アリーシャ・ウィリアムズ・ボイド氏が1月31日付でマッシャブル(Mashable)の編集長に就任した。テクノロジーやデジタルカルチャーを扱うメディアの編集幹部職は、概して白人男性に占められているのが現状だが、マッシャブルでも有色人種の女性が同職に就くのは初めてという。
前職もUSAトゥデイネットワーク(USA Today Network:以下、USATN)でシニアデジタルディレクターを務めていたウィリアムズ・ボイド氏は、米DIGIDAYの取材で、テクノロジー業界に巣食う男女格差や人種格差をめぐる「根深い」問題に言及し、マッシャブルが力を入れてきたこの分野の取材をさらに発展させて、より多くのオーディエンスに情報発信したいと抱負を語った。
ウィリアムズ・ボイド氏は親会社のジフメディア(Ziff Media)でパブリッシング担当シニアバイスプレジデントを務めるロナック・パテル氏の直属となり、英国およびオーストラリアの編集部を合わせ、50人以上の記者、編集者、ライターらの頂点に立つ。ちなみに、USATNでは、100余のニュース編集室に在籍する約150人の技術ジャーナリストたちを束ねていた。また、USATNのソーシャルメディアおよびニュースレター事業のオーディエンスエンゲージメント戦略やオプティマイゼーション戦略でも、主導的な役割を果たしていた。
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なお、同氏の発言内容は編集・要約している。
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――あなたはテック系パブリッシャーのニュース編集室を率いる数少ない有色人種の女性編集長だが、このことはあなたにとってどんな意味を持つか。
この根深いデジタルデバイドは確実に存在する。有色人種の女性たちは多くの問題に直面しているが、その反面、人材もスキルもリーダーシップも存在する。手を尽くして優秀な人材を発掘するのは、組織や組織の上に立つ者の責任だ。こちらが能動的に手を差し伸べ、人材を育て、幹部職に導く必要がある。
我々の社会には男女格差や人種格差が存在する。男子はSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)の分野を押しつけられ、女子はまた別の分野を押しつけられる。しかも、テクノロジー分野で仕事をする女性や社会的少数派は、不況や構造変化による解雇の対象になりやすい。テクノロジー業界のあり方を決める当事者として、女性の登用を進める必要がある。将来、この分野で女性が取り残されてはいけない。我々はそういう状況を繰り返し目の当たりにしてきた。意思決定が行われる場にいなければ、世界を形作る当事者とはなれない。
――マッシャブルの編集長として、今後の採用や取材の側面で、多様性の問題を特に重視するか?
入社してまだ日も浅いが、多様性が重要なテーマのひとつとなることは間違いない。そしてこのテーマを語るうえで、テクノロジージャーナリズムは非常に大きな役割を果たすことができる。オーディエンスがどこにいてもこちらから能動的にリーチして、アクセシブルで解説的な議論を展開したい。マッシャブルはインクルージョンの促進という課題に関して、すばらしい仕事をしてきた。私はこの取り組みをさらに発展させたい。アクセシビリティをめぐるコンテンツもそのひとつだ。
どんな組織も、多様なオーディエンスとのつながりを強化し、多様なオーディエンスが求めるコンテンツを作りたいと考えているが、そのためには戦略的であること、意図的であることが必要だ。その点でマッシャブルのニュース編集室は非常に意欲的だし、D&Iに対する熱意を感じる。マッシャブルが行ってきた、テクノロジー分野における男女格差や人種格差の取り組みを、今後さらに発展させたいと考えている。
(ウィリアムズ・ボイド氏は後日の電子メールでこう付け加えている。「マッシャブルはさまざまな側面、たとえば、調達、提携、雇用、フリーランスの活用などを通じて、自社の活動に多様な声を反映させることに努めてきたが、今後、この取り組みをどう発展させるかについても検討する意向だ」)
――今年の前半、編集長として取り組む最優先課題は何か?
そのテーマについては、ロナックとも長々と議論した。私がまず手を付けるべき仕事は、とにかく聞くことだ。現在、ニュース編集室のスタッフと個別の面談を行っている。どんなことに情熱を持っているか、どんな仕事をしてきたか、何に誇りを持っているか、どんなコンテンツを作ってオーディエンスの共感を得てきたか。ジャーナリストたちから話を聞いて、これからの活動の土台としたい。
壮大なビジョンを掲げたところで、現場のジャーナリストと話をしなければ意味がない。議論を重ね、ともにビジョンを作り上げていくことが重要なのだ。大きなチームであれば、そのなかにリーダー的な立場の人々が複数存在する。そういう人々の声に耳を傾け、仕事を任せ、それぞれが成長を望む分野で成長する手助けをしていきたい。
SARA GUAGLIONE(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)