Amazonはいま、出品者に何ができるのか:コスト負担の増加とインフレ懸念が広がる

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いま、米国のあらゆる企業はインフレに苦しんでいる。最大手の企業さえも無傷ではない。たとえばウォルマート(Walmart)は7月末、四半期および年間の利益の予測値を引き下げた。Amazonは第2四半期の決算を7月28日に投稿したが、同様な困難に直面すると予測されている。

Amazonストアの売上額の約60%を占める小規模の企業も、インフレが激しい環境に対応することに困難を感じている。メットライフ(MetLife)と全米商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)の中小企業指標(Small Business Index)は、米国における小企業オーナーの88%が、自社ビジネスへのインフレの影響について心配していることを示している。しかしAmazonは、コストの増加を、燃料の追加料金などの形で出品者に負わせることで、インフレに対処することを選んだ。

Amazonの出品者にとって、料金の増額は何カ月にもわたって積み重なってきたものだ。今年1月にAmazonは、今後の運用経費増加を部分的に補填するため、FBA(フルフィルメントby Amazon)のフルフィルメント料金を5.2%増額した。そして4月には、同社の配送サービスを使用するオンライン小売業者から5%の燃料およびインフレによる影響コストを徴収しはじめた。Amazonの小売業者が負担している価格上昇はこれだけではない。輸送、配送原材料などのコスト上昇もサプライチェーンに多くの負担となっており、小売業者はこれにも対処する必要がある。

コスト負担が出品者たちに与える影響

Amazonで出品者の売上を最適化する企業であるサプライキック(SupplyKick)のCEOを務めるクリス・パーマー氏は、米モダンリテールへの電子メールによる回答において、「製造業者や配送運輸業者からのコスト増大は、出品者に大きな影響を与えている。サードパーティ出品者にとって、これらのコスト上昇を吸収することはますます困難になってきている」と、述べている。パターン(Pattern)のeコマース担当バイスプレジデントを務めるヒュー・ヒンクソン氏は、出品者は材料、労働力、配送のコスト上昇を注視していると語る。同社はAmazonで最大の収益を上げている販売主体のひとつだ。

一方で、多くの出品者やAmazonサービスプロバイダは、資金の節約のため新しい戦略を試みるかたわらで、サードパーティの出品者が支援を必要としているこの時期にAmazonが行える各種の支援を求めているが、eコマース大手であるAmazonがそのような支援を採用するかどうかはいまのところ明らかでない。代理店により提案された変更には、運用サービスの改善、倉庫での長期保存コストの低減、小売業者への内部および外部の支援の拡大などが挙げられる。

Amazonの第1四半期の決算発表では、サードパーティの出品者サービスからの実売上は253億3000万ドル(約3兆3700億円)と、前年比で7%増加した。しかし、2021年の第4四半期と比較すると、16.4%も減少している。

手数料率の低減

シアトルを拠点とする大手小売業者であるAmazonとマーケットプレイス出品者との関係は最近不安定になっているが、同社は今すぐいくつかの方法で出品者を支援することができる。

Amazonのマーケティング代理店のフォードベイカー(Fordebaker)を運営しているトム・ベイカー氏は次のように述べている。「企業が値上げを行わなければならない状況に追い込まれたなら、Amazonは手数料率を引き下げるのが望ましい。同社はすべての関係者の利益を増やすことをめざしたいはずだ。企業が現在の価格を維持する、または広告やサプライチェーンのコストの増加で失った利ざやを取り戻せるよう支援することは、双方の利益となる」。

Amazonは2021年に、自社のマーケットプレイスのウェブサイトで小売業者によるすべての販売から34%のシェアを受け取っており、これは2014年の手数料である19%よりも増加していると、ブルームバーグ(Bloomberg)は報じている。

最良の在庫管理システムを見いだす

いくつかの代理店は、出品者の財務的な苦難が積み重なっている現在、Amazonが最低でも出品者の技術的な問題を低減することを勧告している。たとえばパーマー氏は、同社が近日中に配送ポータルを切り替えると語っている。「出品者に対するデッドラインを延長したり、切り替えを遅らせることを希望している出品者に対してコストを免除したりすることは、現状で非常に大きな助けとなるだろう」と、同氏は付け加えている。

Amazonは、同社の在庫ワークフローを9月1日からSend to Amazonに置き換える。Send to Amazonは配送作成ソフトウェアで、パッケージの作成プロセスをより簡単で柔軟に行うことができる。過去には、企業所有の倉庫に到着した配送品のチェックや保管の遅延が、Amazonのフルフィルメントサービスを主に使用している出品者にとって問題となっていた。しかし、新しい技術システムへの切り替えは常に新しい、予見できない問題を引き起こす可能性がある。

一方で、出品者は自分たちの必要に応じたもっとも効率的なサービスを見つけることも必要だ。ベンダーセントラル(Vendor Central)経由でAmazonへの販売を行っている企業は、コスト削減のため、コスト率の交渉を試みることをあきらめ、代わりにセラーセントラル(Seller Central)に切り替えていると、ベイカー氏は述べている。サードパーティの出品者はセラーセントラルの統計データにアクセスできるが、ベンダーセントラルを使用する場合にはこのサービスが有料となる。「当社はいくつかの企業に対して、このような調整や、切り替えを行うことについて、利点と欠点を比較考慮する支援を行った」と、同氏は述べている。

Amazonはセラーセントラルでバックエンドのレポートを簡素化および合理化し、「出品者が在庫レポートのレビューに費やす時間を減らして、不確定な時代において必要な時期に、必要な場所で転換を行うために、より多くの時間を充てられるようにできる」と、パーマー氏は付け加えている。

コスト増大の相殺

しかし、出品者が直面している苦難はこれだけではない。テックアクセサリーブランドのウノサウンド(UnoSounds)や、ペットケア企業のスニッフ・アンド・リキット(Sniffe & Likkitt)などの企業と協力しているベイカー氏は、「比較的小さいものの、最近の燃料費の追加料金には失望した。Amazonはコストを簡単に吸収できるにもかかわらず、コストを転嫁することを選んだ」と述べている。

出品者は、Amazonが4月に5%の燃料およびインフレの追加料金を課すことを決めたにもかかわらず、同社の広大な倉庫ネットワークを使用し続けているが、同社は保管コストを引き下げることができると、ある専門家は勧告している。

「Amazonの倉庫における長期的な保管手数料のコストを引き下げることが、ひとつの大きな機会だ。同社の倉庫の容積はかつてないほど大きくなっている」と、パターンのヒンクソン氏は述べる。「また、レビューへの対応について出品者により多くの制御権限を与えることで、販売を加速するよう支援することも可能だ」と、同氏は付け加えている。

しかし依然として、Amazonからの支援予定がない状況では、ブランドがインフレのコストを相殺するためのもっとも簡単な方法は値上げだ。

「ブランドが値上げを恐れるべきだとは、私は考えていない。最低でもテストするべきだ。段階的な変更を行い、販売速度やオーガニックランキングへの影響を測定してみることだ」と、ベイカー氏は述べている。

[原文:Amazon Briefing: How Amazon could aid sellers as inflation concerns pile up]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:猿渡さとみ)

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