TikTokers が番組「Not So Pretty」に感化され、化粧品を捨てている:タルクへの懸念と過剰反応という指摘も

DIGIDAY

4月、HBOは新しいドキュメンタリーシリーズ「Not So Pretty」を公開した。番組はキキ・パーマー氏がナレーションを担当、4つのエピソードに分かれており、それぞれのエピソードでは美容業界の異なるセグメントにスポットを当てている。各エピソードのタイトルは「メイクアップ」「ネイル」「スキン」「ヘア」だ。

アスベスト汚染されたタルクへの懸念

最初のエピソード「メイクアップ」では、タルクに注目している。タルクは、アイシャドウからジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)のベビーパウダーにいたるまで、美容製品やパーソナルケア製品によく含まれている鉱物だ。一部のタルクには、発がん性物質として知られているアスベストに汚染されたものがある。

ポップシュガー(Popsugar)が報じたように、「2018年にジョンソン・エンド・ジョンソンは、アスベストに汚染されたタルクが同社のベビーパウダーに含まれていたことが原因で癌を発症したとして、22人の女性から提訴された。この訴訟で、同社は40億ドル(約5190億円)以上の賠償金の支払いを命じられている」。

「Not So Pretty」の製作者たちは35分間のエピソードの中で、コリン・オルティリョ氏など、アスベストを吸い込むことによって起こる腫瘍である中皮腫と診断された人々にインタビューを行っている。視聴者としては、こうした被写体の体験に共感するのはごく自然なことだ。また、化粧品に含まれるアスベストの存在を暴露した情報によって、化粧品を使用している自分自身や大切な人のことも心配になってくる。この「メイクアップ」のエピソードは、本来ならこのようなことは確実に「起こらない」ようにするはずの行政機関(FDAなど)が、必ずしもそうしていないということを人々に思い知らせるものだった。

タルク含有の化粧品を大量に捨てるTikTokerたち

その結果、#notsoprettyというハッシュタグが生まれ、TikTokでは1960万回再生されている。TikTokの投稿の多くでは、おそらくこのエピソードを見て自分の化粧品を見直し、ルーティンからタルクを排除しようという気持ちに駆られたクリエイターたちが、化粧品を大量に捨てる様子が記録されている。

ヴィクトリア・モーガン氏(25歳)も、化粧品を捨てたユーザーのひとりだ。44秒の動画の中で、彼女はたとえばアナスタシアビバリーヒルズ(Anastasia Beverly Hills)、ローラメルシエ(Laura Mercier)、アーバンディケイ(Urban Decay)などの製品を捨てている。処分の最中、ひとつゴミ箱行きになるたびに「あなたはもう終わり」と彼女は宣言した。「もともとドキュメンタリーが大好きで、それに今回の番組はナレーションがキキ・パーマー氏だった」と話すモーガン氏は、「衝撃的だった。タルクが化粧品に使われているなんて思いもよらなかった。ジョンソン・エンド・ジョンソンの裁判は知ってたけど、自分が長年使ってた製品にタルクが使用されてたなんて想像もしなかった」とGlossyに語った。

「自分の化粧品の約半分を処分した。ゴミ箱の中を見て、同じようなことをするクリエイターをそのうち見ることになるんだろうなと思いながら、全部またゴミ箱から取り出して(処分する過程を記録するために)携帯を手に取った。いかに多くのハイエンドな製品にタルクが含まれているかを見せるのによい方法だった。怒りがなければ、何も変わらない」とモーガン氏は言う。彼女の投稿に対して、インフルエンサーのレミ・ベーダー氏はこうコメントしている。「私もタルクフリーの時期があって、カバーFX(Cover FX)を使ってて、それは気に入ってた。でもほとんどのものにタルクが入っているので、もうあきらめてる😳」。クリーンビューティブランドのセイ(Saie)は、「Not So Pretty」が引き起こした会話をチャンスと捉えた。「これは私たちの出番かもしれない」とコメントし、タルクフリーの選択肢として自社ブランドを勧めている。

一方で、過剰反応を指摘する声も

消費者が心配するのも、ある程度までは正しいが、アメリカ食品医薬品局(FDA)はおそらく「化粧品の規制方法という意味ではもう少し厳しい」と指摘するのは、このドキュメンタリーに対して対照的な反応を投稿した化粧品化学者のジャヴォン・フォード氏だ。TikTokに18万4000人のフォロワーがいるフォード氏は、「みんな、タルクをベースにした化粧品を捨てる必要はないよ」と発言している。

ドキュメンタリーでは、この問題を両極端にとらえすぎている、とフォード氏は言う。だが「人生のほとんどのことがそうであるように、物事には程度というものがある。毒になるかどうかは常に量の問題だ」。

フォード氏は、通常、化粧品検査には許容できるとされる閾値がある点を指摘し、「(番組製作者は)その製品にわずかでもアスベストが含まれていれば危険とみなしている」と説明した。「(製作側は)一般にアスベストがないことを求めているのではない。アスベストは天然化合物なので、現実的にはアスベストを避けることはできない。アスベストは存在するだろう。それをやみくもに有害だと言うのは、実用的な見地からすると役に立たない」。

タルクの代替品が抱える問題

複雑な問題をさらにややこしくしているのは、化粧品に含まれるタルクの代替品にマイカがあり、これにも独自の問題があるという点だ。マイカの採掘は児童労働によって行われることが多いため、2019年にリファインリー29(Refinery29)は、それを美容業界の「もっとも暗い秘密」と呼んでいる。もうひとつの代用品であるシリカは、「吸い込みすぎるとケイ肺症(肺の病気)を引き起こす可能性がある」とフォード氏は述べている。

フォード氏は、このドキュメンタリーを見て不安になった人々からの質問を受けて、人は目にしたものに実際に恐怖を感じているのだと認識した。それが彼にしてみれば、このドキュメンタリーシリーズの一番の問題である。「番組は人々に疑問を抱かせて、自分でも調べてみようと思わせるスタンスであるべきで、番組だけで完結して結論にいたるべきではない」。

消費者が安心して製品を使用するには

それでも消費者は、どこに線を引くのかを自分で決めなくてはならない。

「『クリーン』や『グリーン』など、製品ラベルに書かれていることに関係なく、自分の体がうまく反応するかどうかを確認するために、化粧品は必ず1週間のパッチテストを行うこと。アレルギー反応が出ることもあるし、現代の定義では完全に安全な製品でも、体質に合わないこともある」とフォード氏はアドバイスしている。「(それにこれらの製品は)どれも吸い込むべきではない」。

「これはまだ発展途中の問題のため、コメントするのはむずかしい」と言うのは、エクスペリメント(Experiment)の共同創業者でチーフプロダクトオフィサーを務めるエミー・ケッチャム氏だ。「配合者の立場からすると、特に汚染物質問題が知られている成分については、サプライヤーの分析方法を入念に調べることが重要だ。タルクのほとんどは汚染されていないので、成分としては悪者にされるべきではないが、原材料の文書にアクセスすることなく、消費者が何が安全で何がそうでないかを知るのはむずかしい」。

それよりもむしろ彼女は「私たちが安心してタルクの使用を再開できるように」、FDAがアスベスト検査に関するガイダンスを早急に更新することを期待している。

[原文:Glossy Pop Newsletter: ‘Not So Pretty’ drives TikTokers to question talc and throw out their makeup]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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