教育プラットフォームとしてのTikTokの可能性が明らかになりつつある。2021年、このプラットフォームはハッシュタグ #DidYouKnow のプロモーションを開始し、現在164億ビューを達成。またブランドも、教育を通じてエンゲージメントを高めることに成功しているインフルエンサーと提携することで、ますますZ世代にリーチするようになっている。
多くのインフルエンサーが、ファッションにおけるサステナビリティーーまたはその欠如ーーに関する情報を提供して多くのオーディエンスを獲得している。そうしたインフルエンサーたちは、気候変動からスリフティング(節約)、アップサイクルにいたるまで、あらゆることを短く簡潔にまとめた動画を制作している。
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ソーイングを広めてスリフティングの概念を伝える
カイ・マクフィー氏(@knawt.kai、TikTokのフォロワー数26万人)は、2020年からTikTokでソーイングを広めている。「自分がいちばん推そうとしているのは、好きなように服を着るのに大金は必要ないということ。自分のお金をすべて服にただ費やすのではなく、ミシンに投資してスリフティングの方向に行って自分の服を作ることにした」と彼は言う。
マクフィー氏は、LAを拠点とするMNMLやパクサン(Pacsun)といったファッションブランドと協力し、TikTokの動画でそれらのブランドの服にパッチやそのほかの装飾を施した。「パクサンとは、2000ドル(約26万円)を持ってなくても、かっこいいジーンズを履けるんだということを紹介した」と彼は述べた。サステナビリティを意識しているこのインフルエンサーは、同ブランドとのアースデイのコラボレーションの一環としてパクサンのジーンズをアップデートし、日本のデニムブランドのキャピタル(Kapital)のジーンズのようなルックにした。この動画は2万ビューを達成している。
マクフィー氏は通常、自身のワードローブのアイテムをDIYでアップデートする過程を紹介した動画を投稿している。また、スタイリングのヒントや、デポップ(Depop)で自分が販売しているアイテム、ラフ・シモンズ(Raf Simons)そっくりのジーンズを作るプロセスといったTikTok動画も投稿している。
マクフィー氏をTikTokに引きつけるものは、その手軽さとコミュニティだ。「YouTubeのチャンネルも持っているが、そこではあまりアクティブではない。人々がじっくり腰を据えて見てくれるようなアイデアを生み出すには、もっと時間がかかるから。TikTokでは、アイデアを思いついたら撮影して、15分で編集するだけだ」。
サステナブルな未来に向けトレンド予測をわかりやすく紹介
一方、アグス・パンゾーニ氏(@thealgorythm、TikTokのフォロワー数25万8000人)は、バックキャスティング、つまりファッションの未来の予測から逆に現在を考えるというプロセスにフォーカスした動画を制作している。つまり、彼女は未来のイノベーションの予測を例にとり、それがどうすれば実現できるのかを考えるために解析を行っている。パンゾーニ氏は以前、WGSNでトレンド予報を担当しており、2020年からTikTokを使用している。彼女の目標は、教育プラットフォームのTEDのような企業とのパートナーシップを通じて、よりサステナブルなファッション業界を作るためにトレンド予測が果たす役割を紹介することだ。
「トレンドサイクルを減速させようとすることについて、かなり話してきた。トレンドの物語に対して、トレンドは死ぬべきものなのか、それとも拡大できるのかという疑問を投げかけている。あるトレンドがメディアで取り上げられなくなったからといって、必ずしもそれが完全に終わったとは限らない。人々はいまでも『ノームコア』な服を着ていることが多い。ジーンズ、スニーカー、オーバーサイズのルックは、常に流行している」。
彼女のチャンネルでは、予測プラットフォームと同様に、わかりやすい3分の動画で新たなイノベーションを紹介している。たとえば、衣類のモジュール方式、未来のワードローブ、ビューティとファッションにおけるキノコの利用といったトピックでTikTokの動画を制作している。後者では、データインサイトのためにファッション検索プラットフォームのリスト(Lyst)と提携した。
パンゾーニ氏の熱心なオーディエンスは、彼女がクラリッサ・ララザバル氏のような、あまり知られていないサステナビリティに注力しているデザイナーを推薦していることにも反応を示している。そのブランドのインスタグラムのフォロワーは、現在では1万人に達している。
「気候変動のようなテーマの場合、クリエイターが直面する最大の課題のひとつは、どうすればオーディエンスを怖がらせずに活動的にさせるナラティブを作れるのかということ」と彼女は述べており、TikTokによってそれが容易になったと指摘した。「自分の家でカメラに向かってただ話すのにはかなり気合いがいるが、リアルな仲間同士という気分にもなる。さらにステッチや編集(といったTikTokの機能)で、会話もできるようになった」。
消費者に向けてマインドフルな買い物を奨励
アンドレア・チョン氏(@andreacheong、TikTokのフォロワー数16万2000人)のオーディエンスは、ブランドのシーズンコレクションから長持ちする投資すべきアイテムを正確に狙うために彼女に注目している。チョン氏がこのプラットフォームに参入したのは、英国版Vogueで #StopAsianHate について書いた彼女にTikTokのスカウトがコンタクトを取ったのがきっかけだ。TikTokのスカウトは、このアプリで共感を呼ぶ人々を見つけ出し、そうした人々と一緒にツールを学びつつエンゲージメントを確保するという役割を担っている。
エルメス(Hermès)のバッグを手に入れる方法(59万5000ビュー)やZARAで避けるべきアクセサリー(5万6000ビュー)といった動画で、チョン氏のコンテンツはすぐに軌道に乗ったが、彼女は過剰消費を促す従来のインフルエンサーのハウルビデオ(本音で商品をレビューする動画)からは必ず距離を置くように心がけている。以前は定期的にエディトリアルを投稿するインスタグラムのインフルエンサーだった彼女は、業界での自分の役割に次第に違和感を覚えるようになった。そこでコンテンツの焦点を変えることを決意し、マインドフルな買い物を奨励するために、自身のチャンネルでマインドフルマンデーメソッド(Mindful Monday Method)というプログラムをスタートした。
現在、チョン氏は、よくできている商品や業界で働いていた頃のファッションインサイダーの秘密などにスポットを当てた動画でTikTokに力を入れており、ビューティパイ(Beauty Pie)やジュエリーブランドのアストリー・クラーク(Astley Clark)など、自分が信じているブランドと提携している。
リテール分析会社ファースト・インサイト(First Insight)の2019年の調査によると、Z世代の買い物客の大多数はサステナブルなブランドを好んで購入し、サステナブルな製品を買うために10%多く消費している。また、価値観に基づく購買は、Z世代とミレニアル世代でもっとも一般的にみられることも明らかになった。マッキンゼー(McKinsey)の2019年のレポートでは、米国におけるZ世代の年間消費力は1500億ドル(約19兆4680億円)となっている。
[原文:Meet the TikTokers educating Gen Z on sustainable fashion]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:黒田千聖)