「CTV業界全体で、ユーザー体験のあり方を考え続ける必要がある」: Netflix 広告プレジデント ジェレミ・ゴーマン 氏

DIGIDAY

2022年はジェレミ・ゴーマン氏にとって大きな年となった。元Amazonのエグゼクティブであったゴーマン氏は、スナップ(Snap)の最高ビジネス責任者を辞任し、Netflixの全世界広告部門プレジデントに就任。その約2カ月後には、Netflixにも広告対応プランが導入された。

しかし、2022年が大きな年であったとしても、2023年は同社が広告ビジネスをさらに構築しようとしていることから、さらに大きな、そしてより忙しい年になると思われる。

実際、ゴーマン氏の生活はすでに忙しくなっている。2022年11月下旬、彼女は「世界最長のロードトリップ」に出発する準備をしていた。それは(業務のために)カリフォルニアからニューヨーク、ロンドン、パリを通り、最後に「クリスマスを迎える」という内容だった。

ゴーマン氏はこの長旅に出発する前に、Netflixの広告ビジネス、テレビ広告業界全体、そして自分自身に対する新年の抱負を米DIGIDAYに語ってくれた。インタビューは読みやすさのために若干の編集を加えている。

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――2023年の抱負は?

私のビジネス上の決意は、マーケターとユーザーの両方にとって、ユニークでほかと違っており、エキサイティングかつ魅力的な広告体験の基礎をしっかりと築くことだ。先駆者たちが築き上げてきた多くの素晴らしいビジネスの基礎の上に、新しいものを始めるチャンスだと思っている。

Netflixには、魅力的なコンテンツと(それが生み出す)大きなイベントや瞬間がある。その上でNetflixの将来の展望を考えた時に頭に浮かぶのは、スーパーボウルのようなものだ。スーパーボウルでは、人々は高品質なコンテンツ(試合)に適した高品質の広告のために、意図的にコマーシャルを試聴する。

Netflixはそれと同じように、エキサイティングでありながら、ほかとは異なるサービスの基礎を築きたい。我々のコンテンツと同じように高品質で、関連性が高く、そして面白いような視聴者が見たがる広告だ。

――その決意を果たすために何をするつもりか?

「クロール・ウォーク・ラン(まず地面を這うことを学び、それから歩くこと、最後に走ることを学ぶ、という時間と細かいステップで物事を学ぶアプローチ)」と呼ばれる方法で、この表現は多くの人が使っていると思う。最初にローンチしたのは、広告付きのプランを行うと発表してから実質的に6カ月後だった。したがって、最初に15秒と30秒という単位で開始した広告は、必ずしも長期的な野心を表すものではない。

しかし、これらの基本を正しく理解することは非常に重要だ。そのため、1年の多くの時間を、これらの基本を正しく理解し、価値と聴衆を(広告主に)提供することに専念している。時間をかけてより創造的なものを構築しようとしており、それが重要な部分だと思う。

そのためにも、マイクロソフト(Microsoft)とのパートナーシップをさらに強化していきたいと考えている。12カ国でローンチしてから半年の間に、何もない状態から現在の状態へと進化させたことは注目に値する。そして、営業の人材だけでなく、製品分野の人材、そしてコミュニケーションやマーケティングなどのパートナーからなる世界クラスのチームを雇用してくれた。

そしてもちろん、顧客と向き合う顧客経験チームのメンバーたちの存在も忘れてはいけない。彼らがフィードバックを受けることで、できる限り最高のサービスを確実に提供することができる。

とくに初期の頃は、クライアント協議会のようなものを主催したり、1対1の会議を開いたり、これから私が始めようとしている長旅をしたりして、広告コミュニティから彼らが何を求めているのかを本当に聞くことが本当に重要になるだろう。ここで過去25年間、ユーザー体験を成功させてきたチームと協力しながら、視聴者の経験と広告の間でバランスを取る。

――新年の決意には、障害が常に存在する。たとえば体重を減らそうと決意するけれども、冷凍庫のなかにはアイスクリームがあったりと……

私の場合はアイスクリームよりはドリトス(チップス)がハードルになるタイプだ。それはさておき、言いたいことは分かる。

――新年の目標を達成し、それにコミットし続ける上で、最大の障害や課題は何だと思うか?

