Amazon がNFLサースデーナイト配信を決定:広告主たちが期待する「リーチ・品質・測定」

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Amazonの「サーズデーナイト・フットボール(Thursday Night Football)」試合パッケージは、eコマース大手の同社にとって重要な時期に、より多くの広告主を取り込むことが期待されている。

テック大手である同社は2021年3月、同社のストリーミングサービスであるプライムビデオ(Prime Video)で、毎年15試合のサーズデーナイト・フットボールと、1試合のプレシーズンゲームを米国内で独占配信する10年契約を結んだ。同社は8月16日、同社のマルチチャネルメディアへの投資全体で、一貫したキャンペーンの測定指標を広告主に示せるよう、同社のストリーミングサービスで配信されるこれらの試合の「国内のテレビ視聴率」を測定する契約をニールセン(Nielsen)と結んだと報じられた。アドエイジ(AdAge)からの別のレポートによると、Amazonが抱える2億人のプライム会員のうち、控えめに見積もっても1250万人が同社サービスでサーズデーナイト・フットボールの試合を視聴するだろうと語った。

広告部門は増益基調

専門家たちは、AmazonがNFLとの契約によって利益を得るだろうとしている。なぜなら、同社がリーチ、品質、測定において、ほかのプラットフォームが対抗できないものを広告主に提供できるためだ。ニールセンのデータによると、昨年のNFLのレギュラーシーズンの試合は、標準1710万人の視聴者を獲得した。NFLの影響力とリーチは、Amazonの既存の広告ポートフォリオに存在するギャップを埋めるのに役立つだろう。すなわち、Amazonの既存の広告ポートフォリオは、意識的に何かを買いたいと思っている顧客をターゲットとすることに依然として強く特化しており、その問題を解消するために役立つ可能性がある。テレビを視聴している重要な瞬間に、売上などの行動情報に関するAmazonの主要な指標に広告主がアクセスできるようになれば、Amazonはこれまでには実現できなかったような方法で点と点を結び付けることが可能になるかもしれない。

Amazonの中核であるeコマースユニットの成長は鈍化している一方で、広告部門は利益を上げ続けている。最新の四半期において、Amazonのオンライン店舗における純売上は4%減少したのに対して、広告サービスからの収益は18%増加した。

プライム会員であれば、9月15日からのレギュラーシーズン15試合の配信を観ることができる。毎週午後7時(東部標準時)に、TNFトゥナイト(TNF Tonight)のライブ放送がはじまり、午後8時にはサーズデーナイト・フットボール・キックオフ(Thursday Night Football Kickoff)がはじまる。同社ウェブサイトの詳細情報によると、プライム会員は試合後にTNFポストゲームショー(TNF Postgame Show)やTNFナイトキャップ(TNF NightCap)で試合の振り返ったり、動きを分析することができる。

「純粋な量はさておき、広告主は、複数のタッチポイントにわたって、認知度、エンゲージメント、売上を結びつける独自のデータアクセスに価値を見出すだろう」と、デジタルマーケティング代理店のセラ(Sela)で最高マーケティング責任者とマネージングディレクターを務めるブレイディ・ドネリー氏は述べる。セラは、美容品およびウェルネス部門に物流およびデジタルマーケティングサービスを提供しているPCAグループの一部だ。

広告主からの大きな関心

またAmazonは、2018年に英国のイングリッシュ・プレミア・リーグ(English Premier League)の放映権を購入し、フランスのサッカーリーグ、ル・パ・リグー(Le Pass Ligue)の試合の80%を配信する権利を3億200万ドル(約414億円)相当の取引で獲得した。

「サーズデーナイト・フットボールは、Amazonにとって、米国で高品質のスポーツのライブ配信を行うはじめての試みだ。高品質のライブイベントを提供するのに、NFLほど良い機会はほとんどない」と、広告成長代理店のパーペチュア(Perpetua)の共同プレジデントを務めるアダム・エプスタイン氏は述べている。

プライムのリーチや総合的なパッケージとの相乗効果により、ブランドは、米国におけるほかのいかなるストリーミングTVのプラットフォームよりも、広い層に訴えかけることができると、エプスタイン氏は語る。Amazonは、4月に株主に送られた手紙のなかで、同社のプライムサービスの会員が2億人を超えたことを明らかにした。

当然ながら、広告主は大きな関心を抱いている。「サーズデーナイト・フットボールの試合は、極めて需要が多く、供給が足りていない」と同氏は述べる。

ファネル内のタッチポイントを総合的に測定

スポーツビジネスジャーナル(Sports Business Journal)のレポートによると、昨年のNFLのテレビ放送では、約800のブランドが合計62億ドル(約8500億円)を広告に費やした。支出額がもっとも多かったのはベライゾン(Verizon)(2億3390万ドル[約320億円])とプログレッシブ(Progressive)(2億3380万ドル[約320億円])の2ブランドだったと、レポートは付記している。

ドネリー氏は次のように述べている。「広告主にとって、商品が販売されるのと同じエコシステム内でストリーミングキャンペーンを展開できるということは、まったくユニークな能力だ。それによって広告主のファネル内のあらゆるタッチポイント、つまり、従来のストリーミングが存在していた最上部から、コンバージョンが行われる最下部、さらに、その中間を含め、すべてを結び付けることができる。この手法の効率性を個別ではなく総合的に測定するのは、驚くほど未開拓の部分だ。しかし、Amazonは大きな一歩を踏み出そうとしている」。

広告主をファネルの上部に移すのは、Amazonの広告ビジネスにとって優先事項だった。同社は昨年1月、DSPとPPC広告がどのように連係動作しているかをより深く理解し、広告戦略全体がショッピングファネルの中でどのような成果を上げているかを示す、Amazonマーケティングクラウド(Amazon Marketing Cloud)を導入した

他チャネルにはない計測能力

「ブランドがマーケティング予算をますます気にかけるようになった今、広告主は、Amazonにその予算を投資すれば、Amazonのような計測能力を持っていないほかのチャネルでは不可能な方法で、予算の効果を測定できるということに、急速に気づきはじめている」と、エプスタイン氏は述べる。

結局のところ、Amazonが視聴者数を増やすのに有利な位置にあるのは、その会員ベースの大きさだけでなく、その会員ベースが簡単に試合にアクセスできるからだと、ドネリー氏は言う。「ひとつのプラットフォーム上で、ひとつのサブスクリプションタイプが、米国全体で一様に使われている。このシンプルさは、長年にわたってコードカッティングを推進してきた強みと同じものだ。消費者は、消費したいコンテンツの種類ごとに、複雑で束縛が多い契約を結ぶことを望んでいないからだ。スポーツの場合、試合会場までの距離などの要因によってアクセスのしやすさが異なり、その複雑性の影響は特に大きい」。

[原文:Amazon Briefing: What advertisers can expect from Amazon’s NFL offering]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Amazon

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