パブリッシャー各社4Q決算発表、 デジタル広告 は急落:サブスクは踏みとどまり、コマースでは成果も

DIGIDAY

パブリッシャー各社の第4四半期の決算報告をみると、彼らが頼りにしている収入源のほぼすべてが景気後退による打撃を受けたことがわかる。収益が伸びたところでも、ごくわずかな伸びに留まっている。

2022年第4四半期の総収益が前年同期比で増加したパブリッシャーは、メディア企業ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)とニューヨーク・タイムズ(New York Times)の2社のみだったが、デジタル広告とサブスクリプション事業について詳しく見てみると、前期比では横ばいか、あるいは減少していた。

2022年は景気後退で業績低迷

通常、第4四半期はメディア企業にとって1年間で最も大きな収益が上がる期間であるにもかかわらず、第3四半期との比較で結果が好ましくなかったことは、2022年の景気後退が時の経過とともにいかに大きな打撃をこの業界に与えたかを示唆している。

米新聞社のガネット(Gannett)、オンラインメディアのBuzzFeed、メディア企業ドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)は、さまざまな形で景気後退の影響を受けた。

ほとんどの上場パブリッシャーは、2023年の後半はもっと楽になって2022年から2023年第1四半期までの損失を取り戻せるだろうとの期待から、低迷が続く業績にも理屈をつけてこれを正当化し、強気の態度で決算報告をした。だがBuzzFeedのように、クリエイターとAI(人工知能)の活用で2023年の業績を回復させるべく、戦略を一新した企業もある。

数字で見る

  • 2022年第4四半期のBuzzFeedの総収益は1億3460万ドル(約175億円)で、2021年第4四半期の1億4570万ドル(約190億円)から前年同期比8%減となった。
  • ドットダッシュ・メレディスのプロフォーマ(概算)収益は、2021年第4四半期の6億4460万ドル(約838億円)から2022年第4四半期の4億7760万ドル(約621億円)へと、ほぼ26%減少した。
  • ガネットの第4四半期の総収益は7億3070万ドル(約950億円)で、8億2650万ドル(約1075億円)であった前年同期から11.6%減少した。
  • ダウ・ジョーンズの2023年度第2四半期(12月31日終了)の収益は前年同期比11%増で、2022年度第2四半期の5億800万ドル(約660億円)から5億6300万ドル(約732億円)へと増加した。
  • ニューヨーク・タイムズの2022年第4四半期の総収益は、前年同期の5億9420万ドル(約772億5000万円)から6億6750万ドル(約867億円8000万円)へと12.3%増加した。

デジタル広告収益が急落

当然のことながら、2022年第4四半期にはこのレポートに挙がっているすべてのパブリッシャーの広告部門が苦戦しており、広告収益は前年同期比で3~27%の減少であったと報告されている。

ニューヨーク・タイムズは、デジタル広告の収益が2021年第4四半期の1億1110万ドル(約144億4300万円)から2022年第4四半期の1億1190万ドル(約145億4700万円)へとわずかながら増加し、かろうじて持ちこたえた。だが同社の会計年度(2022年の第4四半期は2021年の同期よりも6日多い)を調整すると、デジタル広告収益は前年同期比で4%減であったと、エグゼクティブ・バイスプレジデントでCFOのローランド・カプト氏は述べている。

ドットダッシュ・メレディスの株主への書簡によると、同社の第4四半期の実績は、11月と12月にプログラマティック広告とダイレクト広告の両方の需要が大幅に減少したため、プログラマティックCPMの平均値が前年同月比で10%低下して15%になったと報告されている。

ニューズ・コーポレーションでは、ダウ・ジョーンズの2022年第4四半期の広告総収益が前年同期比で7%減少し、1000万ドル(約13億円)の減収となったことを発表した。デジタル広告収益は前年同期比で3%減少し、同事業が同社の広告収益全体に占める割合は、前年同期の56%から上昇して59%となった。

ガネットとBuzzFeedの決算発表はさらに厳しいものとなった。ガネットの2022年第4四半期のデジタル広告収益は前年同期比で20.5%減、一方のBuzzFeedの広告事業(ディスプレイ広告とプレロール広告の収益を含むがカスタム広告とブランドコンテンツ広告からの収益は含まれない)は、2021年第4四半期の6910万ドル(約89億8300万円)から27%減少して5050万ドル(約65億6500万円)だった。また、BuzzFeedのカスタムおよびブランドコンテンツ広告事業は、5990万ドル(約77億8700万円)から5480万ドル(約71億2400万円)へと、前年同期比で9%減少した。

サブスクリプション事業は辛くも踏みとどまる

ガネットの決算報告をみると、パブリッシャー各社のデジタルサブスクリプション事業もまた景気の影響を受けていることが読み取れる。2022年の第1~第3四半期までの各期ごとのデジタルサブスクリプション新規契約者の純増加数は11万5000人から11万8000人のあいだだったが、第4四半期にはわずか4万7000人まで落ち込んだ。

また、ガネットの決算報告書によれば、2022年第4四半期のデジタルサブスクリプション事業の収益は3550万ドル(約46億1500万円)と、前年同期比では28.6%増だったが、これは直前四半期の収益が3450万ドル(約44億8500万円)であったのと比べるとわずか3%の増加にすぎない。

ガネットのCEO兼チェアマンのマイク・リード氏によれば、同社の読者をコンバージョンに導く能力を考えれば、登録読者数が370万人から590万人へと前年比で60%増加したことはポジティブな材料だという。

