米独立記念日と重なる週末の7月4日に、同国の一部のメディア企業の従業員は、在宅勤務を終了する。だが、その雇用主の多くは、9月に従業員が正式にオフィスに戻るのを期待している。
2020年3月にオフィスを閉鎖して以来、米国のメディア企業のオフィス出勤再開の日程は、流動的な目標だった。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やロイター(Reuters)のような一部の企業は、1月に従業員を戻す計画だったが、新型コロナウイルスの感染者が秋から初冬にかけて増加したため、予定を2021年夏に先送りした。今は、メディア企業のオフィス出勤再開時期は固まったが、企業は従業員をオフィスに慎重に戻そうと努めているため、計画のほかの側面は依然として流動的だ。
- 米国のメディア企業は、7月からオフィス出勤を段階的に再開し始める。
- 企業は当初、従業員のオフィス復帰を任意とし、場合によっては人数を制限する。
- 企業は、9月に正式にオフィス出勤を再開する。
- 9月に全従業員が(少なくとも部分的に)オフィス勤務に戻ると見込んでいる企業がある一方で、初期の時点ではより柔軟な企業もある。
米DIGIDAYが4月に、メディアおよびマーケティングのプロフェッショナル329人を対象に調査を実施したところ、半年以内にオフィスでのフルタイム勤務に戻る意思があると答えた回答者は、半数を下回った。ここでは、一部のメディア企業の方針をもっと細かくみていく。
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BuzzFeed
BuzzFeedは、7月中頃から任意でのオフィス出勤再開が進められている。「柔軟な再開」だ。
広報担当者によると、BuzzFeedのチームは、9月に「より広範な復帰」を見込んでいる。BuzzFeedでは、スケジュールに柔軟性があるハイブリッド型勤務モデルを可能にしている。大半の役職とチームについては、従業員に対して「一部の営業日」にオフィス勤務が求められる。広報担当者によれば、どのチームが何日出社を求められるかについては、まだ最終決定が下されていないという。
コンデナスト
コンデナスト(Condé Nast)はすでに、夏にオフィスを利用する選択肢をチームに与えている、と広報担当者は述べている。9月7日から大半の従業員をオフィスに復帰させることを目指しており、完全なオンサイト勤務とハイブリッド型勤務を組み合わせる。
フォーブス
フォーブス(Forbes)は、9月13日から始まる週に、オフィス出勤希望者に対して柔軟なスケジュールでオフィスを再開する。
フォーブスは、4月に「オフィスへの復帰」調査を実施した。CEOのマイク・ファデーレ氏は6月21日の社内通達で、調査には従業員の90%近くが回答していると伝えた。この通達は米DIGIDAYにも共有された。ファデーレ氏によれば、調査結果では、リモート勤務とオンサイト勤務の「希望者が入り交じっていた」という。「ハイブリッド型労働を導入して、どちらのモデルにも対応する計画だ」と、ファデーレ氏は書いている。
社内通達によると、フォーブスのマネージャーたちは、数週間以内に従業員に連絡を取り、希望する勤務スケジュールについて話し合う1対1のミーティングの調整をする。これは、会社が「スムーズなオフィス出勤再開のために設備や技術サポートの準備をする」のに役立つ、とファデーレ氏は書いている。
グループ・ナイン・メディア
グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)で最高人材活用責任者(CPO)を務めるアニー・トロンバトーレ氏は、オフィス出勤再開計画について、6月25日に全従業員に最新情報を伝えた。秋にオフィスを再開し、従業員には準備のために30日以上前に通知する予定だ。それまでに、任意でオフィスに出勤できる試験プログラムを7月下旬に開始する。同社のブロードウェイ568番地にあるオフィスでは、従業員が先着順に「チェックアウト」できるよう、デスク数が制限される。
このプログラムに備えて、7月5日から始まる週より、ロサンゼルスとニューヨーク市のオフィスにある各デスクの中身は梱包され、ラベルを貼って保管される(従業員の私物は本人が持ち帰るか、オフィスに戻るまで保管できる)ので、オフィス空間を再考できる。今はまだ、どの役職がフル対面、ハイブリッド、フルリモートに適しているのかを評価中だ。任意の復帰やワクチンといった話題について無記名アンケートも従業員に送っているところで、従業員向けの説明会を開く予定だ。
