アジア食品のスタートアップがいま、投資家と小売業者を引きつけている理由:消費者の嗜好の変化と需要拡大も後押し

DIGIDAY

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パンデミック時に登場した多くのアジアの食品・飲料の新興企業は、新しいベンチャーキャピタル資金や小売パートナーシップを引き寄せ続けており、CPGの世界でもっとも成長の大きいカテゴリーのひとつになりつつある。

このグループには、フライバイジン(Fly by Jing)、オムソム(Omsom)、サンゾー(Sanzo)、イミー(immi)などのブランドに加えて、和風調味料ブランドのキャビ(Cabi)など新たに参入した企業が属している。ごく最近、冷凍蒸し団子と麺類のブランドのシャオチージー(Xiao Chi Jie、XCJ)が、10月にシリーズA資金として1000万ドル(約13億7000万円)を調達した。このラウンドはイマジナリーベンチャーズ(Imaginary Ventures)、俳優のシム・リウ氏、ゴールドハウスベンチャーズ(Goldhouse Ventures)、ハイフンキャピタル(Hyphen Capital)が主導したものだ。キャビア(Caviar)のジェイソン・ワング氏、マジックスプーン(Magic Spoon)のガビ・ルイス氏、スティッチフィックス(Stitch Fix)のカトリーナ・レイク氏など、ほかの創業者たちもこのシリーズに参加した。

米国市場におけるアジア食品の市場規模が広がり続けるなかで、小売業者は、買い物客の現在の嗜好に合うように、これらのブランドに注目している。これらの新興企業は従来よりも早期に大手小売業者で取り扱われるようになっているだけでなく、ベンチャーキャピタルから数千万ドルの資金を調達している。

フォーチュンビジネスインサイト(Fortune Business Insights)のレポートによると、アジアと東南アジアの料理を含むエスニック食品の分野は、2021年の492億7000万ドル(約6兆7500億円)から、2028年には980億6000万ドル(約13兆4000億円)に達すると予測されている。この増加傾向は、主にアジア系アメリカ人の人口増加(現在2200万人)や、アメリカ全体での嗜好の変化、アジアの味に対する需要の高まりが主な要因となっている。同様の傾向はオンライン食料品店でも拡大しつつあり、このオーディエンスを対象にしているeコマース業者は資金を集め続けている

食品全体が低調な時期に投資家の注目を引く

多くのアジア食品ブランドの創業者にとって、パンデミックの最中のブームの後、食品分野全体が減速しているなかで、自社商品への需要は伸び続けている。今年前半には、アジアから着想を得た炭酸水ブランドのサンゾーが、小売需要に対応し、社内の業務を拡大するため、シリーズAラウンドで1000万ドル(約13億7000万円)を調達した

オンライン食品ブームと時を同じくして、これらの新興企業の多くは、パンデミックの最中に多数のD2Cやソーシャルメディアのフォロワーを築くことができた。チリクリスプやその他の中華調味料を販売しているフライバイジンは、隔離環境での調理を楽しくする方法に関するニューヨークタイムズ(New York Times)の記事で取り上げられた。この記事により、フライバイジンは3カ月分の在庫を3日間で売り切った。同社は現在インスタグラムで11万人を超えるフォロワーを抱え、ターゲット(Target)やコストコ(Costco)などのマスマーケットの大手業者を含む数千の小売業者で自社商品を販売している。

シアトルを拠点とするXCJも同様に、パンデミックのあいだにフォロワーが急増し、同社はファストカジュアルレストランから転向して、手作りの小籠包(冷凍スープ団子)で数千のサブスクリプション利用者を集めるようになった。新興企業である同社は、中華風のバーベキュー用焼き串も出荷しており、10月にはインポッシブルフーズ(Impossible Foods)との提携により冷凍麺のキットを発売した。

同社は2022年、垂直統合型のD2Cチャネルで前年比300%の成長を経験した。XCJの共同創設者であるカレブ・ワング氏は、同社がオンライン専業ブランドから転向し、小売業者と契約しようとしていた時期に、新たな資金調達ラウンドがあったと、米モダンリテールに語った。「小売り業者と買い物客は、各地域にある料理をますます区別されるようになってきた」と同氏は付け加えている。「これによって、単なる一般的な食品ではなく、当社のような特化したブランドが機会を得られるようになった」。

