「これほどのストレスを感じる価値はない仕事だ」：転職した eスポーツ ジャーナリストの告白

eスポーツジャーナリズムは成長事業だが、人材の維持において深刻な問題がある。デサート（Dexerto）のようなeスポーツに特化したパブリッシャーが読者層を増やし、ワシントンポスト（The Washington Post）のような主要な出版者も、ゲームとeスポーツの独自バーティカルに投資してきた一方で、ほかの無数のeスポーツ関連パブリッシャーたちはこの数年の間に閉じられ、編集スタッフは他の分野に軸足を移すか、業界から完全に撤退することを余儀なくされている。

eスポーツジャーナリズム業界が抱えるさまざまな課題が原因で、成功した記者たちでさえも辞めて他の仕事に移っている。現時点でeスポーツパブリッシングの仕事を継続している人でさえ、定期的に燃え尽き症候群、比較的な賃金の低さ、ジャーナリズム自体への尊敬や理解がしばしば欠けている視聴者たち、といったものと戦っている。

匿名を条件に業界の裏事情を赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ、本稿ではDIGIDAYは、eスポーツのベテランジャーナリストとして働いていた人物に取材を依頼した。この人物はマーケティングの仕事に転職しており、なぜ方向転換したのかを聞いた。

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以下の会話は、長さとわかりやすさを考慮し編集および要約されている。

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――なぜeスポーツ・ジャーナリズムから離れることを決めたのか？

背景にあるすべての文脈を説明するのは難しい。昔はチームや選手が公表して欲しくないと思っていることについて報じた場合、さまざまな方法でチームに、ほとんど脅迫のようなことをされた。たとえば、チーム自身が声明などを出して、「これは間違っている」と発表する。そして、そのチームや選手のファンが自分個人のSNSやレディット（Reddit）のスレッドなどで攻撃してきた。

（サッカーや野球など）伝統的なスポーツでは見られなかったことなので、とても奇妙だ。伝統的なスポーツのジャーナリストが記事を投稿しても、そのサッカーチームが「このジャーナリストは間違っている」という声明をソーシャルメディア上で発表することはない。

――それはあなたの仕事に対する気持ちに影響を与えたか？

誰も理解しないことだが、（eスポーツについて報じることは）人生を変えるような内容の仕事ではない。これほどのストレスを感じる価値がある仕事ではないし、このクソみたいな扱われ方に我慢するほどの仕事でもない。私がとあるチームに選手が加わると報じたところ、そのチームから訴えると脅されたことがある。最近では、表向きは少し変わってきたかもしれないが、裏ではまだそのようなことが起きているだろう。

もうひとつ付け加えるとしたら、業界内で友情を維持するのは本当に難しいということだ。なぜなら、友人たちを情報源としても利用するからだ。しかし、それは自分自身の個人的な関係であり、これらの人々と実際に友達である。そのことが、本当に負担になることがある。

――eスポーツジャーナリズムでの経験は、マーケティング部門での仕事にどのような影響を与えたか？

助けになったし、妨げにもなった。残念なことに、恨みを持つ人がたくさんいる。これは私がジャーナリストとしてちょっと間抜けだったからかもしれないが、もしあなたがチームやインフルエンサーに話を聞きに行ったとき、彼らがあなたのことを、かつて自分たちの内部情報を持っていて、自分たちに関するニュースを公開したり調査したりしていた人物だと覚えていたとしたら、それはあまり「有益」なこととは言えない。まあ、たくさんのつながりを持ち、eスポーツで起こっているすべてのことを理解するのに役立つのは確かだ。

――特定の分野に特化するパブリッシャーたちを取り巻く状況について、どのように考えるか？

長期的な成功の基盤を持つような（専門パブリッシャーの）オプションはあまり多くない。現実の世界では、ガーディアン（Guardian）を読む人よりデイリーメール（Daily Mail）を読む人の方が多い。一般的に、人々は座ってeスポーツに関する長々とした話を読みたいとは思わない。人々は短いまとめのような文章を読んで、何か怒る理由を探している。

［原文：‘It’s just not worth the stress’: Confessions of a former esports journalist who pivoted to marketing］

Alexander Lee（翻訳：塚本 紺、編集：黒田千聖）