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調味料ブランドであるフライバイジン(Fly by Jing)の創業者ジン・ガオ氏は、同社が2022年初めに、オンラインでのローンチからわずか数年でコストコ(Costco)に参入するというリスクを取ったと、昨年米モダンリテールに語った。しかし、ロサンゼルスでのテスト販売の結果、フライバイジンの2瓶入りの四川風チリクリスプは、予測の2倍の売上を達成した。
この傾向は新しいものではないが、新興企業が実店舗で全国に展開しようとするときのCPG(消費者向けパッケージ商品)プレイブックとして大きな置を占めるようになった。コストコは2022年の時点で年間メンバー数が1億1890万人で、全国最大のホールセールクラブだ。実際に、倉庫型チェーンはインフレの最中、より安価な食料品を求める買い物客を引き付けることで良い業績を挙げた。
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ケアオブ(Care/of)、グードルズ(Goodles)、ブルーランド(Blueland)などのD2Cファーストのブランドが、この数カ月に多くのウェアハウスクラブ(会員制の倉庫型卸売販売)の拠点に参入した。これらの企業の経営幹部によると、コストコやサムズクラブ(Sam’s Club)といった小売業者のウェアハウスでの買い物客は、ほかの層と異なっている。この層は一括購入に価値を求めるだけでなく、広大なクラブ店舗で新しい商品を探すことを好んでいる。この組み合わせから、若い企業にとっては、売り場を拡大してより多くの種類の顧客にリーチできるとともに、平均注文数が増えることで事業の加速を実現できるという二重の利点がある。
顧客層が重なっている
サプリメントブランドのケアオブは4月5日、全国のサムズクラブとオンラインで販売を開始し、ターゲット(Target)での販売に続く、2番目の卸売販売を開始した。ケアオブはサムズクラブ用に、同ブランドでもっともよく売れているサプリメントを含めた、男性用と女性用の2つのカスタムセットを作った。
「当社の顧客には多くの親や若い家族が含まれているため、サムズクラブと顧客層がうまく重なっている」と、ケアオブの共同創業者であるクレーグ・エルバート氏は語る。同社が2番目の小売の提携先としてウェアハウスクラブを選んだのは、ユーザー調査やクレジットカードのデータなど、顧客に関する知見に基づくものだったと、同氏は述べている。「我々の顧客が非常に多くサムズクラブで買い物していることがわかり、サムズクラブからインバウンドの関心を受けていた」と、同氏は述べている。
ケアオブは、自社のモバイルアプリも更新し、利用者が自社商品を購入した場所としてサムズクラブも選択できるようにした。この統合により、利用者がどのSKU(在庫管理単位)を購入したのかも迅速に同社へ通知され、毎日のリマインダーに反映されるようになった。「これによって、人々をアプリにオンボーディングし、当社のデジタル商品を紹介できるようになった」と、エルバート氏は述べている。
まとめ買いの傾向
ウェアハウスクラブは、人気商品を多数包装や、さらに大きな単位で提供し、家族や一括購入者にアピールすることで知られている。一方で、コストコは若い食品新興企業に人気があるチャネルであることが示されている。たとえば、プロテインバーのメーカーであるビルト(Built)は2018年にオンラインのD2Cブランドとしてスタートし、この1年間で、コストコや、サムズクラブ、ビージェイズ(BJ’s)の一部店舗で販売を開始した。同様に、2015年に創業したオーバーナイトオーツブランドのマッシュ(Mush)は今月、コストコの一部地域でバラエティーパックを発売する。ヌードルブランドのグードルズ(Goodles)は2021年11月にD2Cブランドとして創業し、この1年間でホールフーズ(Whole Foods)やターゲットなど、いくつもの小売業者に参入した。2月には、マカロニアンドチーズフレイバーの8パック入り版をコストコで発売した。
詰め替え用洗剤ブランドのブルーランド(Blueland)も、最近コストコに参入した企業で、コストコのサンフランシスコ・ベイエリア地域で早期販売を行ったあと、4月1日から全国の店舗で販売を開始した。人気商品である便器用洗剤の30錠入りバルクパックを18ドル99セント(約2540円)で発売したが、これは同社のウェブサイトで販売されている14錠入りの詰め替えパックとほぼ同じ価格だ。
ブルーランドの創業者であるセアラ・パイジ・ヨー氏は、洗剤商品の再購入率を考えると、コストコへの参入は「我々のビジネスの自然な流れ」だったと語る。同氏は、2019年に同社を立ち上げたとき、最初の3年間はD2Cの成長に注力することを早期に決定したと説明した。昨年黒字化を達成した同社は、ザ・コンテナ・ストア(The Container Store)やベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)との契約に続き、コストコやターゲットなどの小売業者といった小売業者への卸売を拡大している。
「当社のD2C顧客の多くは一括で購入する傾向があり、そのような購入にはすでに割引を行っている」と、パイジ氏は述べる。同社のD2C顧客の20%以上が、水と混ぜると30本の石けんができるハンドソープの3個入りパックを購入している。同様に、顧客は便器用の洗剤も一度に2~3個まとめて買う傾向がある。D2Cは同社にとって、特にリテンション(顧客維持)の観点から、依然として大きな収益源だ。しかし、このチャネルは、店舗内での買い物を好む顧客に合わせた新しい小売拠点によって、ますます補完されるだろうと、同氏は述べている。
大口注文への対応
このローンチは、ブルーランドが数年間にわたってコストコのバイヤーと関係を築いていたことから生まれたものだ。しかし、ブルーランドのような新興ブランドにとって、ウェアハウスクラブへの参入によって、新たな課題と機会がもたらされると、パイジ氏は語る。
「ベイエリアの店舗での最初の注文だけでも、当社にとっては非常に大規模で、ペースが速いものだった。当社の製造業者にとって、この注文を満たすのは大きな負担となった」と、同氏は述べる。しかし同社は、より多くの顧客がコストコでブルーランドの商品を見つけることで、一括パッケージへの投資が、販売量の増大を促進することに期待している。同氏はまた、ブルーランドのニュートラルな紙のパウチ包装が、コストコの陳列棚に並ぶ明るい色のプラスチック容器の洗剤のなかで目立つとも言及している。
ブルーランドはすでに、一部のコストコ店舗でのデモを試験的に開始し、消費者が個包装のタブレットを自宅で試せるように提供している。「しかし、今年のアースデー(Earth Day)には、コストコ198店舗で、当社のチームメンバーが中心となった大きな販売促進を行う」と、パイジ氏は述べている。
新しい販売形態を学ぶ場
ケアオブのエルバート氏は、「当社は、クラブが顧客と独自の関係を持っていることを認識している」といい、有料メンバーは通常、その小売業者の商品に信頼を置いていると付け加えた。サムズクラブなどの小売業者とのパートナーシップにより、同社は新しいマーチャンダイジングの形式を試すこともできると、同氏は述べる。同社は、ターゲットでは単一のSKUを販売し、D2Cでは顧客が栄養上の必要に基づいて独自のサブスクリプションプランを作ることができる。
同氏は次のように説明している。「このサムズクラブのパックは、その中間に位置し、価格帯も異なる。これは当社にとってはじめてのクラブなので、新しい速度レベルについて学ぶことになるだろう」。
[原文: More DTC brands are entering warehouse clubs]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Care/of and Sam’s Club