TikTok でサウンド付き広告が復活しつつある理由:「ジングルに我々が抱いていた嫌悪感はもうない」

DIGIDAY

アメリカの歌手・ラッパーであるドージャ・キャット(Doja Cat)をTikTokでフォローしている人なら、彼女がタコベル(Taco Bell)のジングル(CM用の短い楽曲)を書いたことをファンに告知する動画を3月はじめに見ただろう。契約上仕方なく制作したと言い、「曲が酷いのは分かってる」と言って終わらせたその動画は1840万回視聴された。翌日、ドージャ・キャットはタコベルによるメキシコピザのジングルをTikTokに投稿した。その動画はそれ以来3160万回再生されている。

ドージャ・キャットとタコベルだけではなく、ほかの企業も有名セレブによる新しいCMメロディを展開している。マウンテンデュー(Mountain Dew)は最近、俳優のチャーリー・デイを利用し、もちろん、喉の渇きを癒すためにマウンテンデューを飲む曲を書かせた。一方、ハンバーガーチェーンのアービーズ(Arby’s)はラッパーのプシャ・Tに依頼して競合であるマクドナルドのフィレオフィッシュを貶す「ディス・トラック(Diss Track)」を書き、アービーズのフィッシュサンドイッチを宣伝した。

マーケターや広告代理店の幹部は、ブランドが音声によるブランディングを利用する手段として、CMや楽曲を制作するセレブとの提携が最近増えており、「サウンド付き広告」が特にTikTokで復活していると見ている。

楽曲やジングルによるオーディオブランディング

エージェンシーのガット(Gut)でソーシャル戦略ディレクターを務めるロサ・クバス氏は、「声(を使ったクリエイティブ)を巡るトレンドが起きていることを示す兆候が、非常に多く現れている」と語る。「当然のことながら、ブランドは重要で印象的な関連づけを促すため、音の使い方を進化させている。この戦略のアウトプットとして、タコベルのドージャ・キャット起用のような『オーガニック』な音楽やジングルをよく目にするが、これはうまくいっている」。

クバス氏は続ける。「私は、サウンド付きや音楽を全面に出したコンテンツが、ブランド認識(オーディオブランディング)、関連性(インクルージョンの機会)、そして消費者からの(要求と価値に対する)好意的な反応という3つのことを達成すると考えている。つまり、いくつかのブランドが近々行われるキャンペーンで、実際のジングルを文化的に今に適したものに一新して発表しても驚きではない」。

楽曲やジングルによる音声ブランディングの機会は、ソーシャルメディアプラットフォームでも増加している。特にTikTokで話題になった新旧のさまざまな楽曲はチャートのトップに来ることが多く(1960年台のヒット曲、パッツィー・クライン[Patsy Cline]の『クレージー[Crazy]』は現在TikTokでトレンドになっている)、メディアも現在TikTok上でトレンドになっている曲を紹介する記事を何度も書いている

エージェンシーのヴィア(VIA)で統合制作部門を率いるクリストファー・マクラレン氏は、「今日では、TVCスポット広告だけでなく、複数のメディアやオンラインプラットフォームでより豊かなストーリーを展開する機会が増えている」と述べる。「(ジングルによって)複数のメディアにまたがったストーリーを語れることは、関係者全員にとって魅力的であり刺激的だ」。

「ジングルはとにかく効果がある」

ジングルというコンセプト自体が廃れたことはこれまでなかった。それでも、今でも流れている大手保険会社のリバティー・ミューチュアル(Liberty Mutual)やカーペットメーカーのエンパイア(Empire)によるキャッチーなジングルは、マーケティング業界の一部から当初は軽蔑されていた。企業によるマーケティング戦術をからかうこと自体がマーケティング戦術であることが多い(参照:ジャジャ・テキーラ(Jaja Tequila)の場合)今日のメタマーケティングの状況を考えると、一部のマーケターやエージェンシーの幹部はジングルに対する抵抗感は薄れていると考えているようだ。

レイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)のCCOであるスティーブ・ダイアモンド氏は次のように語る。「かつて広告のクリエイティブな人たちは、ジングルを検討するように言われると、うんざりすることがあった。クライアントからの依頼の中では『ロゴを大きくしてほしい』という依頼に次いで2番目に嫌われた依頼だった。オーディオブランディングは今よく話題になる。その力が衰えたことはないと思う。我々が持っていた嫌悪感が失われただけだ」。

たとえその嫌悪感が続いたとしても、キャッチーなジングルは好きな嫌いかに関係なく、頭の中に残る。それが一部のマーケターにとってより魅力的になっている。ニューヨークに拠点を置くグッドバイ・シルバースタイン・アンド・パートナーズ(Goodby Silverstein and Partners)のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターで、リバティー・ミューチュアルのジングルをパートナーのデーヴィッド・スアレズ氏とともに作成したダニー・ゴンザレス氏は、「ジングルはとにかく効果がある」と話す。

ゴンザレス氏はさらに、こう続けた。「私が『朝のピザ、夜のピザ、夕食時のピザ(小さな一口サイズのベーグルにピザ風トッピングを乗せたベーグル・バイツ[Bagel Bites]のCMソング)』を今でも覚えている理由は(ジングル以外に)ない。私自身、責任ある親として、『ピザがベーグルの上にのっていれば、いつでもピザを食べていい(ベーグル・バイツであればどれだけ食べても問題なし)』という主張には反対だ。それでも、今でも覚えていて口ずさみながら、『いまからちょっと買おうかな』なんて思い始めている。だから、ジングルについて誰が何を言おうと、おいしいベーグルピザの油にまみれた手で彼らに拍手を送り続けるだろう」。

[原文:Marketing Briefing: ‘Jingles just work’: Why marketers are tapping celebs like Doja Cat, Pusha T and Charlie Day for songs

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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