ファッションブランドは迫りくる 不況 にどう対処するのか?:在庫、製造の問題

DIGIDAY

Glossyではファッションと美容業界がどのように潜在的な不況に備えるかについての記事をシリーズで掲載している。経済が悪化したときに、企業がどのように製造や資金調達、小売経営を計画するのかを掘り下げていく。

この2年間は、ファッションブランドにとってジェットコースターのようだった。

まず、パンデミックが始まった頃に消費が落ち込み、小売業者が注文をキャンセル、多くのブランドが売ることのできない過剰在庫の山を抱えることとなった。そして2021年には、サプライチェーンの混乱により、ブランドは十分な在庫を確保できず、それを補うために過剰な買い付けを行うという逆の問題が発生した。

「パンデミックの初期には、ブランドが新たな在庫を生産しない劇的な後退があった」と語るのは、メイドウェル(Madewell)のような企業の在庫計画を支援するメイカーサイツ(MakerSights)の創業者マット・フィールド氏だ。「しかしその後、買い急ぎが起こり、ブランドの在庫があまりにも少なくなってしまった。だから、二度とあのような目に遭いたくないという思いがある」。

しかし現在、景気後退が迫り、消費削減の脅威が高まるなかで、ブランドはどのように在庫問題に対処する計画を立てているのだろうか。そして、工場はその準備のために何をしているのだろうか。

在庫削減がきわめて重要な戦略的行動

靴下ブランドのスタンス(Stance)を共同創業し、現在は衣料品メーカーのフューチャースティッチ(FutureStitch)を経営するテイラー・シュープ氏によると、アパレルの製造量は減少しているという。昨年はメーカーからの製品入荷におけるサプライチェーンの遅れにより、フューチャースティッチのパートナーであるエバーレーン(Everlane)やクロックス(Crocs)などが余剰在庫を購入した。しかし2022年には、フューチャースティッチの3つの製造施設を通じた注文は3分の1に減少すると彼は予想している。

「過去2年間の影響のひとつは、企業が異なる成功の尺度に目を向けるようになっていることだ」とシュープ氏は言う。「以前は粗利益がもっとも重要な測定基準だったが、最近では、本当に重要な測定基準は在庫だという感覚がある」。

シュープ氏いわく、貢献利益、つまり在庫として保有する各商品の収益性を示す指標を、ブランドパートナーがもっとも重要視するようになってきているという。つまり、不況が迫るにつれ、在庫削減はすべてのブランドにとってきわめて重要な戦略的行動なのだ。

在庫をあまりに長く持ち続けることの危険性は明らかだ。ターゲット(Target)は、6月上旬に売れ残った在庫を一掃するために価格を引き下げた後、株価が暴落した。ウォルマート(Walmart)は、6月上旬の直近の決算報告によると、前四半期に在庫が33%増加し、これをなんとかリセットしようとしている。

SKUの合理化に向かうブランド

しかし、すべてのブランドが注文量を減らしているわけではない。消費の落ち込みは、在庫が少ない方がよいことを意味するかもしれないが、余裕のないサプライチェーンと出荷の遅れという相反する問題があり、一部のブランドは依然として過剰購入が必要なのだ。これは特に、より高価な原材料を使用した製品を販売しているブランドに当てはまる。

たとえば、インフレにより、金の価格は過去半年で20%近く上昇している。ジュエリーブランドのオーレート(Aurate)の共同創業者であるソフィア・カーン氏は、そのことが同ブランドの在庫計画で重要な要因だと述べている。

「私たちがこれに備えている方法は、サプライヤーと非常に密接に提携し、価格があまりに上昇しすぎる前に、いますぐ在庫を発注することだ。そうすることで、顧客にベストな価格と品質のジュエリーを提供し続けることができる」。

予測不可能な在庫状況をヘッジする最善策は、フィールド氏によると、80:20の法則(パレートの法則)を遵守することだという。

「一般的に、売上の80%は20%のSKUから得られる。過去5年間は、新しさや品揃えの幅を広げようとする動きがかなり強かったが、最近はその振り子が大幅に戻ってきた」。

フィールド氏は、パートナーたちが「SKU合理化」と彼が呼ぶもの、つまり製造される異なるSKUの数を減らし、少ない選択肢を補うために規模の経済を活用する方向に動いていると考えているという。短期間で終わるトレンドを利用した一度限りの製品は、大量発注よりも少量生産の方がより高くつく傾向があるため、製造コストが高くなるだけでなく、すぐに売れなければ負債も大きくなる。

売れ筋の商品を守る

下着ブランドのライブリー(Lively)の創業者ミシェル・コルデイロ・グラント氏は、SKUの合理化が不況を見越した戦略であると語る。ライブリーの品揃えは80:20の法則をほぼ忠実に反映しており、売上の85%は品揃えのわずか20%から生まれている。実際、たった5つのSKUがライブリーの売上のおよそ50%を占めている。

コルデイロ・グラント氏は、たとえ新しさを逃すことになるとしても、売れ筋の商品を守り、売れ筋ではない外れ値はあまり重視しないという考えをチームに浸透させているという。

「売上高に占める割合に基づいて、製品をプラチナ、ゴールド、シルバーに分類している。私はチームにこう言っている。プラチナを守れ」。

この哲学に合わせて最近ライブリーが行った変更のひとつが、各製品にふたつの素材しか使わないように製造過程を絞り込むことだ。現在、同ブランドの品揃えのほとんどは、ナイロンとスパンデックスの組み合わせで作られている。

「新素材には手を出さないというむずかしい選択をした」と、コルデイロ・グラント氏は言う。

強気市場においては、新規カテゴリーや新素材に進出し、品揃えの幅を広げることは、高い需要を生かすためのよい方法だ。しかし不景気な環境では別の戦略が必要になる、と彼女は述べた。
「いまは、少々棚上げしておいても心配しなくてもよい時期なのだ」

[原文:Fashion brands are reducing inventory to prepare for an impending economic downturn]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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