大麻 をスタイリッシュなデザインで牽引する女性創業者たち【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

大麻を使うことは、新しい愛用者の時代における女性トップらのおかげで、ハイになるだけではなくハイクラスであることも意味するようになってきている。

女性消費者の好みに対応するブランド

マリファナの使用といえば、かつてはバハフーディやボブ・マーリーのポスター、地元のボデガで手に入れた巨大なボング(喫煙具)のイメージだったが、現在ではそのような寮暮らしの大学生のイメージを脱して、アートとデザイン主導の美的感覚が伴いつつある。その動向の最先端を行くのは新しいタイプの調剤薬局である。スタイリッシュなデザインと美しい宝石のような色調とベルベットの家具などのカラーを取り入れ、インテリアと同様にトレンディな製品を販売している薬局だ。そのような薬局が扱う高級ブランドには、ビボー(Beboe)、フラワーバイイーディパーカー(Flower by Edie Parker)、ハーハイネス(Her Highness)、ハウスオブパフ(House of Puff)、ゴサマー(Gossamer)、テトラ(Tetra)がある。どれも過去7年間にローンチしたブランドであり、おしゃれなボングやライター、巻紙や灰皿に特化しており、女性消費者の要望に対応している。

このようなアプローチは、これまでの複雑で魅力に欠けていた気化器と比較して、ジュール(Juul)がベイピングを手軽でクールにしたのと同様に大麻使用の革命と普及を推し進めている。ジュールの影響は、ジュールする(Juuling)が動詞になったことからもわかる。あるいは、もっとわかりやすいのは、タバコのバージニアスリム(Virginia Slims)がフェミニストにフォーカスした広告で女性の喫煙者を取り込んだ方法との比較かもしれない。その広告によって1970年代を通じて女性の喫煙が社会的に受け入れられるようになったのである。

女性が使いたいスタイルを取り入れたフラワーバイイーディパーカー

バージニアスリムの象徴的な広告は、フラワーバイイーディパーカーの4月のキャンペーンのインスピレーションだった。フラワーバイイーディパーカーは、イブニングバッグとホームウェアを扱う創業12年のブランド、イーディパーカーの姉妹ブランドだ。フルーツをかたどったガラス製パイプや花のデザインが施された巻紙、ベネチアングラス風の先が細くなったエレガントなボングなどの製品を展開している。巻紙は10ドル(約1500円)、パイプとボングの価格は95〜795ドル(約1.4万〜11.7万円)。

グッチ(Gucci)での勤務経験がある創業者のブレット・ヘイマン氏によると、4年前に大麻製品を販売するというアイデアは、女性の大麻使用やパーティに持っていけるワイン以外の製品についてチームで話し合っていたときに生まれたという。ビューティ・ウェルネス分野のほかのブランドと同様、フラワーバイイーディパーカーはこれまでは引き出しのなかやキャビネットの後ろに隠していたアイテムのデザイン性を高めて、恥じることなくテーブルの上に置けるものにすることを目指している。

「大麻というのは圧倒的に男性が使うものか医療用であり、時代遅れに感じられていた。魅力的な販売に関して革新的なものは何もなかった」とヘイマン氏は語っている。「女性は大麻において急速に成長している部分であり、生理痛の緩和のようなこれまでとは異なる目的のために大麻を利用するようになっている。文化的に大麻の革命が起きている。それがいまカルチャーで起こっていることだ」。


Flower by Edie Parker advertising in April 2022

米国で大麻使用が増えている背景

確かに、大麻文化と産業としての大麻の影響はまだまだ広がるだろう。バイデン大統領は10月、マリファナ所持で連邦政府から有罪判決を受けた何千人もの人々に恩赦を与えた。また、コロラド州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州はそれぞれ州レベルで娯楽用マリファナの使用を合法化している。2020年だけを見ても米国での合法的な大麻の売り上げは175億ドル(約2.6兆円)を超えており、ニューヨーク州はこの業界は2026年までに州内で6万件もの新しい雇用を生み出す可能性があると推定している。

加えて、特にアルコールの摂取その健康への悪影響がいっそう明らかになるにつれて、消費者製品としての大麻の人気はいっそう高まっている。米国疾病管理センター(CDC)によると、2019年に4820万人、つまり米国人の約18%が少なくとも1回は大麻を使用したという。特に女性の大麻使用は企業にとっては大きなチャンスだ。大麻の宅配会社、イーズ(Eaze)は「大麻の現状(State of Cannabis)」年次レポートで、同社の新規顧客で女性が占める割合は、2018年では38%だったのが2021年には48%だったと報告している。新規顧客のうちミレニアル世代が44.6%、そのあとにはZ世代、X世代、ベビーブーム世代が続いている。性別によるマリファナ消費に関する十分な全国データを入手するのは困難だが、薬物使用と健康に関する全国調査のデータでは2018年に生殖年齢にある妊娠していない女性の約13.7%が大麻を使用したと推定されている。

