広告主のため、イベントスケジュールを変更する パブリッシャー :要点まとめ

DIGIDAY

景気後退のなか、パブリッシャーは広告収益を最大限に伸ばそうと取り組み、イベントの予定を微調整している。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、対面の集客チャンスがすっかり奪われてしまったが、ここのところ、パブリッシャーの収入源としてライブイベントが復活を見せている。とはいえ、景気低迷で広告予算が厳しく抑えられるなか、広告主がイベント実施の数カ月も前から多額な予算の投入を確約することにおよびごしであるため、体験型広告の収益は再び危険な状況に陥っている。

広告主やメディアバイヤーがこのように躊躇する傾向は、2022年第4四半期に見られていた。この時期、パブリッシャーには一貫して短期的なキャンペーンの実施が求められ、ブランド独自のコンテンツよりも直販のプログラマティックのようにすぐ結果を出せる広告のほうが好まれた。

2023年のイベント計画にあたり、パブリッシャーのなかには、販売関連のスポンサーシップの可能性が高まるのではないかと考え、目玉イベントの開催を遅らせる選択をしたところがある。その一方で、予定通り変更しないことを選択するパブリッシャーもいる。

主なポイント

  • 2023年後半に入れば、広告主がさらに予算を投入できるようになるのではと期待を寄せて、冠イベント開催予定の後ろ倒しを検討しているパブリッシャーもある。
  • フォーブスは、広告主が体験型キャンペーン導入計画を希望していることに気づく。一方、メディアバイヤーは概ね、6カ月前倒しで顧客の予算を使うのは現時点ではあまりにもリスクが大きいと考えている。
  • ブルームバーグは広告を打つ予定で、イベントの時期はそのまま変えない。

確実に収益を得るためにイベントの間隔を空ける

アパートメント・セラピー・メディア(Apartment Therapy Media)のプレジデントであるリーバ・シロップ氏は「2022年11月からの数週間、チームのもとに届くイベントや体験型などのRFP(提案依頼書)の数がこれまで本人が経験したことのないほど増えており、2023年はイベント収益が見込めるので楽しみだ」とDIGIDAYポッドキャストで話している。

2023年に入ると米DIGIDAYに、シロップ氏から続報がメールで届いた。スポンサー2社がすでに、今秋予定されている同社のスモール&クール(Small/Cool)イベントへの参加を確定したという。これは、イベントで見込まれる収益の約25%にあたる。なお、今回の取引がもたらす収益の具体的な数字は公表されなかった。

「2023年のスモール&クールを秋に遅らせるのにはいくつか理由がある。ひとつは、その頃になれば消費者がお金を使いやすくなるのではないかと考えたからだ」とシロップ氏はいう。もうひとつの理由は、体験型に使う2023年の予算がどうなるのかわからない時点で、「広告主に無理強いしたくないからだ」と話す。「予算がはっきりするには、おそらくもう少し時間がかかるのではないか」。

エージェンシーのユニバーサル・マッキャン(Universal McCann)で総合投資担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジョン・レファーツ氏は「まだ2023年の滑り出しであり新年度が始まったばかりで、顧客は予算がどのようになるのかまだ見極めようとしているところだ」と話す。

アパーメント・セラピーのメインイベントは2023年後半まで開催されないが、シロップ氏によると、彼女のチームは2023年上半期のイベント収益獲得に向けて可能なタイミングで、広告主1社単独イベントの計画や、小売りスポンサー向けの体験型ポップアップストアの用意、ダイン・バイ・デザイン(Dine By Design)のような小規模フランチャイズの利用を準備している。

フォーブス(Forbes)のチーフレベニューオフィサーであるシェリー・フィリップス氏によると、同社のイベントスケジュールは予定がつまっており、前期は少なめではあるものの、後期は前期よりも予定が多いという。これは同氏いわく、「これまで何年も続けてきた編集戦略だ。とはいえ、イベントが埋まっているからといって、フォーブスがイベントを開催するたびに、広告収益があがるというわけではない」という。

