増え続ける コンテンツ 。最適な量と質を模索するエージェンシー、ブランド、インフルエンサー

DIGIDAY

コンテンツの量がどんどん増え、訪問者数をめぐって競争が激化している昨今、エージェンシーはクライアント向けコンテンツ制作におけるアプローチを見直し始めている。

エージェンシーがクライアントのために制作したコンテンツはその量、エシカルさ、インパクトで評価されるが、コンテンツビジネスは統計分析の活用からインフルエンサーマーケティング戦略へと変化している。だがどれほどの量を作れば「十分すぎる」といえるのだろう?

マーケターが消費者にリーチする方法として主流となったブランド主導のコンテンツは、その過程でブランドアウェアネスとロイヤルティを生む。コンテンツマーケテイングインスティテュート(Content Marketing Institute)の2022年のレポートによれば、過去12カ月間にB2Cマーケターに多く利用されたコンテンツタイプの上位2つは、短い記事または投稿と、動画であった。

需要も増え続けている。調査会社インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によると、米国ではスマートTV、ゲーム機およびその他のコネクテッド端末によるコンテンツ消費が業界をけん引しており、2022年のデジタルメディアに費やす1日あたりの平均時間は8時間14分であった。これは2021年の8時間5分から1.9%の増加である。この数字は2020年のパンデミック時ほどの急激な増加ではないものの、それでもデジタルメディアの利用時間は私たちが消費メディアに費やす時間全体の中でもっとも大きなシェアを占めている。

コンテンツ制作の倫理と効果

「コンテンツの制作戦略において、ブランドはより具体的な最終目標を描くだけではなく、並行してコンテンツのエシカルさや制作目的を検討する必要がある」と語るのは、エージェンシーネットワークのメディアモンクス(Media.Monks)のソーシャル部門のグローバルヘッドでありエグゼクティブ・バイスプレジデントであるエイミー・ルカ氏だ。最終的に目指すのはただ可能な限り多くのコンテンツを量産することではないし、当然ながらそれが人々のメンタルヘルスに影響を及ぼすことなど望んではいない。

ルカ氏は米DIGIDAYに対し、「ともに仕事をするチームやクライアントには、制作するコンテンツに付加価値があり、時間を費やす値打ちのあるものになっているかどうかを十分に考えるよう、強く求めている」と語っている。「コンテンツのイメージやトピックや会話内容が、われわれがアプローチしようとしている消費者のメンタルヘルスや幸福を損なってはいないだろうか、と」。

コンテンツ、オーディエンス、ブランドにとっての目標の適合具合を分析することでバランスをとることができると、ルカ氏は考えている。この部分の効果を高めるため、メディアモンクスでは統計的回帰分析を行い、クライアントが最適なコンテンツ量を決定できるようにしている。またクライアントはソーシャルメディアにおける短期的なビュー数よりも長期的なブランドエクイティを重視している、と同氏は付け加えた。

「アルゴリズムがコンテンツによる報酬をもたらしてくれるわけではない。もしコンテンツのためのコンテンツを次から次と大量に投入するだけならば、アルゴリズムから得られるリターンは大幅に減少するだろう」とルカ氏は述べている。

インフルエンサービジネス

インフルエンサー制作のソーシャルメディアコンテンツが数多く発信されるなか、インフルエンサーマーケティングを行う企業やエージェンシーもまた、コンテンツの質と量の適切なバランスを取ることが求められている。インフルエンサーマーケティング会社インフルエンシャル(Influential)のCEOであるライアン・ディタート氏は、「インフルエンサーは、どのようなコンテンツやプラットフォームを使っているかだけでなく、個人単位でコンテンツを検討していかねばならない」と話している。

「複数のプラットフォーム向けのコンテンツを制作する場合、すべてに適合する万能な答えなどない」と同氏はいう。「TikTokでバズったコンテンツが、そのままYouTubeでもバズるとは限らないし、逆もまたしかりだ」。

