Appleと Google のプライバシーに関する新たな変更で、マーケターにとって7月は混乱の月に

DIGIDAY

暑い夏がやってきた。しかし、マーケターにとっての7月は雲行きがさらに怪しくなるかもしれない。

7月、AppleとGoogleはそれぞれのプラットフォームの新バージョンの発表に合わせ、プライバシーに関する新たな変更を導入する見込みだ。

AppleはiOS 17(2023年9月の正式リリースに先立ち、7月にパブリックベータ版が公開される)において、メッセージやメールで送信されるURLや、ブラウザ「Safari(サファリ)」のプライベートモードのリンクからリンクトラッカーを自動的に削除するようになる。

一方、Googleは「Chrome(クローム)」に新しいAPIを導入し、18カ月におよぶプライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)のロードマップを開始することで、プライバシーに関する独自の変更を進めている。

アップデートによる懸念

「Safari 17」がトラッカーとフィンガープリンティングをブロックすることで、Appleはユーザーのプライバシー保護を強化し、個々のユーザーの特定をより困難にする。しかし、マーケターのなかには、URLパラメータの削除はキャンペーン分析の信頼性を低下させる可能性がある、と述べる人もいる。

トラッキング防止ポリシーによる「意図しない影響」の変更には、広告測定に関連するURLトラッカー、埋め込みメディア、ソーシャルウィジェット、詐欺防止、ボット検出、オーディエンス測定、ターゲット広告やパーソナライズ広告に依存するWebサイトへの資金提供が含まれる可能性がある。

今後数週間から数カ月のあいだに、これらの変更が広告にどのような影響を与えるかは不明だが、次第に見通しが悪くなりつつある広告の世界をナビゲートする業界では、このアップデートは注意深く追跡されるだろう(Appleは、プライベートクリック計測のような代替ツールを提供しているが、この代替ツールは複雑すぎる、もしくは長期的な採用を促進するのに十分な実行可能性がないと見ているアドテク専門家もいる)。

Appleと緊密に連携しているあるアドテク企業の幹部は、米DIGIDAYの取材に対し「自分がWebサイト分析プロバイダーでなくてよかったと思う」と語っている。

ユーザー中心の測定が持続可能ではない理由

この変更がどのような効果をもたらすかをマーケターが確認するまでには時間がかかるかもしれず、IDFA(iOS端末の広告識別子)のようなAppleのほかの最近の取り組みほど大きな影響はないかもしれない。しかし、マーケティングエージェンシーのナック(Knak)がAppleの変更をテストしたところ、URLトラッカーの削除でWebサイト閲覧時にエラーが発生することがわかっている。

マーケティングサービスコンサルタント会社のケプラー(Kepler)で、マーケティング分析およびインサイト担当シニアバイスプレジデントを務めるマイケル・モナコ氏は、「Appleの変更によって影響を受けるユーザーの総数は膨大な数ではない」と指摘する。しかし同氏は、「それが既存の顧客や所有するファーストパーティデータを差し置いて、ユーザー中心の測定が持続可能ではないもうひとつの理由だ」と述べている(米国の消費者の3分の1がSafariを使用しており、そのうちプライベートモードを使用しているのは20%に過ぎない)。

また、「Cookieが非推奨となり、プライバシーソリューションが加速するなか、AppleやGoogleが提供する測定や分析は、追加的な対策なしにマーケティング活動のリターンを理解するのに、十分なほど包括的なものではない。ユーザー中心の測定に依存し続ける広告主にとって、これは測定を困難にするために展開されている、多様な削減策のうちのひとつに過ぎない」とモナコ氏は言う。

ファネルのさらに下を見る

一方でそれほど懸念しておらず、楽観的な意見もある。パフォーマンスマーケティング企業ティヌイティ(Tinuiti)でマーケティングテクノロジストを務めるニリシュ・パーサド氏は、「フィードバックループはすでになくなって久しいが、まだとどめは刺されていない」と指摘する。

リンクトラッキングを失うことは、より詳細な情報を得られなくなる可能性に繋がるが、パーサド氏いわく、今回の変更はユーザーが望んでいるものと一致しているという。また、「この業界が変化を乗り越えなければならないのはこれが初めてではない」とも指摘し、「デジタル時代が始まる前からマーケティングは生き残ってきた」と付け加える。「これは、皆が求めている答えではなく、我々が持っている答えだ」。

加えて、「フィードバックを得るために使っていた方法がなくなっていくにつれて、我々はどこで広告を出し、何が起こったかを確認するために、ファネルのさらに下を見なければならなくなる」と同氏は言い、「それこそが結合組織なのだ」と言い添える。

[原文:The privacy changes as part of Apple iOS 17 and Google’s Chrome could mean a messy month for marketing

Marty Swant(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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