クリニーク 、大学キャンパスでの取り組みを刷新し、強化中【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

ヘリテージブランド、クリニークは、若者のあいだでその名を知らしめた大学ベースのプログラムを減らしていたのち、刷新したアプローチを再ローンチした。

校外プールパーティでSPF製品を宣伝

クリニークは、「プロテクト・ユア・グロウ(Protect Your Glow)」という夏のキャンペーンの一環としてモイスチャー サージ 100H モイスチャライザー( Moisture Surge 100-hour moisturizer)と新製品のモイスチャー サージ SPF28(Moisture Surge SPF 28)を取り上げている。社歴55年の同社にとって、この種の初キャンペーンの一環として、4月末にフロリダ大学とアリゾナ大学で2つの学外プールパーティを開催した。クリニークのSPF製品の宣伝のためにこの2校が選ばれたのは、特に日差しの強い場所にあるという理由からだった。アクティベーションには、美容タッチアップバー、カウンセリング、写真撮影の機会などがあった。また、クリニークはコーチェラで「クリニーク ハイドレーション ハウス」とデイクラブを開催した。さらに、今夏はニューヨーク市、ロサンゼルス、シカゴで一般向けポップアップで移動式水分補給トラックをローンチする予定がある。そこではスキンケア関連の相談や写真撮影、商品のプレゼントなどが行われる。

クリニーク・ノースアメリカの消費者エンゲージメント担当エグゼクティブディレクター、マイア・マーティン氏は次のように述べている。「若い消費者、特に大学生はクリニークにとって重要なオーディエンスだ。なぜなら、いまは、多くの人々がスキンケアや美容のルーティンを見つけたり、作り上げたり、最適化している過渡期だから。市場における長年のプレゼンスを考えると、クリニークは多くの人に知られている。だが、関連性を高めて、最終的にはクリニークを最初に検討してもらえるように、当社を改めて紹介する機会がある」。

大学アクティベーションに注力するブランド

大学キャンパスでのアクティベーションは長年にわたり美容ブランドにとって柱となっている。(編集者注:自分の学生時代(いつかは秘密)にメアリー・ケイ(Mary Kay)が大学に来たのを覚えている。)しかし、生活のほかの面と同様に、パンデミックによって大学生活とその機能は一変した。学生たちはバーチャル授業やバーチャル卒業式への出席を求められたが、式にまったく出席しなかった学生もいた。だが、それ以来、大学生活は復活しており、多くのブランドが失われた時間を取り戻そうと努めている。1月には美容飲料ブランドのゴージィ(Gorgie)が大学キャンパス40カ所でブランドローンチアクティベーションを実施。4月にはフェンティビューティ(Fenty Beauty)がアルタビューティ(Ulta Beauty)と提携してハワード大学など数校の大学ツアーを行った。このツアーはフェンティビューティのプロフィルター ファンデーション(Pro Filt’r Foundation)とイーズドロップ ブラーリング スキンティント(Eaze Drop Blurring Skin Tint)の宣伝が中心で、フェンティは学生に合ったシェイドを提供した。

大学の進化に合わせたアクティベーションの進化

クリニークのプールパーティのコンセプトは、同社が25年間実施してきた校内書店でのビューティカウンターなど時代遅れの感があるほかの取り組みに取って代わるものだ。クリニークカウンターは最初にマサチューセッツ工科大学で行われてから、2017年までにイェール大学やオハイオ州立大学など30大学に導入された。Glossyの以前のレポートによると、クリニークは2018年の時点でキャンパス内カウンターの宣伝や拡大を行ってはいなかったものの、このプログラムを正式に中止したわけではなかった。

「書店は進化した。いまでは大学のグッズだけを買う場所になっている。そして、書店の進化と同様に、(大学生)層との関与方法という点で当社も進化している」と述べているのは、クリニーク・ノースアメリカのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、ベス・グアステラ氏だ。「当社は(若者から)知られてはいるが、我々は学生に製品を使ってもらい、当社について違った見方をしてもらいたいと思っている」。

クリニークは、2021年、既存の製品であるブラックハニー(Black Honey)リップスティックが無償投稿でバイラルになったことから、大学生にリーチするためのアプローチを見直した。ブラックハニーリップスティックはTikTokで透け感がありながら重ね使いができるベリー系の色合いが若者に気に入られ、人気を集めている。20ドル(約2700円)という価格ゆえにほとんどの人が試すことができ、ベストセラーであり続けている。アリックス・アール氏のようなTikTokメガインフルエンサーらが大学時代に美容とは関係のない個人的な話をしながらメイクアップのチュートリアルを行ってフォロワーを増やしたことも注目に値する。アール氏はマイアミ大学の学生だ。