ディタート氏は、質の高いコンテンツとは単にプロダクションバリュー(制作価値)が高いということだけではなく、クリエイターとオーディエンスとの関連性についても考慮する必要があると主張している。そして、インフルエンサーがオーディエンスを増やすうえで主要な要素とは「一貫性(コンシステンシー)、真正性(オーセンティシティ)、定型性(ケイデンス)」だと付け加えた。

インフルエンサーマネジメント会社であるサイクル(Cycle)では、よりインパクトのある結果をもたらしコンテンツを有機的に感じさせる、ローファイや低解像度の特定のコンテンツの活用に重点を置いている。サイクルのクリエイターおよびブランドパートナーシップ担当バイスプレジデントであるベア・イトゥレギ氏によると、同社では、目指すオーディエンスに最適な戦術は何かを知るためにインフルエンサーを頼りにしているという。

「あるときは、それはインスタグラムのリールを連続でループ再生させたり、フィード内の投稿をストーリーにも同時にアップしたりすることかもしれない。あるいは、フォロワーによる投票の実施や、自宅キッチンで手早く制作されたローファイコンテンツを活用することを意味する場合もあるだろう」と同氏は話している。

サイクルの事業開発担当バイスプレジデントであるコリー・スモック氏は、「インフルエンサーマーケティングというのは、決して量で勝負するものではない」と付け加えた。「肝心なことは、その場で一番大きな声を出すことではなく、個人的なつながりを作り、文化的な影響を与えることだ。そしてそれは、より少ない量で達成されることが多い。量が多ければいいというわけではない」。

コンテンツの分野を発展させる

コンテンツ提供に力を入れ、クライアントと協力して新しいアプローチに取り組んでいるエージェンシーもある。スタッグウェル(Stagwell)傘下でデジタルとクリエイティブの多分野で事業を展開するインストゥルメント(Instrument)は、2023年6月、ブランドポジショニングを見直し、製品、デジタルデザイン、ブランドマーケティングの能力に加え、コンテンツイノベーションとエクスペリエンスイノベーションという2つの新しいコア分野とともにひとつにまとめた。同社は2022年11月、同じくスタッグウェルの傘下にあるデジタルエージェンシーのハローデザイン(Hello Design)と合併することを発表している。

インストゥルメントの各ユニットはクライアントと協力し、コンテンツやデジタルエクスペリエンスを向上させ、インパクトのあるストーリーを生み出すことに注力している。インストゥルメントのエグゼクティブディレクターで、コンテンツイノベーションを統率するポール・ウェルチ氏は、コンテンツをめぐる状況はパンデミック以降、大きく変化していると指摘する。そして、常に新しいプラットフォーム、チャネル、メディアの種類が登場するが、インストゥルメントとしては適切なコミュニティと提携し、より価値の高い少量のコンテンツの制作に重点を置いている、と付け加えた。

「これにはファネルの中間にあたる仕事が多い。インパクトが必要だったし、意味も必要。そして本質的な効果、つまり消費者のためにインプレッションも必要だった」とウェルチ氏はいう。「だから最多の視聴者数を獲得することは必ずしも重要ではなく、われわれが話をしたいオーディエンスとより密接につながることこそ大切なのだ」。

市場にはたくさんのコンテンツがあるのにもかかわらず、消費者から期待されるものはいっそう高まっている。インストゥルメントのチーフ・クリエイティブオフィサーであるJ・D・フージ氏は、最近の消費者やクライアントは「より目が肥えている」といい、心に響かないコンテンツであれば別のものに目を移すという選択肢も豊富にある、と説明している。

「彼らはブランドのいうことを信用しない。同時に、ブランドに対して抱く期待値も高い」とフージ氏。

メディアモンクスのルカ氏はいう。「マーケターやソーシャルエージェンシーはブランドエクイティを低下させ、最終的に消費者は乗り換えることになる。乗り換える率は高くなるだろう。注意を引くものがあれば、それがなんであれ、消費者は彼らに引き寄せられていくのだから」。

[原文:How much content is too much? Agencies are starting to ask that question

Antoinette Siu(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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