TikTok の再生数操作疑惑、マーケターは利用を再考すべきか?

DIGIDAY

マーケターのあいだでもてはやされているTikTokだが、このプラットフォームにはなおいくつかの、マーケターを躊躇させるような問題が残っている。少なくとも、はた目にはそう見える。

先ごろ、TikTokでは内部で「heating」と呼ばれる機能を使って、バイラルにする投稿を幹部が選択できると報じられ、また大西洋の両側でTikTokが禁止される可能性も現実味を帯びるなか、この短編動画アプリのまばゆい物語に陰りが出るおそれは十分にある。

しかしTikTokのこととなると、いつものようにマーケターたちは特に動じる様子もなく、依然としてこのプラットフォームに夢中になっているようだ。

TikTokのアルゴリズムの欠点

とはいえ、プラットフォームを特別な存在にしていると思われる機能に疑いの目が向けられるのは、どのプラットフォームにとっても決して良いことではない。

「この新事実(TikTokのheating機能)は、それ自体が大きな混乱を引き起こすことはないだろうが、聞こえのいいものでないのは確かだ」と、イーマーケター(eMarketer)の主席アナリストを務めるジャスミン・エンバーグ氏は述べている。「またTikTokにとって、これは今年のドミノ倒しの始まりになるだろう。米国の規制当局をなだめるために、おそらくいくつかの大きな譲歩をしなければならない」。

しかし、一部とはいえTikTokの従業員がコンテンツを手動でユーザーにレコメンドできるとなると、裏ではもっと多くのことが行われているとも考えられ、正直なところ「怪しい」印象を与える。

エンダーズ(Enders)のシニアメディアアナリストを務めるジェイミー・マクイーワン氏は、TikTokの幹部によるheatingの使用(ユーザーの「おすすめ」フィードに動画をブーストし、より望ましい再生回数を達成すること)について、同プラットフォームのアルゴリズムが賞賛されているとはいえ、非常に積極的なパーソナライズエンジンを備えることには欠点もあると、TikTokチームが認識している証拠であり、これは同社がそうした欠点を何らかの形で埋め合わせるための手段なのだと説明する。

また、ガートナー・フォー・マーケティング・リーダーズ(Gartner for Marketing Leaders)のディレクターアナリスト、マット・ムーラット氏は、「heating機能は、TikTokのシステムが『良いコンテンツが常に勝つ』ほど完璧でないことを物語っているが、多くのマーケターは、最終的にお金がものを言うことを知らないほどナイーブではないだろう」と話す。

帰省こそが真の脅威

結局のところ、TikTokが関係の近いパートナーに対し、開発中のプロダクトのプレビューや今回の場合は動画のブーストなど、優位に立つ機会を提供することは常に予想されていた、とマクイーワン氏は指摘する。

また全体で見ると、このヒーティング機能は(具体的な数字はまだ確認されていないが)総再生回数のごく一部を占めるにすぎず、マーケターのオーガニックコンテンツに影響を及ぼす可能性は低い。

しかし、今回のような不手際が明るみに出たことで、TikTokのアルゴリズムの信頼性は、以前ほど強固なものではなくなったように感じられる。そして、政界、大学、さらには国全体でTikTokを禁止するという議論が、そうした根本的な懸念をいっそう大きくする。

実際、TikTokにとって規制こそが存続にかかわる真の脅威であり、今回のスタッフによるブースト行為より深刻な問題だと、マクイーワン氏はいう。したがって、今回のニュースが議員たちのあいだでTikTok懐疑論者を新たに増やしたり、TikTokが何らかの形で一線を越えたと彼らに確信させたりすることはないだろう。

「もちろん、ヒーティングやその他のツールを用いるなどして、TikTokのスタッフが問題のあるコンテンツを推奨したり、北京にいる上司から伝えられる編集方針に従ったりしていたことが判明すれば、話は変わってくるかもしれないが」とマクイーワン氏は述べている。

すべての関係者を満足させるには長い道のり

当初から、マーケターはTikTokに対してほかのソーシャルプラットフォーム以上に懐疑的な目を向けていたと見える。しかしそれは、TikTokが驚異的な視聴者数をもたらせるはずなのに、今なお、他プラットフォームのように、視聴からコンバージョンに至るまでを真に追跡する分析機能を構築できていないことが主な理由だと、ムーラット氏はいう。

しかし、このような欠陥がまだ解決されていないにもかかわらず、TikTokは今回の問題を、より大きなマネタイズの機会へと至る道のりに顔を出した、ほんの小さな出っ張り程度に受け止めるだろう。しかし、拡大途上にある短編動画アプリとして、このプラットフォームが規制当局、政策立案者、ブランド、クリエイター、消費者を満足させるものになるには、まだ長い道のりが待っている。

「規制環境に根本的な変化が起こるか、本当に大規模なスキャンダルが起こりでもしないかぎり、不満が積み重なっているとしても、TikTokがブランドとクリエイターの両方にとって重要なチャネルになるという事実に影響があるとは思えない」とムーラット氏は述べている。

[原文:With TikTok’s growing list of issues, should marketers think twice about the platform?

Krystal Scanlon(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:分島翔平)

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