下着D2Cのサードラブ、キットアンダーガーメンツを買収:大規模な顧客ベース拡大を計画中

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何年にもわたりミレニアル世代に向けたオンライン販売専門のブラの新興企業として知られてきたサードラブ(ThirdLove)が今年、ブランド成長のため大規模な計画を立てている。

4月25日に発表されたもっとも大きなニュースは、サードラブが創設から3年の新興企業であるキットアンダーガーメンツ(Kit Undergarments)を買収するというもので、その金額は明らかにされていない。サードラブの共同創設者でCEOを務めるハイディ・ザーク氏は、同社がZ世代とつながりを持つ方法を探し求めており、若い層をおもな顧客ベースとする新興企業の買収がそのひとつの方法だったと筆者に語った。

また、サードラブは今年、実店舗への展開を拡大するために努力しており、年末までに6〜10店舗の開設を計画しているほか、新しい商品ラインの成長もめざしている。ザーク氏は、スポーツブラのコレクションを拡大することが特に同社にとって大きな目標だと述べた。

フィット感へのこだわり

ブルックリネン(Brooklinen)パラシュート(Parachute)、そのほか2010年代半ばに操業を開始した多くのデジタルネイティブなブランドと同様、サードラブも今年、成長のための新しい原動力を探し求めている。ザーク氏は売上データを明かさなかったが、現実としてD2C新興企業が長くビジネスを行うほど、オンラインでの販売だけで毎年飛躍的な売上成長を続けることは困難になっていく。小売への展開を拡大し、新商品の販売促進により、サードラブは自社のアーリーアダプターのプロファイルに当てはまらない多くの顧客を積極的に獲得している。

たとえばキットアンダーガーメンツの買収だ。ザーク氏はサードラブを「ミレニアル世代にとってナンバーワンのオンラインのブラ・ブランド」と呼び、同社にはX世代にも多くの信奉者が存在すると述べた。

サードラブが2013年に創設されたとき、アドアミー(Adore Me)のような新興企業から、エアリー(Aerie)のようなモールを拠点とするブランドまで多くの企業が、ランジェリーの大手企業であるビクトリアズシークレット(Victoria’s Secret)の売上が減速していた機会に取り入ろうとしており、サードラブもその一社だった。

これらの新興企業は、ビクトリアズシークレットが近年、非現実的な美の基準を推進し、排他的になりすぎ、ブラジャーの適切なフィット感を十分に重視していないなど、いくつかの点で間違っていると指摘している。

サードラブは、このような点でイノベーションを行いたいと考えた。ザーク氏は、「女性が、持っている商品に対して抱えている問題の解決を手助けする」という目標を掲げてサードラブを創設したと述べている。同社はオンラインでブラを購入するときに当てずっぽうの作業を少しでもなくすためにフィットクイズを用意し、またハーフサイズを提供することで、女性がビクトリアズシークレットで見つけられるものよりもぴったりフィットするような、適切なブラを購入できるようにしようと試みた。

「サードラブは、ブラのフィットがどのような感じであるべきか、そして正しいサイズのブラをオンラインでどのように見つけるかについて話しはじめた主要な企業のひとつだった」と、ジェーンハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)の小売リサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は述べている。

ファッションに特化したキットアンダーガーメンツ

一方で、キットアンダーガーメンツはよりファッションに特化している。同社はセレブリティスタイリストのジェイミー・ミズラヒ氏とシモーヌ・ハロウシュ氏が共同で創業し、両氏はキットアンダーガーメンツの一般的な顧客ベースが18歳から34歳であり、サードラブの標準的な顧客よりも都市部に住んでいる割合が高いと解説している。

「当社のフォロワーの多くは、我々をスタイリストとして認知しているため、当社の商品の多くはインフルエンサーによって紹介されている」とハロウシュ氏は語る。キットアンダーガーメンツのインスタグラムに最近登場したセレブリティとして、ライリー・キーオ氏、クレア・ホルト氏、ケイティ・ペリー氏が挙げられる。同社はブラと下着に加えて、ボディスーツやシェイプウェアも販売している。

キットアンダーガーメンツの商品は、4月26日からサードラブのウェブサイトで販売されている。「当社は、ブランド間での相互プロモートが有意義と考え、期待している。ソーシャル、パートナーシップ、または新たに開設したサードラブの店舗でのパートナーシップなど、今後1年間に両ブランドでさまざまなことを行うことになるだろう」とザーク氏は述べている。

パンデミックの直前に開設されたポップアップ店舗を除き、サードラブは今年まで恒久的な店舗を開設してこなかった。ザーク氏は、同社の実店舗における小売の拡大が「パンデミックのせいで予定から外れた」と述べているが、同社はこれまでに4店舗をカリフォルニアに開設し、今年末までにさらに数店舗の開設を計画している。

「当社はサードラブで数百万人の顧客を獲得し、現在の顧客との関係をより深めていくことと、オンラインでブラを買うこと自体に抵抗があった新しい顧客を獲得することの両方を実現できるようになった」とザーク氏は述べている。

スポーツブラ市場への進出

同社は店舗数を増やすことに加えて、自社商品の品揃えの拡充にも注力している。同社の中核商品は依然としてTシャツブラだが、各種スタイルのブラレット、スリープウェア、レギンス、タンクトップも販売するようになった。特にスポーツブラは同社が今年成長に期待している商品ラインだと、ザーク氏は語っている。

近年において、スポーツウェア大手のアディダス(Adidas)ルルレモン(Lululemon)は新しいスポーツブラのコレクションをリリースし、これらの商品で独自の技術的イノベーションを実現したと主張しているが、「特定の企業がこの市場を支配しているわけではない」とザーク氏は述べる。このカテゴリーでもっとも多く売れているサードラブの商品は、昨年リリースされたキネティックインパクト(Kinetic Impact)スポーツブラで、この商品の開発に2年を費やしたと同社は述べている。

ラミレス氏は、スポーツブラの市場が特定の一社に支配されているわけではないことに同意し、「スポーツ業界において、あらゆる企業がスポーツブラの販売を試みるのを見てきた」と述べている。

サードラブが自社のブランドと商品の品揃えの拡充をめざすとともに、競合他社のリストも着実に長くなっていく。ビクトリアズシークレットは排他性についての過去の批判に積極的に対処しているが、それ以外にも、ペッパー(Pepper)やクープ(Cuup)といった新しいデジタルネイティブの新興企業も登場し、ブラジャーのフィット感について女性が抱える問題により的確に対応することをめざしている。サードラブがアクティブウェアに進出したことで、ナイキ(Nike)のようなスポーツウェア大手との競合も激しくなる。一方、セレブリティタレントのキム・カーダシアン監修によるスキムス(Skims)のような新興企業もまた、シェイプウェアだけでなく、より大きなブラや下着市場に参入しようとする動きを活発化させている。

競合が激化するなか、サードラブは自社の差別化要因としてフィット感の重視を見失わないよう心がけている。

ザーク氏は次のように述べている。「私は、自社で製造する商品に大きな期待を寄せており、これらが優れた商品だと信じている」。

[原文: DTC Briefing: How ThirdLove plans to grow its customer base this year ]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via ThirdLove

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