めざすは「スリッポン界のホカ」: D2Cブランドの キジック が店舗網を拡大中

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D2Cスニーカーブランドのキジック(Kizik)は、シューズカテゴリーにおける次の大きなサクセスストーリーの座を狙っているシューズの新興企業のひとつだ。

同社の売上高は2021年から2022年に250%以上も増加した。今年は現在のところ前年比約60%増で推移しており、売上高は2億5000万ドル(約355億円)に近づいている。

オンライン販売の勢いを受けて、キジックはいま、実店舗への展開によってさらに市場シェアを獲得したいと考えている。親会社のハンズフリーラボ(HandsFree Labs)がオンラインのD2C事業として2017年に設立したキジックの主力商品は、座ったり、屈んだり、膝をついたりすることなく、足をシューズに滑り込ませるだけで履けるステップインスニーカーだ。昨年は、新しい商品ラインの発売と店舗オープンのために、2000万ドル(約28億4000万円)のシリーズBラウンドを調達した。それ以来、コレクションを拡大してきたが、今年まではオンライン販売が中心だった。そして、4月にノードストローム(Nordstrom)で販売を開始し、1カ月後には同社の本社があるソルトレークシティに初の店舗をオープンした。

同社は現在、2024年末までに全国の主要都市に4〜5店舗を開設するため、リースを検討中だ。同社のCEOを務めるモンテ・ディア氏は、米モダンリテールに対し、同社がホカ(Hoka)オン(On)と肩を並べられるビジネスを作りあげるための投資やリーダーシップを集めていると語った。その目標に向けて、同社は今年、最高マーチャンダイジング責任者としてグレッチェン・バイマー氏を迎え入れた。同氏は、ホカの商品担当グローバルバイスプレジデントを7年にわたって務めた後、キジックにやってきた。「バイマー氏が来ることによって、ホカが達成できたのと同じような速さでブランドを構築できるという楽観的な姿勢が生まれる」と、ディア氏は話した。

ターゲット層拡大を狙う

ディア氏は、キジックの特許取得のテクノロジーが、同社のデザイン戦略の基礎となっているという。ハンズフリーラボは2019年、自社の特許取得のテクノロジーをナイキ(Nike)にライセンス供与し、ゴーフライイーズ(Go FlyEase)のような独自のハンズフリーシューズのデザインを発売する契約の一環として、ナイキから少数株の投資を受けた。

キジックはeコマース事業として急速に成長したが、オンライン専業で販売することの大きな課題として、自社ブランドのスタイルが快適にフィットし便利であるということをどうやって伝えればよいのかということに直面していた。「ステップインのやり方を丁寧に示すために主に動画を使用してきた」とディア氏は述べ、小売店の存在が加わったことで、コンバージョン率が上がることに期待していると付け加えた。

「我々は店舗を通して、靴屋での体験を覆すつもりだ」と、ディア氏は語った。「我々が最初に行うのは、来店客に対して、キジックのシューズを試したことがあるかを尋ね、すぐに実際に履いてみてもらうことだ。たいていの場合、その来店客は驚きの反応をする」。顧客はその後、売り場に陳列されている在庫の在庫の中から色とスタイルを選ぶ。

さらに同氏は、小売店のプレゼンスを上げることで、ターゲット層を拡大しようとしているのだと語った。「障害を持っている人、妊産婦、高齢者など、キジックのシューズによって人生を一変させる人もいる。我々の目標は、すべての人々を対象としたシューズだ」と述べた。

オープン初日に予測の3倍を販売

実店舗の運営ははじまったばかりだが、コンバージョン率は有望な数値を示していると、ディア氏は説明した。

ソルトレークシティにオープンした店舗では、グランドオープニングの日に、予測の約3倍となる900足以上のシューズを販売した。全体で見ると、小売店舗のコンバージョン率は約22%で、同社が予測した13%から15%を超えるものだった。さらに、店舗でステップインのやり方を体験した顧客のうち75%が実際にシューズを購入したと、同氏は付け加えた。

キジックはまず、ノードストロームの西海岸と中西部の地域で店舗を開いたが、今年中にさらに店舗を増やす予定だ。ノードストロームの5店舗と、同社のウェブサイトによる初期テストで、最初の3週間におけるキジックの販売率は、紳士用シューズで72%、婦人用シューズで80%だった。

コンサルタント会社のカーニー(Kearney)で消費者プラクティスのパートナーを務めるブライアン・エーリッヒ氏は、業者の数が多いフットウェア市場において、「すべての靴専門ブランドは、無数の競合他社のなかで自社を差別化できる理由が必要だ」と述べている。

同氏は、クロックス(Crocs)の長時間立っていても快適な履き心地、ホカのマキシマリスト的なクッション、ニューバランス(New Balance)の多様な幅のオプションなどを成功例として指摘する。「新興企業が、シューズの履きやすさを押し出してビジネスを成功させるという考えは、それほど的外れなものではなく、合理的なものだ。誰だって靴ひもなんか結びたくない」と、同氏は述べる。

「利便性」という新カテゴリー

このカテゴリーにはこのようなホワイトスペースがあるのにもかかわらず、オールバーズ(Allbirds)のように、トレンドに左右され、話題が先行したシューズブランドが結局は売れ行き不振に終わった例もあると、同氏は付け加えた。

キジックはグローバル展開も見据えており、特に文化的な習慣の関係で人々が1日に何度も靴を脱ぐような地域を重視している。新しいスタイルも開発しており、2023年末までに7つの新しいスタイルを発表する予定で、その中にはミッドトップスタイルやスノーブーツも含まれる予定だ。

「当社は、利便性という新たなカテゴリーを作りだそうとしている。したがって、パフォーマンスではなく、あらゆる場面で使えるライフスタイルシューズを提供することを重視している」と、ディア氏は述べた。

[原文:Kizik hopes to be the Hoka of slip-on shoes as it plots retail expansion]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Kizik

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