TikTok で進む「デ・インフルエンシング」が意味するもの:マーケターもインフルエンサーも、より透明性の高い信頼できる存在に

DIGIDAY

「その商品を買わず、代わりにこの商品を買うべきだ」とのフレーズで始まったこの現象は、現在、TikTokが進める「デ・インフルエシング(De-influencing)」として、より知られるようになった。

例えば、ゲームのインフルエンサーは椅子やマイク、ヘッドセット等について推奨しない製品を紹介し、セフォラ(Sephora)の従業員は自社の宣伝文句に合致しない化粧品を批判。また皮膚科医はスキンケアに関して避けるべき商品をユーザーに伝えている。

「デ・インフルエンシング」とは、その名の通りインフルエンシングの真逆の行為。SNSのスターが商品を宣伝するのとは、正反対の手法である。

「人々は商品の価値に疑問を抱くようになっている」

ここ数カ月、SNSユーザーおよびインフルエンサーは過剰消費を避けるために、広く普及しているが推奨すべきでない商品について、よりオープンに主張するようになっている。ただし彼らの多くは、より安価であったり、あるいは普及している商品と競合する他の商品を推奨している状況である。これはちょうど、消費者がインフルエンサーの発言に疑問を感じ始めた時期と一致していると、各社のマーケターは口を揃えて話している。また彼らは、消費者が大量消費主義や見た目が綺麗なことを好む傾向から、コミュニティや信頼性、価値ある企業を重視する、より意識の高いライフスタイルへとシフトしているとも述べている。

「デ・インフルエンシングの考え方が拡まっていくにつれて、人々は手にした商品の価値や必要性に疑問を抱くようになっている。かつて消費者の本来のライフスタイルには合っていない商品を宣伝していた時代とは明らかに対照的だ」と、エリア情報配信アプリ、プレイシー(Playsee)で企業戦略責任者を務めるウェインディ・メイ氏は言い、さらにオーディエンスの要求も変化していると付け加える。事実、デ・インフルエンシングの普及により、クリエイターエコノミーの形も変わり始め、またブランドや企業もオンライン事業によるユーザーへの影響力の与え方も変化している。

インフルエンサーマーケティングハブ(Influencer Marketing Hub)によると、スポンサー付きインフルエンサーコンテンツが過飽和状態になっているという。2022年には関連収益だけで160億ドル(約2兆800億円)を超えたにもかかわらず、既にインフルエンサーマーケティングはピークに達したのではないかと考えるマーケターが増えている。今日のSNSユーザーは、企業による過剰な商品プロモーションやブランド各社がクリエイターと提携して進めたコンテンツにより、返ってインフルエンサーマーケティングに精通するようになっている。

その結果、本物ではないと判断したインフルエンサーから影響を受ける可能性が著しく低下している。ハブスポット(Hubspot)が実施した調査によると、過去3カ月の間に、Z世代の33%が、「信頼できるブランドか否かを試すために」インフルエンサーが推奨する商品を購入したことがある事実がわかった。

Z世代が感じている猛烈な不満

また、TikTokによるデ・インフルエンシングへの支持はここ3カ月で着実に上昇し、この記事を書いている3月初週時点で、プラットフォーム上に#deinfluencingタグが付いた動画の数は合計3億以上に達している。メイ氏によると、Z世代は現在、過剰な消費から、より意図的で持続可能な購買へと習慣を変化させている。呼応して、各社のマーケティング担当者はインフルエンサーのコミュニケーション手法をZ世代の価値観に合わせるよう強く求めるようになっている。

スパークス&ハニー(Sparks & Honey)のシニアカルチャーストラテジストであるモリー・バース氏は、「Z世代は、自分には必要のない商品をインフルエンサーが大量に売り込もうとするコンテンツに、猛烈に不満を感じている」と話す。

「それらの動画は総じて、倫理的とは言えず、また責任もあいまいで、持続可能という言葉とは縁のないものだ。富や財産を蓄えることが扇動された時代のもので、現在では、全体的に評価が低下している」とバース氏は語る。

TikTokで480万人のフォロワーを持つ人気コンテンツクリエイターであるタヤ・ミラー氏によれば、自身はこのトレンドに乗じたコンテンツ配信をしていないが、他のインフルエサーは(スポンサーがつかない限り)、このトレンドが続いて欲しいと話していると言う。クリエイターがオーディエンスに対して誠実であるためには、透明性が必要だからだ。

「クリエイターがオーディエンスに対して透明性を示せば、それだけで彼らをフォローする。もしも商品を宣伝するなら、正直であること、それがクリエイターにとっての第一の仕事と言える」とミラー氏は語る。

本物の価値ある提案が求められている

ミラー氏とバース氏が指摘したように、Z世代はコンテンツクリエイター、特に美容業界のコンテンツクリエイターが、さほど効果のない商品を売り込んでいる事実について、ますます意識するようになっている。マケイラ・ノゲイラ氏によるマスカラのスキャンダルは典型的な一例だ。

「消費者は、有名なインフルエンサーであろうとも、あまり惹かれなくなってきている。彼らが大手ブランドからどれだけの報酬を得て、ブランドの指示通りに発言していることがわかってきたからだ」とバース氏は述べ、さらに、真に才能のあるクリエイターはオーディエンスと本物の絆を作り上げてこそ、価値のある提案を生み出せるということを熟知している、と付け加えた。

「SNSユーザーは今、自身が普段使っている商品についてのコンテンツに対して警戒感を強めている。バックマージンがからんでいると思われるインフルエンサーのコンテンツは、明らかに受け入れられにくくなっている」とメイ氏は言う。「それゆえ複数のマイクロインフルエンサーを起用することで、ブランドは、広く支持されているインフルエンサーでは届かないようなニッチなオーディエンスにアプローチすることができる」。

[原文:As Gen Z embraces de-influencing on TikTok, marketers and influencers need to be much more transparent and authentic

Julian Cannon(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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