ラルフローレンとコーチ、2023年度業績に楽観的見方示す:デジタルファーストな若年層を取り込む

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ラルフローレン(Ralph Lauren)とコーチ(Coach)の親会社であるタペストリー(Tapestry)は、確固としたデジタル戦略とZ世代顧客への働きかけにより、ラグジュアリー市場で勢いを増しつつある。

Z世代顧客の増加

ラルフローレンは2月9日木曜日、第3四半期(12月31日までの3カ月間)の純収益が、18億3000万ドル(約2430億円)と、前年同期に比べて1%増加したと報告した。また同社は2023年度の残りの期間の業績予想を維持し、ラグジュアリー商品への需要について楽観的な態度を保った。タペストリーはケイト・スペード・ニューヨーク(Kate Spade New York)とスチュワートワイツマン(Stuart Weitzman)も保有しており、12月31日までの3カ月間の純売上が20億ドル(約2660億円)のと報告しており、。これは前年同期からわずかに減少した。同期間の純利益は3億3000万ドル(約439億円)で、前年同期の3億1800万ドル(約423億円)から増加した。

ラグジュアリー市場全体では、インフレに対して比較的耐久力を保ってきたものの、ラルフローレンとタペストリーは特に確実な推進力を維持してきた。これは主に、より豊かなZ世代の顧客層が増加してきたことによる。ベインアンドカンパニー(Bain & Co)のレポートによると、昨年の高級品市場の成長のすべてをミレニアル世代とZ世代の買い物客が占めたという。ラルフローレンとタペストリーはどちらも、ソーシャルメディアとデジタルを自社の小売戦略の重要部分に据えてきた。これは、実質的に人生のすべてをオンラインで過ごしてきた世代とつながるのに役立っている。

カプリホールディングスは卸売で苦戦

一方、ラグジュアリー大手で、ジミーチュウ(Jimmy Choo)や、ベルサーチェ(Versace)、マイケル・コース(Michael Kors)を保有しているカプリホールディングス(Capri Holdings)は、売上を伸ばすために苦戦している。小売業者である同社は2月8日水曜日、12月31日までの第3四半期決算を発表し、報告ベースで収益が6%減少したことを報告した。ブランド単位で見ると、ジミーチュウの収益は5.6%、ベルサーチェの収益は0.8%、マイケル・コースの収益は7.2%減少している。カプリホールディングスは年間の利益予測も下方修正し、次の四半期に向けての懸念を表明した。

「当社は第3四半期の結果と第4四半期の業績予想について非常に落胆している」と、CEOのジョン・アイドル氏は決算発表で述べた。「それでも、当社は保有している3つのラグジュアリーブランドの強さを信じている。今後、2024年度については、非常に良いプランがあると確信している。そして、将来的には期待するような成長に戻ると確信している」。

カプリホールディングスは特に卸売ビジネスで苦戦しており、四半期のあいだに20%減少したが、これは主にマイケル・コースの損失によるものだった。カプリホールディングスは2021年の終わりに、卸売について「ホリデーシーズンは堅調だった」が、あとになって百貨店の在庫のニーズを満たすのに「非常に苦労した」と、アイドル氏は説明する。一方でカプリホールディングス自身の小売は好調で、この路線を収益増加の原動力として期待している。

デジタル消費者へのアプローチ

カプリホールディングスは卸売からの転換を試みているが、オムニチャネルはすでにタペストリーとラルフローレン両者の商品戦略の不可欠な部分となっている。ラルフローレンは、アジア、特に中国における成長はeコマース事業によるものだとしている。中国では同社の店舗の90%が閉鎖され、営業時間の短縮やスタッフの削減を余儀なくされた。ラルフローレンのCEOを務めるパトリス・ルーベ氏は決算発表で、中国最大のオンラインショッピングイベントである独身の日(Singles’ Day)は同社に特に大きな利益をもたらし、「2ケタの新規顧客獲得と売上」を達成できたと述べた。

また、ラルフローレンは、若くてデジタルファーストの価値の高い顧客へとターゲット層を移しつつある。同社は11月、フォートナイト(Fortnite)とのパートナーシップを発表し、自社のブランドのポロ(Polo)で使っているロゴをデザインしなおし、馬をラマに変更することまでした。同社はこれを記念して、トウィッチ(Twitch)のライブ配信を行ったが、テッククランチ(TechCrunch)によれば、フォートナイトのプレイヤートーナメントを共同主催した最初のラグジュアリーブランドとなった。さらにラルフローレンは2つのショッピングアプリを開発した。

これに対してコーチは前四半期、「リアルに生きる勇気(Courage To Be Real)」キャンペーンを開始し、ユーザーが作成した動画コンテンツを使用した。この取り組みは「当社の中核的な顧客層の共感を集め、新たに若い層の人々の注目を集めた」と、タペストリーのCEOを務めるジョアンヌ・クレボイスラット氏は決算発表で述べた。またタペストリーは、コーチの新しいグローバルブランドアンバサダーのひとりとして、歌手でラッパーのリル・ナズ・X氏を任命し、ブランドのために、TikTokとYouTubeでのリーチを構築することに注力していると、同氏は付け加えた。

一方でカプリホールディングスも、マイケル・コースのオンラインショッピングアプリを開発している。このアプリは、同社のロイヤルティプログラムが組み込まれ、数時間以内のBOPIS(オンライン注文、店内引き取り)が可能となっている。EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)のトニー・エドワーズ氏は、同社が引き続き「eコマースやデジタルなど、エンゲージメントを促進することがわかっている分野に」投資し続けたいと認めた。

タペストリーとカプリHDの違い

しかし、カプリホールディングスと比べて「コーチのブランドのほうが、この数年間にわたって、ブランドとしてはるかに進化してきた」と、ジェーン・ハリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali & Associates)のシニアリサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は米モダンリテールに語った。「同社は細部までデジタルに対応しており、同社の商品は非常に魅力的でもある。マイケル・コースは転換に取り組んできたが、現在のところそれは、小売側の戦略にすぎない」。

ラルフローレンについては、「ラルフローレンも再建の過程で、商品、デジタル、そして若い層の消費者との対話に注力してきた。そして同社は、非常に優れた成果を挙げてきた」と、同氏は述べている。

[原文:Ralph Lauren and Coach are resonating with younger, digital-first shoppers]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Ralph Lauren

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