イマジナリーベンチャーズのパートナーであるローガン・ランドバーグ氏は、アジア食品のカテゴリーは500億ドル(約6兆8500億円)と推定されており、今年、ほかのCPGブランドの資金調達が低迷しているにもかかわらず、ベンチャー投資家にとって魅力的なものだとコメントしている。このカテゴリーは北米ではまだレストランに大部分独占されているが、アジアのCGPブランドが占めることのできる食料品店のホワイトスペースはまだ大量に残っていると、同氏は付け加えている。2022年2月のユーロモニター(Euromonitor)のレポートによれば、アジアのクイックサービスフードは過去25年間に135%以上成長した。

「分析して見ると、消費者からの需要が強く、加速していることが明らかだ」と、同氏は述べている。

小売業者のあいだで成長中のカテゴリー

2020年5月に創設されたアジア食品スターターソースのオムソムは、8月に最新の資金調達ラウンドを終了した。その金額は公表されていないが、特にAAPI創設者に絞って投資しているベンチャーキャピタル企業のポットラック(Potluck)が主導した。また、この資金調達は今夏、オムソムがホールフーズ(Whole Foods)の棚での販売を準備していた時期に行われたものでもある。さらに同社は、10月にAmazonでも正式に販売を開始した。

オムソムの共同創設者であるキム・ファム氏は、同ブランドの「明確で自信を持った」ブランディングが、D2Cの若い買い物客だけではなく、エスニックの品揃えを刷新したい小売バイヤーをも引きつけたと語る。一部のバイヤーは、同ブランドの一連のフレーバーが、一般の料理人には「ニッチすぎる」可能性を懸念していたが、その想定は誤っていることが証明されたと、同氏は語る。

ファム氏は次のように説明している。「市場に出回っている商品のほとんどは、我々の料理に対して単純化したアプローチをとっており、時代遅れな「エスニックの棚」の名残をとどめていた。まったく新しい起業家たちが、当社の仲間に加わり、これらの愛されているフレーバーを家庭に持ち込むには多くの方法があることを示そうとしてくれたのは素晴らしいことだと感じた」。この妥協しない取り組みは、ファム氏や共同創設者のバネッサ・ファム氏による資金調達にも貫かれている。たとえば、姉妹である両氏は、オムソムの出資者の50%を女性、クィア、BIPOCのいずれかにするという目標を掲げている。

これらのブランドが成長するための次の重要なステップは、さらに多くの小売店で取り扱われることだ。XCJは今後数カ月に、食料品チェーン店において実店舗での小売販売を開始すると、ワング氏は述べる。同氏は次のように述べている。「当社はすでに、冷凍食品の配送が論理的に困難な数千人のオンラインでのファンを相手に、その影響力を証明してきた。次はこれらの商品を、よりメインストリームの消費者が定期的に購入するものとしていきたい」。

「もちろん、健康食や家庭におけるオプションは、イノベーションの明確な機会であり、サンゾー、フライバイジン、オムソム、XCJといった強力なブランドがその機会を捉えてきた」と、セルバベンチャーズ(Selva Ventures)の共同創設者で、ミッドデースクエア(Mid-Day Squares)やスリーウイッシュ(Three Wishes)などの新興企業への投資家であるキバ・ディッキンソン氏は説明している。大型店舗を含む量販店は、これらのブランドを全国のオーディエンスに紹介し、デジタルネイティブというルーツを超えた成長を促すため、重要な役割を果たすと付け加えている。「ウォルマート(Walmart)やターゲットが関心を示していることは、この大きな市場機会に我々すべてが注目すべきであることを示唆している」と、同氏は述べている。

オムソムのファム氏は、アジアのCPGブランドへの継続的な関心は、新進気鋭のブランドが、愛されているキッチンの定番商品をより本格的にアレンジしたためだとしており、これが、バイヤー、投資家、顧客を引き付けていると評価している。

「アジアの各地域の味の表現がさらに増えることに期待している」とファム氏は述べる。さらに多くの新興企業が現れることで、小売業者はあいまいで一般的なフレーバーのプロファイルから、より具体的で地域性のある商品へと移行するのを楽しみにしていると付け加えている。「ソースと調味料のカテゴリーでは、ますます精通する消費者を教育するという点で、若いブランドがこれを主導している」と、ファム氏は締めくくった。

[原文:Asian food startups continue to gain traction among investors and retailers]

GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Xiao Chi Jie (XCJ)

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