APS の価格改定問題、コスト上昇がSSPとパブリッシャーの関係に与える影響は

DIGIDAY

Amazon Publisher Services(以下、APS)は2023年4月、パブリッシャーが同社の広告主向けデマンドツールに接続するのを支援するアドテク企業に対し、2023年5月1日からの価格改定を通知した。

しかし、これはパブリッシャーとAmazonの「Transparent Ad Marketplace(TAM)」に接続しているSSPのあいだで大きな混乱と対立を引き起こし、11時間の交渉の末、APSが譲歩することになった。

いまのところ、AmazonとSSPのあいだの不和は、TAMのバイヤー手数料の引き上げに対応していくという点ではスムーズだが、今後3か月間は、より恒久的な合意に達するための複雑な作業が続けられることになるだろう。

混乱のきっかけは?

ことの始まりは約1ヶ月前だ。APSがSSPに対して広告主向けデマンドを提供するTAMへのアクセスの課金モデルを変更すると通知したことから、当初は不透明感が漂った。これは、5月1日から、0.01ドルのCPM課金から「ネット売上の2.5%」の手数料に変更するという内容だったからだ。

APSの一部のパートナーによると、この提案は「現在のコストより4~5%上昇する」というものだったという。多くのSSPにとって、従来の0.01ドルのCPM課金は無視できる範囲のものとの判断で、彼らはこれならカバーできると考えていたのだ。

相反するコミュニケーション

ここから、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)、マグナイト(Magnite)、パブマティック(PubMatic)などの主要SSPは、パブリッシャーパートナーにこの変更を伝え始めた。各社が出した声明文の文言を米DIGIDAYで確認したところ、細部の表現は異なるものの、インデックス・エクスチェンジは、1カ月間の値上げ分をカバーすることを提案し、(全体として)パブリッシャーへの月々の支払いを2.5%減額することで手数料をパブリッシャーに転嫁することを提案した。

しかし、APSはその後、パブリッシャーにまったく違う内容のメッセージを送り、あるメディアオーナーはそれを、「SSPがパブリッシャーへの毎月の支払いを2.5%減らすことはAPSとの契約条件に反する」という内容だと解釈した。4月24日から始まる週の前半にAPSからパブリッシャーに送られたメモには、「オークション後にパブリッシャーに課金することは、バイヤー(SSP)の契約に反する」と書かれていた。

事実上、このメッセージは、SSP(Amazonでは「TAMバイヤー」と呼ばれている)が2.5%の手数料を支払い、パブリッシャーパートナーに転嫁しないことをAPSが望んでいると伝えている。こうした一連の動きに対し、パブリッシャー筋からは戸惑いの声が上がり、SSPはこのような方針転換を実施するまでに限られた時間しかないことに難色を示した。

さらに、DIGIDAYが接触した複数の情報筋は、この動きは前四半期に前年同期比21%増の95億ドル(約1兆2750億円)に達したAmazonの広告売上を、SSPを犠牲にしてさらに増やそうとする動きを示すものだと解釈している。

5月1日の期限が近づくにつれ、関係者間で電話会議が行われ、最終的にAPSは、パブリッシャーからの同意があれば、SSPが当初提案した課金モデルを実施できるようにする一時的な妥協案を提示した。

板挟みになるSSP

パブリッシャーからSSPパートナーに送られた4月28日付のメールにはこう書かれている。「APSは、バイヤーパートナーがパブリッシャーごとに書面による承認を得て、グロスで入札すること(そしてTAM料金を毎月のパブリッシャーの支払いから差し引くこと)を一時的に許可し、その場合のみ、2023年7月31日まではネット入札要件を免除することを決定した」。

加えて、「APSが2023年5月31日までに所定のパブリッシャーから明示的な同意を得られなかった場合、2023年5月1日以降、すべてのインプレッションについて、提出された入札に対して所定のパブリッシャーに正味の金額で支払う義務を引き続き負うものとする」とも記された。

別の情報筋がDIGIDAYに語ったところによると、SSPは現在、APS契約に定められた要件に準拠した形で2.5%の手数料を控除できるソリューションを開発するためにAmazonと協議に入っているという。

あるパブリッシャー関係者はDIGIDAYに対して、「これは間違いなく、一部のSSPが板挟みになって身動きが取れなくなるケースだ」と指摘した。

[原文:Amazon grants reprieve to ad tech partners in APS’ ongoing pricing saga

Ronan Shields(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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