかし過去10年間において、消費者は目ざとくなり、D2Cブランドが本当に独自の商品を作り出すのは困難になってきた。インフレが進むにつれ、衝動買いを促進してビジネスを生み出すことができたのはどのD2Cブランドか、多数の顧客に対して自社商品が必要だと信じさせることができたのはどのブランドか、ということが明らかになっていくだろう。

たとえばクールーのマクギニス氏は、同社の顧客が今後数カ月に裁量支出を減らしていくと予測しているが、同社が「当社の顧客のため本当になすべき作業を解決しているため」、継続的なインフレに対応できる有利な位置にいると確信していると語った。

「当社はこのような圧力の影響を一切受けないわけではないが、このカテゴリー全体と比べて、このようなサイクルの影響を受けにくいとは言える」と同氏は付け加えている。

[原文:DTC Briefing: ‘The writing’s on the wall’: How startups are responding to inflation]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)

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