景気後退が迫るなか、ゲーマーは広告付き無料タイトルに流れているのか

DIGIDAY

現在、あらゆる兆候が2023年の景気後退を示しており、ゲーム業界とeスポーツ業界はすでにその圧力を感じている。

eスポーツでは、かつてフナティック(Fnatic)やOGの主要スポンサーだったBMWのようなブランドが撤退。投資家は動揺しており、「eスポーツの冬」がやって来ると断言する専門家も現れている。BMWの場合、少なくとも担当者によれば、eスポーツのパートナーシップ支出はゼロになった。この担当者はDIGIDAYの取材に対し、「BMWは2022年末、eスポーツに関連する活動を終了した」と話している。

また、ゲーム業界は不況に強いと考えられてきたが、ロブロックス(Roblox)のような広告付き無料ゲームが台頭していることで、こうした期待まで裏切られる恐れがある。

経済的な逆風が強くなるにつれて、すべての目がゲーマーに注がれるようになっている。ゲーム開発者もeスポーツ組織も、景気後退がゲーマーの消費習慣に与える影響を注視しているのだ。この重要なテーマにフォーカスするため、DIGIDAYはユーガブ(YouGov)と協力し、GWIが提供する主要データポイントをもとに、ゲーマーが景気後退にどう反応するかを調査した。

2022年末にかけて1万9630人のゲーマーを対象に行った調査から、無料ゲームへの興味と有料で制作価値が高いプレミアムタイトルへの興味はほぼ均等に分かれているとユーガブは判断している(ユーガブは米国、ヨーロッパ、アジアなどの国際市場で自称ゲーマーを対象に調査を実施。回答は電子メールで寄せられた)。

約48%のゲーマーが無料ゲームに興味があると回答し、約53%が興味がないと回答した。注目すべき点は、ゲーマーの好みがどちらの方向にも傾いていないことだ。この2年で無料ゲームに興味を持つようになったという回答は約12%、無料ゲームへの興味を失ったという回答は約11%だった。

無料ゲームに興味を持った理由を質問したところ、回答者9271人の35%に相当する3248人が、無料ゲームを優先する直接的な理由として、プレミアムタイトルまたはゲーム機やPCの高額な価格を挙げた。また、33%の人が限られたビッグタイトルをプレイするより、多くのスモールゲームをプレイしたいと回答している。プレミアムゲームは通常、購入時に60ドル(約7700円)以上の費用がかかるため、これもコスト関連の要因と言える。

一方、無料ゲームの方が面白いという回答はわずか15%だった。最高品質のゲーム体験が無料ゲームではなくプレミアムタイトルで実現されていることは間違いない。しかし、コンソールゲームのコストが上昇しているため、景気後退が現実味を帯びてくると、無料プレイへの興味が高く維持される可能性がある。

ユーガブで全世界のゲームと米国のスポーツを担当するニコール・パイク氏は、「プレミアムゲームと聞いたら、業界関係者である私たちは69.99ドル(約9000円)のPS5向けゲームを思い浮かべるが、たとえば、モバイルだけで遊んでいるゲーマーの場合、広告のない2.99ドル(約380円)のゲームもプレミアムゲームと考えるだろう」と話す。「どのプラットフォームでプレイしたいかという土台のようなものがあり、それが物事の原動力になっている。実際、無料ゲームしかやりたがらないことと少なくとも主にモバイルゲーマーであることの直接的な相関を示すデータを私たちはいくつも見てきた」。

無料ゲームに興味がないゲーマーにとっても、ゲームプレイは大きな不安材料ではないようだ。

無料ゲームを好まないのは、プレミアムタイトルの方が面白いからと回答した人はわずか4%だった。ゲーマーの好みは明確だ。過去2年間、プレイ中に広告を見たくないため、無料ゲームを避けてきたという回答が66%に達した。

無料ゲームが台頭するなか、ソニーやマイクロソフト(Microsoft)などのゲーム機メーカーはゲーム内広告を有望な成長分野と捉え始めており、両社とも2022年、ゲーム内広告部門の立ち上げに着手したと伝えられている。しかし、もしブランドが本当に、多くの無料ゲームと同じような広告をプレミアムゲーム内に表示したいと望むのであれば、ゲーム開発者はゲーマーに悪い後味を残さない表示方法を考える必要があるだろう。

GWIから提供を受けたデータによれば、ゲーマーがゲームとゲーム内購入に投じる金額は2021年第4四半期以降、急激ではないものの減少している。2020年から2021年にかけては全体的に支出が増加したが、米国とカナダでは2021年から2022年にかけて、1カ月に50ドル(約6400円)以上をゲームに費やす人が減少した。これは本質的に、ほぼ例外なく60%を超えるプレミアムタイトルの購入が減少したことを反映している。

このデータに周辺機器、ゲームアクセサリーなどのゲーム関連製品は含まれていないが、ゲーマーが娯楽に投じる金額が減少していることは間違いなく、ゲーム開発者が将来のビジネスモデルとしてゲーム内広告や無料プレイを受け入れることの裏付けになる。

GWIのデータジャーナリスト、クリス・ビア氏は、「全体として見れば、複雑な結果が出ている。消費者信頼感は全般的に低下しており、ゲーム分野にも影響を及ぼしているが、そのシグナルは決して明瞭ではない」と分析する。「ゲーム機やゲーミングPCなどの大きな買い物は減りそうだが、個々のゲームの購入やマイクロトランザクションはそれほど影響を受けないと思う。ゲーマーは月々の予算を減らすかもしれないが、購入を完全にやめることはないだろう」。

[原文:Why gamers are flocking from premium titles to free-to-play, ad-supported games in this unstable economy

Alexander Lee(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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