「2強状態は崩れた」:2023年が リテールメディア にとって重大な年になり得る理由

DIGIDAY

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これまでの数年間に多数のリテールメディアネットワークが出現したが、その多くにとって2023年は転向の年になるかもしれない。

シーブイエス(CVS)やターゲット(Target)などの小売業者は、ウェブサイトを広告プラットフォームに変換することを模索してきた。これは、Amazonの広告ビジネスが急速に成長し、年間約300億ドル(約4兆200億円)を生み出しているのを再現しようとする試みだ。

ウォルマート(Walmart)やインスタカート(Instacart)など2番手の広告業者の一部は2022年、自社のリテールメディア事業に多くの目立たない、しかし重要な変更を加えた。これらの変更は、より多様な広告フォーマットの追加から、パートナープログラムを拡大してセルフサービス機能を追加することまで多岐にわたるものだ。これらはすべて、使いやすさや規模において、Amazonに匹敵するプラットフォームをブランドに提供しようとする試みの一環だ。小売業者がこのようなプラットフォームを重視し、サービスの構築に多くの資金を費やすことで、2023年はこの分野にとって勝負の年になるかもしれないと、アナリストは予測している。

新しい収入源の確保

ピュブリシス(Publicis)の最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は次のように述べている。「どの小売業者でも、商品の販売はオンラインに移行しつつあり、店舗で販売していたときより利ざやが減少しているため、新しい収入源の確保に躍起となっている。またこれらの業者はAmazonが巨大な収入源を保有していることを見て、自分たちが乗り遅れていると思い、なんとかしてこの分野で競合することをめざしている」。

この分野には多くの可能性があるのは事実だが、過去数年間に多くのリテールメディアネットワークが立ち上げられたにもかかわらず、有意義な収益を得るには至っていないことを、同氏は指摘している。ウォルマートは2022年2月に自社のメディアおよび広告事業の収益をはじめて公表し、これらの収益が合計21億ドル(約2810億円)で、同社の年間収益の約1.4%であることを明らかにした。

しかし、今年はいくつかの理由からそれが変化するかもしれない。まず、これらのリテールメディア活動の多くが開始から数年間経過したことだ。ウォルマートは2021年に同社のメディアネットワークをリブランドし、クローガー(Kroger)は2017年にプレシジョンマーケティング部門を公開した。これらの小売業者は現在、さらに改善を加えながら運用を行っている。

ウォルマートは2022年7月、同社のリテールメディアネットワークであるウォルマートコネクト(Walmart Connect)に多くのAPIパートナーを追加し、広告の費用対効果を改善するためのセカンドプライスオークションを実装したと、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の10月のレポートで報じられている。2020年に自社のリテールメディアネットワークを設置したインスタカートも、今年は、ブランドが購入できるより多くの広告商品や、多くの広告の在庫を用意するためにも投資している。

リテールメディアの成長の可能性

さらに、クローガーとアルバートソンズ(Albertsons)の合併のニュースも、2つの食料品店チェーンが、両社のリーチ、売上、データ資産を合わせて魅力的な商品を生み出すことで、このリテールメディアネットワークの現在の情勢を覆す機会を提供した。

「ウォルマート、インスタカート、クローガーはすべて、来年収益を伸ばせる状態にある」と、インサイダーインテリジェンスの小売およびeコマース担当プリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は語る。「これら各社は、リテールメディアへの支出で、Amazonと競合するのにもっとも適した位置にあるが、3社とも(に加えて他社も)堅調な成長を見せるだろう。当社は、ウォルマートやインスタカートがいずれも来年に40%を超える成長を見せるだろうと予測している」と、同氏は付け加えている。

ゴールドバーグ氏は、ウォルマートやインスタカートなどの小売業者は、自社の広告在庫のリーチや幅広さを拡大したことにより、ほかのリテールメディアネットワークよりも大きな規模になったとしている。2022年ウォルマートはTikTokやスナップ(Snap)などのソーシャルメディアプラットフォームを自社の広告テックプラットフォームに統合し、広告主がウォルマートコネクトのターゲット設定を活用しながら、これらのソーシャルメディアプラットフォームで広告を行えるようにした。

「これらの各社は、それぞれ異なる種類の広告を作り上げた。各社は膨大な人数のセールス担当者を雇用し、現在は主にこれらの広告の販売にあたっている」と、ゴールドバーグ氏は述べる。ウォルマートは、最新の四半期に、同社のグローバル広告ビジネスが30%以上も成長したと述べている。これは、米国におけるウォルマートコネクトの40%の成長と、インドでウォルマートによりコントロールされているコマース広告プラットフォームであるフリップカートアズ(Flipkart Ads)の強さが主導したものだ。

メタとGoogleの2強状態は崩れた

一方でインスタカートは、同社のベンダーがより多くの買い物客とつながりを持てるよう、新しいタイプの広告形式を追加した。同社は11月にインスタカートプロモーションズ(Instacart Promotions)をリリースし、各ブランドが特定のプロモーションや特売を中心とする広告キャンペーンを作成できるようにした。

またリプスマン氏によれば、インスタカートには複数の小売業者による食料品販売モデルであるという利点もある。「同社は基本的な事業を非常に適切な形で構築し、多くの小売業者にわたって購入を促進している。そのため、大手のCPGブランドならインスタカートに投資している可能性が高い」と、同氏は述べる。

同氏は、これらのネットワークにより可能となる、ファーストパーティーデータの広範さや、閉ループの測定などの要因が、リテールメディアに資金を呼び込む長期的な推進要素となると語る。また、Appleなどのテック大手企業によるプライバシー環境の変更も、これらのリテールメディアの成長を加速させた理由だと付け加えている。

「メタ(Meta)とGoogleの2強状態は崩れた」と、同氏は述べている。「メタがターゲット設定と測定の能力について大きく低迷したとき、その広告資金はほとんどがGoogleに直接流入する傾向があった。しかし、消費者が商品をGoogleで検索する代わりに、Amazonで直接探す方向に移りつつあるなら、広告資金は長期的にGoogle検索からAmazonに移行するだろう」と、同氏は説明している。しかし、リテールメディアネットワークの成長により、各ブランドは自社の広告資金をさらに別の場所に移行することが可能となる。

ノンエンデミックブランドの参加

一方、2023年にこれらの企業に影響を及ぼす可能性のある大きな経済的要因のひとつは、景気後退の可能性だ。これによってブランドと広告主がマーケティングへの支出を切り詰めることで、広告予算は減少するのが一般的だ。

「それでも、リテールメディアネットワークは景気後退の逆風に対してもっとも抵抗力があると考えらる。なぜなら、そのような環境では通常、資金はパフォーマンスメディアへと流れる傾向があるからだ」と、リプスマン氏は語る。「第3四半期には、Amazonの広告の成長がほかのデジタル広告主よりも優れていたことで、この傾向がすでに多少なりとも具現化するのが見られた」。

最終的には、保険会社や自動車メーカーなどのノンエンデミックの広告主が、これらのリテールメディア広告ネットワークをトップオブファネルのマーケティングツールとみなすことで、もっとも大きな変化が起こるだろうと、ゴールドバーグ氏は予測している。

「リテールメディアが機能していることを示すもっとも簡単な兆候は、ウォルマートで商品を販売していない人々が広告を買いはじめるようになることだ。そうすれば、良い結果が期待できる」と、同氏は述べている。

[原文:‘The duopoly has been disrupted’: Why 2023 could be a huge year for retail media]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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