パブリッシャー にかかる、量とスピードのプレッシャー:要点まとめ

DIGIDAY

2022年夏のように経済が混乱すれば、広告主はマーケティング予算の削減で対応しなければならないうえ、実施したキャンペーンでは確実に効果を出すことが求められる。そうなると、パブリッシャーから聞こえてくるのは、顧客の期待がさらに高まり、求められるスケジュールも結果も厳しくなっているという声だ。

BDGの場合、同社CRO兼プレジデントのジェイソン・ワーゲンハイム氏によると、2022年上半期の収益が31%増を見せ、年間総収益が前年比35%増となったが、これは、広告収益における1件あたりの平均取引高が前年比で15~20%増加していることにも起因しているという。

しかしながら、広告主はさらによい結果を求めながら、キャンペーンの開始を早めることを考えているとワーゲンハイム氏は述べる。

時間との闘い

  • パブリッシャーのなかには、広告主の強い要請で、提案依頼書受領からキャンペーン実施までの期間が大幅に短縮されているところも。
  • BDGでは平均50~60日だった営業サイクルが30日ほどにほぼ半減。
  • ブラビティ(Blavity Inc.)では、エージェンシーがKPIポストキャンペーン強化を求めて猛攻。支払の開始も日単位、場合によっては週単位で後倒しに。
  • 広告ビジネスの高まる要求に対応するため、営業前後を担当するスタッフの雇用が急務に。

検討の時間はほとんどなし

実際、BDGの平均営業サイクル(つまり、同社が提案依頼書を受け取ってから広告主が契約に署名するまでの期間)が約60日から30~35日に短縮されているとワーゲンハイム氏。それに、成約後も、BDGのポストセールスチームがキャンペーンにまわせる期間が短くなった。少し前まで、キャンペーンは成約後平均約12~16週間で立ち上がっていたが、現在では6~8週間あるかないかでも「運がいい」という。

インデペンデント(The Independent)でも同様の傾向が見られ、顧客からは迅速にキャンペーンを実施するよう求められている。その理由には、情報提供依頼書(RFI)の段階を飛ばして、直接、提案依頼書(RFP)の段階に進むことも挙げられる。つまりそれは、広告主が、ほかの選択肢の検討にはほとんど時間をかけていないということにほかならない。

「RFIははるかに減り 、確実性が高く、即座に展開可能なRFPの要請がはるかに増えている」とインデペンデントで米シニアバイスプレジデントを務めるブレア・タッパー氏は話す。

タッパー氏は同社の平均的な営業サイクルについて明言しなかったものの、6~8週間でキャンペーンを実施するのが標準になっていると話した。しかしながら、そのほうが好ましいと同氏は言う。なぜなら「正直なところ、RFPが16週間というのは、どこの誰でもかなり厳しい。だらだらと長すぎる。わが社の場合、サイクルは短いほうがありがたい」。

容赦ない要求

しかしながら、営業サイクルが短ければ、必ずしもポストセールスの期間が(ポストキャンペーン期間も)楽に素早くすむというわけではない。

ブラビティは今年2022年、顧客数が50件以上増加し、広告収益は上半期に56%上昇した。しかしながら下半期に入ると、一部の顧客では、総インプレッション数など重要業績評価指標(KPI)の目標達成が、不可能とはいわないまでも困難になった。しかし、その理由は期間の短縮ではない。ブラビティを創業したCEOモーガン・デボーン氏によると、これまで同氏のチームではRFP受領から数日でキャンペーンを実施してきた。特にディスプレイ広告を希望する顧客にはその傾向が強く見られていた。

「そもそも、エージェンシーの要求が高めなのは顧客がそう求めているからだ 。でも、エージェンシーはとても実現できないような内容を約束してしまう ので、基本要件を満たすためにはその分私たちががんばらなければならなくなる」とデボーン氏。「そのうえ、エージェンシーは支払いに時間がかかるし、インプレッションの交渉にもひとつひとつ 時間をかける」。

キャンペーンはインプレッションの数を増やせばいいだけではない。エージェンシーのビューアビリティ要件やフリークエンシーキャップ、ブランド安全性基準に即した、最適なインプレッションが必要になる。

「広告主は現在、成功を測定する手段としてこれまで以上に多くのKPIを求めている。この傾向は特に、パブリッシャーのファーストパーティデータを利用している広告主に顕著だ」。そう話すのは、メディアバイイング専門エージェンシー、メディアツー・インタラクティブ(MeidaTwo Interactive)のCEOセス・ハーグレイブ氏だ。顧客の間ではこの数カ月、より厳格な基準を求める傾向が見られるという。

動画やコネクテッドTVのような、ブランド認知や製品検討 の向上を目的として考えられたキャンペーンの場合、ハーグレイブ氏の顧客は、「パス分析」のデータを増やすよう求めているが、このデータがあれば、カスタマージャーニーの測定が可能で、「ブランド認知のキャンペーン」という点を、「顧客の利益に対する影響」に結びつけられると同氏は説明する。

要望に応じるには人材が必要

今回インタビューしたパブリッシャー3社は、キャンペーンの増加と厳しいスケジュールに対応するため、いずれも営業前後の工程に従事する人材(広告主との取引を確実に成約へとつなげる人材と、その成約した取引を実行に移す人材)を雇用している。

「今回雇用を進めているのは主に、イベント関連、アカウント管理、営業プランニングの人材、つまり、成約後の取引を実際に回してくれるスタッフだ。現在、その分野を中心に投資している」とBDGのプレジデント、ワーゲンハイム氏は答える。「ポストセールスチーム、特にアカウント管理チームは、2021年と比較するとおそらく30~40%増だろう」。

インデペンデントの場合、これまで顧客の要望に中心となって対応してきたのはプロジェクトマネージャーだ。

「現在われわれは、上昇気流にある。新規雇用でその多くが、こうした高まる需要に応えている。しかし、プロジェクトマネジメントやマーケティングチームを増やし、営業は営業の仕事に専念させるという考え方は、間違いなく150%正しい」とタッパー氏は断言する。

一方ブラビティのデボーン氏によると、同社ではディスプレイ広告を中心としたキャンペーンの増加が顕著だという。この手のキャンペーンはもともと比較的扱いが簡単だが、ポストセールスチームのクリエイティブやマーケターの仕事は少ないと同氏。そのためブラビディでは、営業やメディアプランナーなどプリセールスチームの規模倍増が急務となり、フルタイムのスタッフを5人に増員している。

[原文:Media Briefing: Publishers are feeling the pressure from advertisers to deliver more, faster

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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