ダウ・ジョーンズでは、2023会計年度第2四半期のサブスクリプション総収益(デジタルと印刷の両方を含む)が前年同期比17%増となり、またデジタル版のみのサブスクリプション数では、同社が10%、ウォールストリート・ジャーナルが9%増加した。ただし、直前四半期との比較では、ウォールストリート・ジャーナルのデジタルサブスクリプション総数は実質横ばいで推移しており、2023年第1四半期の316万件に対し第2四半期は317万件だった。

この停滞状況を払拭するために、ニューズ・コーポレーションのCEOであるロバート・トムソン氏は最新の決算説明会のなかで、「我々はマーケットウォッチ(MarcketWatch)、ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)、インベスターズ・ビジネス・デイリー(Investor’s Business Daily)、バロンズ(Barron’s)といった媒体をバンドルし、そのアップセリングに力を入れていく」と述べた。これはニューヨーク・タイムズが約1年前に「ジ・アスレチック(The Athletic)」を買収した際に展開した戦略と同じである。

そしてそのニューヨーク・タイムズはというと、同社の2022年第4四半期の決算報告書によれば、デジタル版のみのサブスクリプション収益が2億6920万ドル(約350億円)で、前年同期比31%増だった。同四半期中のデジタル版サブスクリプションの新規契約者数は24万人で、18万人であった第3四半期から33%増加した。どうやらすべてのパブリッシャーが購読者収益の確保に苦しんでいるというわけではなさそうだ。

コマースの恩恵

ホリデーシーズンを迎える第4四半期はコマースが恩恵をもたらすことが多く、BuzzFeedもそのひとつだ。ただ、すべてのパブリッシャーが同じ状況にあったわけではない。

BuzzFeedの「コマースおよびそのほかの収益」(プロダクトライセンスとイベントを含む)カテゴリーは、前年同期の1670万ドル(約21億7100万円)から76%増の2930万ドル(約38億1000万円)へと増加した。この収益増は主に、2022年11月に行われた同社のショッピングイベント「コンプレックスコン(ComplexCon)」によるものだと、同社のCFOであるフェリシア・デラ・フォルトゥナ氏は話している。

米メディア・インターネット複合企業インタラクティブコープ(IAC)のCEOであるジョーイ・レビン氏は株主への書簡のなかで、ドットダッシュ・メレディスのeコマース事業では第4四半期に「すばらしいコンバージョン率を記録したが、それだけでは保険や投資などパフォーマンスマーケティングのカテゴリーにおける急激な減少を相殺するには十分でなかった」と述べている。

全体としてみれば、第4四半期のドットダッシュ・メレディスのデジタル収益は前年同期比14%減で、「消費者需要の軟化がアフィリエイトコマース収益に影響したことが原因の一部である」と、同書簡には書かれている。

2023年の展望は?

2023年の見通しについてパブリッシャー各社は、とくに第1四半期に関して控えめな見方を示している。

IACのレビン氏は、「近々に広告市場が大幅に改善するとは思っていない。第1四半期は厳しい状況が予想されるものの、第2四半期のいずれかの時点でデジタル事業の財務状況を安定させ、2023年後半にはデジタル事業収益を再び伸ばすことができるだろうと考えている」と話している。

ニューヨーク・タイムズのカプト氏も、第1四半期はさらなる景気後退の影響を受けると予想。全体収益とデジタル広告収益では、第1四半期に「1桁台前半の減少」が見込まれるとし、ほかのいくつかのパブリッシャーがすでに発表している第1四半期の広告事業の状況よりも若干よい数字になるだろうという。一方で、同四半期のニューヨーク・タイムズのデジタル版のサブスクリプション収益は、「前年同期比で13~15%の上昇を見込んでいる」とカプト氏は付け加えた。

ニューズ・コーポレーションのCFOであるスーザン・パヌッチオ氏は、すでに同社の決算説明会のなかで、2023年度冒頭は2022年第4四半期と同様の険しい道のりになることを確認している。同氏は、「1月の広告事業は収益が前年比で減少するなど前月と似た動向となった。とくにテクノロジーカテゴリーにおける継続的なプレッシャーを考えると、この厳しい状況が今後も続くと予想しており、これまでどおり視界は限定的である」と話している。

BuzzFeedは、第1四半期の広告収益に関しては完全に荒れると予想しており、歴史的にみて第1四半期はどの年もそのような傾向があることを理由のひとつにあげている。だがデラ・フォルトゥナ氏は、2022年第4四半期のマクロ経済動向が2023年第1四半期にも引き続き持ち越されると考えており、その結果全体の収益は6100万ドル(約79億3000万円)から6700万ドル(約87億1000万円)の範囲、すなわち前年同期比で27%から33%の減少を見込んでいるという。

BuzzFeedのCEOであるジョナ・ペレッティ氏は同社の第4四半期決算説明会のなかで、「デジタルメディアの未来はクリエイター主導とAIを活用したコンテンツによって形づくられると信じている」と述べている。AIを搭載した新商品「Infinity Quizzes(インフィニティクイズ)」の発売や、クリエイターネットワークへの継続的な投資をみると、これら2つの事業が2023年第1四半期の収益減少に立ち向かうための主たる戦略になるようだ。

一方でガネットのCFOであるダグ・ホーン氏によれば、同社は全体として2023年の総収益が27億5000万ドル(約3575億円)から28億ドル(約3640億円)のあいだに落ち込むものと予想している。これは2022年と比較して5%から6.7%の減少になるという。だが景気後退による影響が2022年第2四半期に始まっていたことを考えると、「前年比でみた2023年第2四半期の業績は、実態よりもよいように映るかもしれない」とリード氏は補足している。

[原文:Media Briefing: Publishers’ Q4 earnings indicate the worst is not yet behind them

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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