FOXニュース 、広告主獲得のためソフト路線にサイトリニューアル:バイヤーは「賢明な動き」と評価

DIGIDAY

FOXニュース(Fox News)は2023年3月1日、ウェブサイトのデザインを変更し、ホームページを訪れるオーディエンスに対してよりソフトなニュースや政治の報道を強調し、広告主に対してはより「ブランドセーフ」なコンテンツを提供するようになったと、FOXニュース・デジタル(Fox News Digital)エグゼクティブバイスプレジデント兼編集長のポーター・ベリー氏は述べた。

米DIGIDAYの取材に応じた3人のエージェンシー幹部によると、こうした変化は新たな広告主や予算を呼び込む可能性があるという。なお、彼らは、自分たちのクライアントが現在FOXニュースのサイトに広告を出しているかどうかについては言及を避けた。

デジタス(Digitas)の最高メディア責任者、メーガン・ジョーンズ氏は、「パブリッシャーが、消費者が自分たちのブランドを体験するための最良の方法は何かと考えるときは、いつでも賢い瞬間だと言える」と話す。

FOXで製品ならびに技術担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジョン・フィードラー氏によると、FOXニュース・サイトのデザイン変更は2017年以来となるという。それ以降、FOXニュースは犯罪、スポーツ、ライフスタイル、エンターテインメントの報道を拡大し、FOXネイション(Fox Nation)、FOXニュース・ブックス(Fox News Books)、さらに広告付きストリーミングサービス「FOXウェザー(Fox Weather)」を開始している。

ページビューは、FOXニュースのスポーツ、ライフスタイル、ワールド、自動車の各コンテンツで、前年比2桁の割合で増加したという。ライフスタイル、自動車、ワールド、メディアの各コンテンツでは、滞在時間も前年比で2桁パーセント増加している。FOXニュースは、生の数字データは公表していない。

変更点

トップページのメインカラムが、従来の3列から2列になった。画像やヘッドラインも拡大されている。製品チームが約1年かけて構築した新ツールで、編集チームがホームページ上のモジュールを作成したり移動したりできるようになった、とフィードラー氏は言う。トップページでは、ライブブログを表示したり、トピックに関するストーリーのカルーセルを作成したりできる。また、犯罪、ポップカルチャー、ライフスタイルの記事に関するキッカータブを備えた特別なブレイクアウトセクションも用意されている。FOXニュース・デジタルの読者の半分近くはこのページを経由している、とフィードラー氏は話す。

デジタスのシニアバイスプレジデント兼体験デザイン担当責任者、ジョシュア・テシェイラ氏は、(FOXニュースの)トップページを整理することで、最近多くの人がニュースを読んでいるモバイルデバイスでの体験が向上すると述べている。また、すっきりしたサイトを体験することで、ごちゃついた印象がなくなり、広告プレースメントが「より自然に感じられる」ようになる。

「編集に柔軟性が出て、これまでできなかったような方法で物事を強調し、バーティカルで行っている報道を紹介できる」とベリー氏は述べる。たとえば、「Meet the American Who…」では、ライトビール、バッファローウィング、交通信号などを発明した歴史上の人物にスポットを当てている。

右カラムには動画専用の新しいセクションがあり、ビジネス、ウェザー、ネイション、ニュースというFOXニュースのライブチャンネルが表示されている。どのチャンネルが無料で視聴でき、どのチャンネルへのアクセスに有料会員登録が必要かも表示されるようになった。

フィードラー氏によると、広告の読み込み時間は、前バージョンのサイトと比較して30~50%速くなったという。FOXニュース・サイトの広告は、プログラマティックと直販の両方で販売されている。デザイン変更後のサイトでも、利用可能なインベントリー(在庫)の量は同じだ。FOXニュースは、広告売上金額を公表していない。

サイトのリニューアルをチャンスと考えるバイヤーたち

DIGIDAYの取材に応じた2人の広告バイヤーは、FOXニュースがハードなニュースや政治以外のコンテンツをサイト上で利用しやすくすることで、より多くの広告主を引き込むことができると述べている。(ここ最近、他の報道分野に投資しているのはFOXニュースだけではない。)

UMワールドワイド(UM Worldwide)の最高マーケットプレイス責任者、ステイシー・スチュワート氏によると、同社は昨年、ニュースや情報サイトの信頼性を評価するニュースガード(NewsGuard)と提携し、「責任あるジャーナリズム」を提供する企業を特定するツールを顧客に提供した。ニュースガードは、FOXニュースのサイトを100点満点中69.5点と評価し、「例外を除き信頼できる」とランク付けた。

ニュース以外のコンテンツが増えれば、「コンテンツが一点集中型ではなく、よりバランスの取れたものになる」ため、このツールでのFOXニュースの総合スコアが上がる可能性があるとスチュワート氏は述べる。(なお、FOXニュースは現在、ドミニオン・ボーティング・システムズ(Dominion Voting Systems)が起こした16億ドル(約2180億円)の名誉毀損訴訟に巻き込まれている。FOXは、事実でないと知りながら、ドミニオンがドナルド・トランプ氏に対する投票を操作したという主張を放送したとされている。)

FOXニュースのサイトに「論争が少なく、クライアントにとってブランドの安全性が高い環境」が増えれば、「間違いなく」より多くの広告主やさまざまなカテゴリーを引きつけることができる、とスチュワート氏は言う。ニュースコンテンツにまつわるブランドの安全性や適合性の問題を考慮し、「(広告主の)中には、そのようなオーディエンスにリーチしたいと思いながらも、不安を抱えている人もいる」とスチュワート氏。「これでその問題の一部を解決できる」。

ジョーンズ氏は、FOXニュースの「熱心で熱烈な」オーディエンスをターゲットにしたいというクライアントは多いと言う。スチュワート氏もこの意見に同意する。FOXニュースが、重大ニュースや政治以外のバーティカルで規模を拡大し、さまざまなバーティカルのブランドに対してパッケージを提供できることを示すことができれば、FOXニュースはウェブサイトのリニューアルによって、広告主の予算を新たに獲得できるとジョーンズ氏は話す。ジョーンズ氏は、FOXニュースが最近行ったウェブサイトのリニューアルについて、また、重大ニュース以外の報道の拡大が読者を引きつけたかどうかについてはまだ結果報告を受けていないのでわからない、今後を見守る必要があると指摘する。

しかし、FOXニュースのウェブサイトでは何かが作用して、より多くの読者を引きつけている。保守系ウェブサイトのトラフィックを追跡しているザ・ライティング(TheRighting)がコムスコア(Comscore)のデータを分析したところ、2023年1月の同サイトへのトラフィックは前年比34%増と急増している。同サイトは1月、1億50万人のユニークビジターを獲得しており、ほぼ1年間減少していたオーディエンス数が2か月連続で増加したことになる。

[原文:Buyers say Fox News’ homepage redesign to highlight more non-hard news coverage is a ‘smart’ move

Sara Guaglione(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

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