「私たちが主催する会議のイベントには一部、スポンサーのつかないものもある。これは、その集まりを自分たちの手で盛り上げたい、そのコミュニティに貢献したいと考えているからだ。これぞ当社の柱だと思うイベントが、スポンサーなしであれば、資金は自分たちで集めることになる」とフィリップス氏は語る。2002年に開催したイベントにも、スポンサーはないものの、オーディエンスやコミュニティからみれば「成功」といえるイベントが数多くあった。なお、そうしたケースではチケット販売から収益を得ているという。

つまり、フォーブス・アンダー30サミット(Forbes Under 30 Summit)やフォーブス30/50サミット(Forbes 30/50 Summit)など、登壇者に大手企業の広告主が顔を並べることで知られている冠イベントは、年間を通じ、一定の期間をおいて実施されており、チケットの販売が大きく見込まれる。そのため、「市場が緩むのではないかと予測されるときでも、確実な収益獲得の一助になる」とフィリップス氏は話す。

迅速さ、柔軟性が求められる

広告主は「実に、毎月、毎週、計画を立てている。四半期単位ではない」とフィリップス氏はいう。そうした状況にあるため、イベントスポンサーシップの更新にはもともと、計画から実行までのリードタイムに1年が設定されているのだが、はじめてイベントのスポンサーを検討する企業には、キャンペーン6カ月前になるといつも出している注意喚起を必ずしも出していない。

「冠イベントの場合、直前になってスポンサーが手を挙げるケースがある。アンダー30がそのよい例だ。スポンサーがぎりぎりに駆け込むのはオーディエンスが信頼できるからにほかならない」とフィリップス氏は話し、「たとえば、マンハッタンにある施設フォーブス・オン・フィフスで開催されるような一部のカスタムイベントでは、スポンサーを決める期間が短いほうがやりやすくなる」と続けた。

「広告主の立場からすると、顧客はスマートだ――決して抜け目ないとはいいたくない。何せ、使うのは本人のお金なのだから」。そう話すのはユニバーサル・マッキャンのレファーツ氏だ。「誰も、お金をドブに捨てたいとは思わない。それに、2カ月先に何が起こっているのかさえわからない世の中なのに、6カ月前に金を出せ、といわれるのであれば、スマートになるは当然だ」。

フィリップス氏によると、フォーブスの広告主の80%が少なくとも2つのパブリッシャーのプラットフォームでキャンペーンを実施するという。つまり、ライブイベントのスポンサーシップは単独で売られることはまれで、ブランド専用コンテンツのキャンペーンやダイレクトなデジタルプログラマティック広告などさまざまなチャネルと並行して販売される。「広告主は、ひとつのイベントだけに集中しているわけではない」とフィリップス氏はいう。

レファーツ氏によると、従来のイベントスポンサーシップの枠を超えて、キャンペーンという要素もあることは、買い手にとって極めて魅力的だという。というのも、景気後退時に、顧客に大きな負担がかかる大規模キャンペーンは、「買いにくくなる」からだ。

価値なきものは去るべし

2023年1月第一週、ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)のCEOスコット・ヘブンズ氏が米DIGIDAYに話したところによると、同社は景気後退でスポンサーシップが販売できないからという理由で、イベントのスケジュールの後ろ倒しや立て直しをする予定はないという。というのも、同社では1週間にほぼ1件のイベントが予定されているため、1件を遅らせると、計画と実行の部分で物理的に仕事がまわらなくなるからだ。

しかしながら、この不況でイベント広告に影響がおよべば、うまく競争が抑えられるかもしれない。それに、広告主にとってどのフランチャイズが不要なのかも明らかになるよいチャンスだ。

「価値があり、誰もが行きたくなるような素晴らしいイベントなら、やり続けるべきだ。収益面から見えれば、期待したような当たり年にはならないかもしれないが、参加者には意味があるイベントであり、スポンサーにとっても意味がある」とヘブンズ氏は話す。「その一方で、メディアが扱うイベントには、よくないものや、残す価値のないものも山ほどある。そうしたイベントのなかには、それまで残ってくれていた唯一のスポンサーを失ったものもあるだろう。そういうイベントは永遠に消えてなくなるべきだ。プレーヤーが少し減るくらいがちょうどいい。土台、今のままでは雑然で、消費者にも分かりづらい」。

[原文:Media Briefing: Some publishers are changing event timelines to appeal to advertisers

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

Source

タイトルとURLをコピーしました