親会社も注目するクリニークの業績

エスティ ローダー カンパニーズ(The Estée Lauder Companies)は、5月3日に第3四半期の収益を発表。収益は37億5000万ドル(約5090億円)で、前年同期比12%の減少だった。だが、クリニークは決算発表で「製品のバイラルな成功をうまく活用した事例」として何度も言及された。これは、バイラルになったオールモーストリップスティック(Almost Lipstick)とブラックハニーリップ製品の売上と、インドやブラジルなどの新興市場での成功を指している。シミラーウェブ(SimilarWeb)によると、Clinique.comのオーディエンスは女性が70%で、トラフィックの約25%が25~34歳、約18%が18~24歳である。

「プールパーティは、書店でのプレゼンスやサンプル配布だけではなく、体験を提供する素晴らしい方法の例だ。(体験は)大学キャンパス内外での(顧客とのつながりのために)当社が考えている方法である。また、小売店やオンラインでの体験においても(顧客とのつながりを)検討している」とグアステラ氏は語った。プールパーティに関する正確な数字はまだ出ていないとして、その業績指数は同氏からは共有されなかった。

クリニークはほかにもマーケティングや店舗体験を展開している。2019年には初のポップアップストアをオープンし、カスタマイズ美容に注力した新製品(当時)のモイスチャライザー、クリニーク iD(Clinique iD)を宣伝した。2022年にはメイシーズ(Macy’s)と共同でクリニークラボ(Clinique Lab)という新しい店内コンセプトを始めた。クリニークラボは小売スペースを固有のゾーンに分割して、ビジュアルマーチャンダイジングにいっそうインタラクティブなアプローチを取り入れている。オンライン・デジタルプレゼンスにおいては2021年にブランドロイヤルティの一形態としてNFTを試しており、クリニークの分子からインスピレーションを得たNFTとクリニーク製品10年分のプレゼントも含まれていた。2022年6月には「メタバース・ライク・アス(Metaverse Like Us)」というメタバースキャンペーンを行った。

学生から希望されているアンバサダープログラムを開始

大学での戦略的な取り組みにはクリニークのアンバサダープログラムもある。クリニークが大学メディアサイト、ハー・キャンパス(Her Campus)と実施した調査によると、Z世代の83%がソーシャルメディアを通して新しい美容・スキンケア製品を見つけていることが判明した。さらに、Z世代の72%がもっと多くのブランドによるキャンパス内アクティベーションやアンバサダー活動を希望すると回答した。クリニークはこの情報を念頭に置いて大学キャンパスでのイニシアチブを再考、2022年に有償のアンバサダープログラムをローンチした。現在、米国の50の大学キャンパスに53人のアンバサダーがいる。このプログラムは300キャンパスに拡大される予定である。教育統計企業のシンク・インパクト(Think Impact)によると、大学新入生の54%がクレジットカードを持っており、大学キャンパスマーケティング会社リフュール(Refuel)は大学生の購買力は5930億ドル(80兆円)だと主張している。

「(大学でのアンバサダープログラムにより)消費者対ブランドではなく、ピアツーピアの意見を伝えることができる」とグアステラ氏は語っている。

大学生は学期ごとにアンバサダーとして参加し、インスタグラムのフィード内投稿を2本、TikTokとインスタグラムリールのビデオを2本投稿する必要がある。また、サンプルを配布する美容関連のアクティビティを3つ催さなければならない。さらに、クリニークは、オンボーディングの一環として、バーチャル「キックオフ」コールと2つのブランドワークショップに参加するようアンバサダーに求めている。最後に、アンバサダーは学期終了後にクリニークのバーチャル卒業式に招待される。アンバサダーは3回の「パルス」期間に自分用と友人用として製品を無料で受け取る。クリニークはハー・キャンパスと協力してアンバサダーを募集、応募要項はハーキャンパスのサイトに記載されている。資格には、インスタグラムとTikTokで1500人以上のフォロワーがいること、影響力のあるコンテンツ、創造的なコンテンツ、またはコラボ的なコンテンツを提供していることが含まれる。

マーティン氏は次のように述べている。「当社のブランドは皮膚科医が開発したブランドであり、安全性と有効性を提供するだけではなく、消費者が美容ルーティンを実践する際の教育を提供することにも尽力している。これが相違点であり、若い消費者が肌の変化に直面するとき、当社はあらゆる段階においてリソースになることを目指している。大学に特化したイニシアチブは、当社がこのような若いオーディエンスと関与するために検討している多くの方法のひとつにすぎない」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Clinique goes back to school with college campus intiatives

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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