デザイン重視の大麻ブランドはすべて似たような女性顧客層を対象にしている。それは、いわゆる「大麻に関心あり(canna-curious)」のミレニアム世代またはX世代である。つまり、大麻の株、テルペン成分、効力、様々な器具などにこだわらずにマリファナを使いたいと思っている女性である。

アートを取り入れたハウスオブパフ

創業5年になるハウスオブパフは大麻アクセサリーブランドだ。創業者兼CEOであるクリスティナ・アドゥッチ氏は、同ブランドは大麻とアートと社会的正義が交差する場所に存在していると述べている。アドゥッチ氏とハウスオブパフのCOOであるホリー・ヘイガー氏は現代美術界出身で、製品や、クリス・ウィルソン氏やポーラ・フロレス氏のようなアーティストとのコラボレーションにはその経歴が利用されている。製品は、2パック入り巻紙が12ドル(約1700円)、ワンヒッターパイプが32ドル(約4700円)、灰皿が58ドル(約8400円)など。ヘイガー氏はローンチ以来売上高は前年比で増加していると述べたが、詳細は共有されなかった。また、ヘイガー氏は、アドゥチ氏とともに2020年に同社の業務に多くの時間を費やし始めたと述べている。

「私がアート界で達成しようと目指していたのは、アートを一般の人々がもっと手頃に楽しめるようにして、女性とBIPOC(黒人、先住民、有色人種)のアーティストを取り込むことだった」とヘイガー氏は語っている。「ハウスオブパフによってそのミッションがアート界においてよりもずっとうまく達成できることに気づいた。(デザインのために)我々が持っているアーティストのネットワークにリーチして、大麻をスタイリッシュなライフスタイルにするために活用する」。

ファッション業界から大麻業界へ移行する人材

ネガティブなイメージが消えつつある大麻業界では収益化が進んでおり、連邦レベルで合法化される可能性が高まるにつれてウェルネスとファッション業界に新たな機会を生み出すだろう。すでにファッション業界から人材が流入しつつある。そのひとりには、以前ストリートウェアブランドのOVOとイージー(Yeezy)での経歴を持つヘイリー・ディニーン氏がいる。同氏は現在、社歴4年の大麻アクセサリーブランド、サックビル(Sackville & Co)を経営している。CBDも同じような現象を経験している。2020年、CBDがウェルネスの顔を変えると思われたときにヘリテージビューティブランドの重役たちがCBDのインディーズブランドへと移行したという動きがあった。ファッションブランドも商品やアクセサリーを通じてこの分野に進出している。アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)は巻紙とライターを販売している。

「最高の状態にあるときのファッション業界では文化的に起こっていることが反映されている。ファッション業界の多くの人々が大麻に関わるようになるのは必然だ」とヘイマン氏は語っている。

大麻業界が抱える課題

しかし、現時点では難解な税法や地方の流通規制、オンラインマーケティングや広告における障壁、運転資金へのアクセスの欠如などまだ多くの課題が山積みとなっている。

フラワーバイイーディパーカーは12年前にローンチした姉妹アクセサリーブランドのブランド認知度に依存している。オンラインおよびペンシルベニア州やコロラド州などの薬局100軒で大麻アクセサリーを販売している。ヘイマン氏によると、売上の大部分は薬局を通じた卸売だという。

ロサンゼルス拠点の小売店で、自社の喫煙具も製造しているテトラの共同創設者、モニカ・ケムスロフ氏によると、テトラはソーシャルメディアでの広告を禁止されているという。また、同氏によると、テトラはShopify(ショッピファイ)から高リスクでないカテゴリーのブランドの5倍の取引手数料を課されているそうだ。同社のライターは約45ドル(約6600円)、灰皿は48〜800ドル(約7000円〜11.7万円)、パイプは48〜85ドル(約7000円〜1.2万円)。ケムスロフ氏は2020年に売上高が大幅に増加したと述べているが、具体的な数字は明らかにしていない。同氏はロックダウン期間に娯楽のソースとして、または自宅待機の間の不安を解消するための助けとして娯楽用大麻が注目されるようになったと推測している。

ハウスオブパフは「ジョイント(巻紙に巻いた大麻)ホルダーの使い方」や「かわいいピンクのパイプ」などのSEO用語への投資に注力している。同社はまた、アドゥッチ氏が司会を務める教育用のYouTube動画の制作にも投資している。2021年に公開された「完璧なジョイント(巻紙に巻いた大麻)を巻く方法」というタイトルの3分弱の動画は、登録者が5000人に満たないアカウントを通して100万回以上再生された。アドゥッチ氏によると、同社は動画のセットデザインと音質を留意してリラックスした雰囲気を醸し出し、親しみやすいものにしたという。しかも司会には女性を起用した。

アドゥッチ氏は次のように述べている。「合法的な大麻は新規消費者と経験のある消費者両方にとって目新しいものだ。我々は皆学んでいるところであり、いまあるコンテンツの多くは急速に変わりつつあるトレンドについてのものだ。しかし、我々は(当社の教育コンテンツで)基本に立ち返っている。なぜなら、たとえCBDだけだとしても、消費者の多くは製品を消費し始めたばかりだからだ」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Women are driving high-design in cannabis

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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