最大の障害は、基礎をしっかりと最初に築くことなく、完璧な体験を急いで作るという誘惑に駆られることだと思う。測定、広告の提供、これらすべての基本的なことを適切に行うよう、コミットし続けることが本当に重要だ。広告主に必要な報告を確実に行うこと、ユーザーの体験が良好であること、コンテンツに対する広告のバランスが適切であること、コンテンツだけでなくメンバー自身にも関連性があること。これら全てをちゃんと達成する必要がある。

そして、とくに我々は創業25年であり、規模も現在の状態ほどあるということを考えると、(広告提供に関して)完成した状態に急いで持っていこうとする誘惑が生まれるだろう。しかし、それは間違いにつながる可能性があると思う。そして、その集中力と忍耐力を本当に維持するために、外部からの大きな興奮とプレッシャーを受けながらも、最初から常識を超えたようなほかと違うことをしなければならない。

――Netflixに特化したものではなく、業界全体を対象とした仕事関連の目標はあるか?

ある。一般的なテレビ、とくにコネクテッドテレビの世界では、頻度、プラットフォームを横断しての測定、同じユーザーが同じ広告を何度も何度も見ることがないようにするなど、参加企業全員が満足のいくユーザー体験を提供し続けることが本当に重要だと思う。(同じ広告を何度も見せられることは)調査によると、これはとくに迷惑であり、業界全体から人々を遠ざけることになるだろう。

そして、そこから少し視野を広く持って、マクロ経済的な意味で今我々が直面しているような時期について考えたとき、経済がよかったときのやり方と違う方法をしたいという強い誘惑があると思う。マーケティング業界全体にとって、このような時期にはマーケティング予算が削減されたり、計画からの逸脱が安全な飛行モードに戻ったりする傾向がある。そして、私たちは長い間、新しいフォーマットや新しいプラットフォームが生まれ、業界全体のイノベーションと興奮が非常に長く続く期間を体験していた。

私は、今のような困難な時期になっても、人々がイノベーションを継続する決意を持ち続けることを願う。すべての企業が、1年前とは状況が異なるからといって以前のやり方をただ放棄するのではなく、人々がこの時期を確実に乗り切るようにするために一歩一歩を真に実践し、広く顧客体験を革新し続けることを願っている。

――新年の抱負として、仕事以外のもので共有したいものはあるか?

隣人の工事が早く終わってほしい。今いるこの部屋が唯一静かな部屋なのだけれど、ここから出たいからだ。多くの人と同じように、コロナウイルスがもたらした期間は、自分自身を省みる時期だったと思う。

ただ自分の人生の可能性について考えるだけでなく、年齢を重ねる両親のことを心配するといった、自分が愛する人たちのことを考える期間であった。人生がまた元の忙しい状態に戻りつつあっても、こういった人々が自分の人生においてちゃんと優先的な存在であり続けるよう確かめようとした。

そして、私自身も同じように、以前は年間200日は出張で出ていた(おそらく、その生活に戻るのが現実的だろう)が、(コロナ禍において)以前からやりたかったことの多くのことをすることができた。たとえば肩の手術を10年も先延ばしにしていたのだが、それをすることができた。

また理学療法をやり、自分で料理をし、毎日エクササイズをするなど、狂ったように忙しい生活をしていると難しいことができた。そこで、私自身の決意は、人に関する適切な優先事項やアクティビティに関する適切な優先事項をしっかりと守り、時々自愛することを忘れず、土曜日には昼寝をすることだ。

――土曜日の昼寝ひとつだけでも、素晴らしい新年の抱負だ

土曜日に昼寝。「できますように」のリストに加えたいと思う。

[原文:A Q&A with Netflix’s Jeremi Gorman on her New Year’s resolutions for 2023

Tim Peterson(編集:塚本 紺、編集:島田涼平)

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