ハースト
ハースト(Hearst)のオフィスのうち、ハースト・タワーなどのいくつかは、従業員に開放されている。公式には、9月にハイブリッド型モデルで従業員をオフィスに復帰させ、何日かは在宅勤務、残りの何日かはオフィス出勤の形で働いてもらう予定だ。
リーフ・グループ
ハンカー(Hunker)、ウェル・プラス・グッド(Well + Good)といったライフスタイル・ブランドを所有するリーフ・グループ(Leaf Group)は、オンサイト勤務の希望者向けにオフィスをすでに再開したが、希望者にはリモートワークをさせている。これまでのところ、従業員の大多数は毎日、リモートワークを続けているが、オフィスに出社する従業員が増えていると、広報担当者は事例をもとに語った。
サム・スパイダー・スタジオズ
サム・スパイダー・スタジオズ(Some Spider Studios)では、従業員をオフィスに戻す計画はまだ準備中だ。秋に近づくまで再開しない、とCOOのメアリー・ケイト・マクグラス氏は述べた。同社は最近、リモートワークとオフィスへの復帰時期に関する従業員の意識を調べるために、社内調査を行った。
ニューヨーク・タイムズ
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、レイバー・デー(9月の第1月曜日)の週に大半の従業員をオフィスに復帰させる見通しだが、9月いっぱいは、日常業務の把握や、保育・高齢者介護の手配、家事、通勤の問題解決に充てる時間を与え、必要なら出社を週に1〜2日にして「容易に復帰」できるようにするつもりだ、とエグゼクティブバイスプレジデント兼最高人事責任者(CHRO)のジャクリーン・ウェルチ氏は語る。10月には、もっと通常の日常業務になる、とウェルチ氏はつけ加えた。
ワシントン・ポスト
ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、7月6日に段階的なオフィス再開を開始する。9月には、全従業員がオフィス出勤を再開し、週に3日以上オフィス勤務をする見通しだ。
トラステッド・メディア・ブランズ
トラステッド・メディア・ブランズ(Trusted Media Brands)の従業員は、9月から、(おそらく週1~3日の)パートタイムでオフィスに復帰する選択肢を与えられる。
最高人材活用責任者(CPO)ジェン・ティレル氏は、次のように語る。「うまくいくことと、いかないことを確認する鍵は柔軟性だ。その都度、適応していく。優秀な人材を失うリスクを冒さず、職務を考慮して妥当性がある場合には、本人の希望に合わせることを目指す」。
テイスト・オブ・ホーム(Taste of Home)の料理チームの一部や、トラステッド・メディア・ブランズのビジュアルスタジオなど、一部の従業員はパンデミック中もオフィス勤務を続けてきた。ティレル氏によると、最近のフルタイム雇用の半分は、完全なリモート勤務だったという。
バイス・メディア・グループ
バイス・メディア・グループ(Vice Media Group)の米国の従業員は、フォーカスグループでの調査・フィードバックが提供されたのち、9月にオフィス出勤を再開する。
バイス・メディア・グループの広報担当者によると、従業員が「リモートワークとオフィス勤務のバランスを好む」という事実を踏まえ、従業員の役割や快適度のような変動要因に基づいて、「複数の」職場復帰モデルを考案中だという。ハイブリッド型勤務の従業員は、会社のニーズと役職に応じて、定められた日数をオフィスで働く。また、従業員は、ほぼオンサイト、ハイブリッド、ほぼリモートの3つの勤務形態に分類される予定だ。
ボックス・メディア
ボックス・メディア(Vox Media)では、7月6日から、ワクチン摂取済みの従業員は任意でオフィスに復帰できるが、人員の最大10%という制限がある。9月には、「完全なオフィス運営を再開する」つもりだ、と広報担当者は語った。
[原文:Publishers will start bringing people back to the office after Fourth of July holiday weekend]
SARA GUAGLIONE(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:小玉明依)