IP の相互活用で手を組むゲーミングとストリーミング:「オーディエンスとの親和性が熱狂的なファンにつながる」

DIGIDAY

メディア形態のひとつとしてビデオゲームの人気が急速に高まっており、Netflixやパラマウントプラス(Paramount+)などのストリーミングサービスはこれに注目している。エンターテインメント企業各社は、このストリーミング戦争に勝利するため、人気ゲームのIP(知的財産)を自社サービスに取り込んだり、逆に自社の既存IPをゲーミング業界に対応させたりと、しのぎを削っている。

2022年12月15日、Amazonプライム・ビデオ(Prime Video)がPlayStationの人気ゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』(God of War)をベースにしたドラマシリーズの制作を発表したが、多くの業界関係者にとってこれはとくに驚くほどのことではなかった。

なにしろこの作品は、今後公開が見込まれている「フォールアウト(Fallout)」「マスエフェクト(Mass Effect)」をベースにしたドラマシリーズと並んで、ベゾス氏率いる同社が2022年に手に入れたゲーミングIPとしては3番目のタイトルになるからだ。

ゲーマー拡大でゲームIPは大人気コンテンツに

近年、ビデオゲームIPをあてにしているストリーミングサービスは、Amazonプライムだけではない。リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)にインスパイアされたNetflixのアニメ「ARCANE:アーケイン」は、同プラットフォームで2021年に最も人気のあった番組のひとつであり、パラマウントプラスは、「ヘイロー(Halo)」シリーズの第1作目が2022年3月に封切られるよりも早く、同作のシーズン2の制作を許可した。

またHBOからは、待望の「ラスト・オブ・アス(The Last of Us)」シリーズが、2023年に公開予定だ。ほかにも同様の例は多数ある。

ゲーマー人口の増加に応えて、彼らに愛されるストーリーをストリーミングメディアに取り入れ、どんどんと拡大するゲーマーというオーディエンスのなかに食い込もうとするのは、ビジネスとして非常に賢明なやり方だ。ストリーミングサービスもリニアテレビ企業も、ゲーム開発者やライブストリーマーが狙うのと同じユーザー層をめぐって競争していることに気づき、それに対応するべく提供内容の調整を始めている。

「結局のところ、ストリーミングサービスであろうと、ケーブルテレビやゲーミングの環境であろうと、基本原則は、オーディエンスとの親和性が最終的に熱狂的なファンにつながるということだ」。MTVエンターテインメントスタジオ(MTV Entertainment Studios)とパラマウント・メディアネットワークス(Paramount Media Networks)のフランチャイズ・ソーシャルメディア担当シニアバイスプレジデントであるタイラー・ヒッセイ氏は、 こう話す。

「IPからオーディエンスにつながるオポチュニティがあるならば、それがストリーミングのドラマシリーズであれ映画であれ、プラットフォームを超えて活用すればいい」。

eスポーツ業界の新たな収入源にも

ゲーミングとストリーミングメディアの融合は、従来のエンターテインメント企業に恩恵をもたらすだけではない。厳しい市場環境のなか、投資家たちからの収益性を求める声が高まっているeスポーツ業界においても、魅力的な収益源となっている。フェイズ・クラン(FaZe Clan)などのeスポーツ組織は、ストリーミングサービスに売ることができる独自のIPを作成するべく、コンテンツ制作スタジオとしての事業に軸足を移しつつある。

「企業として確実に前進するために全力を傾けるべき流れは2つある」と、かつてフェイズ・クランCFOを務め、現在はeスポーツ関連企業のゲームスクエアeスポーツ(GameSquare Esports)のCEOであるジャスティン・ケンナ氏はいう。

「1つはコンテンツで、中長編のコンテンツを通じてゲーミング分野のストーリーをパッケージ化して伝えることだ。だがもうひとつの要素がある。それはパーソナリティやクリエイターなどインフルエンサーと協力してIPを開発し、それを自ら所有することだ」。

戦略的なIP相互活用の動きも

最近のストリーミングサービスの戦略の変化として、ゲーミングとストリーミングビデオのあいだでIPの相互活用のしくみを活かしていこうとする動きがある。たとえば、米マスメディア企業パラマウント・グローバル(Paramount Global)のMTVEスタジオ部門は、ゲーミングのIPをテレビ番組に取り込むだけでなく、マインクラフト(Minecraft)やロブロックス(Roblox)などのプラットフォームでゲーム内アクティベーションを行い、「ワイルド・アン・アウト(Wild ‘n Out)」や「ティーン・ウルフ:ザ・ムービー(Teen Wolf: The Movie)」といった番組のプロモーションを行っている。ストリーミングサービスが今後もオリジナルシリーズにゲーミングIPを活用していくならば、こうしたゲーム内タイアップもより広く行われるようになるだろう。

「私たちは、Netflixと協働したりディズニープラス(Disney+)とアクティベーションを行ったりしてきたが、彼らのほとんどは、配信、プロモーション、エンゲージメントの側面から物事を見ているのだとわかった」と、eスポーツ企業スーパーリーグ(Super League)のチーフストラテジーオフィサーであるマイク・ワン氏はいう。同社はパラマウントのために、マインクラフトとロブロックスでのインゲームエクスペリエンスを設計したメタバース制作会社だ。

「だが」と、同氏は続けた。「パラマウントプラスほど、進行中のエンゲージメントを推し進めるために、本当に戦略的な仕事をした人たちはいなかった」。

[原文:Why streaming wars between Netflix, Paramount+, others are heading to video games

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

Source

タイトルとURLをコピーしました