見つからない「 Twitter と同じ」プラットフォーム:進むソーシャルメディアの断片化と、戦略の複雑化

DIGIDAY

イーロン・マスクがTwitterを買収して以来、Twitterは常にヒートアップかつ混沌とした状態にあり、一部の大手広告主はTwitterを離れつつある。

その一方で、マストドン(Mastodon)、ハイヴ・ソーシャル(Hive Social)、ポストニュース(Post.News)、そしてローンチが間近に迫っているスピル(Spill)などの代替プラットフォームに移動するユーザーも少なくない。しかし多くのマーケターは追随するかどうか迷っている。

「Twitterに代わる選択肢は存在しない」

とはいえ、Twitterの代替サービスがどのようなものになり得るのか、誰も興味がないわけではない。「しかし最終的には、ブランドの安全性やプラットフォーム上の不確実性に問題があったとしても、現時点でTwitterに代わる論理的な選択肢は存在しない」と、ミネアポリスに拠点を置くソーシャルメディアエージェンシー、ザ・ソーシャル・ライツ(The Social Lights)の最高クリエイティブ・戦略責任者であるグレッグ・スワン氏は米DIGIDAYに回答した。「今後数年間で(Twitterよりも)優先すべきプラットフォームが他に現れるか、というと、それは現れるだろう。しかし、何がそうなるかはまだ見えていない」。

ブランドが我先にTikTokで存在感を確立しようとしていた時とは異なり、一部のブランドがTwitterを離れる動きは、前述のような激変の中にあるにも関わらず、それほど大きなものではなかった。実際、多くのソーシャルメディアエージェンシーは、Twitterに真に対抗できるような広告インフラ、検証済みのユーザー数、ブランドの安全性フレームワーク、オーディエンス数を提供する多くの代替アプリがまだないことを考慮して、顧客に代替アプリを推奨することをためらっており、静観モードにあると述べている。さらに、一部のマーケティング担当者は、Twitterでの広告のメリットがリスクを上回ると考えている。

VMLY&Rのエグゼクティブ・ディレクターでソーシャル部門の米国責任者であるリズ・コール氏は、「我々のクライアントの中でもよりリスクを取るクライアントたちの中では、現状でTwitterの代替として名乗りを挙げている、あるいは他から位置付けられているプラットフォームは魅力的ではないと見られている。なぜなら、(それらのプラットフォーム)がオーディエンスの間で人気があるかどうか、は明らかではないからだ」と述べた。「運用面では、Twitterから大きく退いた当社クライアントのブランドであっても、決して(Twitterに対する)興味が消滅したわけではない」と彼女は付け加えた。

「Twitterと同じプラットフォームは他に存在しないだろう」

昨年末、イーロン・マスクはTwitterの買収を開始し、大規模なレイオフ、ユーザー承認システムの見直し、禁止されていたアカウントの復活、絶え間ないプラットフォームとポリシーの変更を行い、広告主とユーザーの両方を動揺させた。この波乱によって、独立したサーバーによって構成された分散型のソーシャルメディア、マストドンや、「マイクロブログ」のプラットフォームであるハイブ・ソーシャルやポストニュース、また、Twitterの元従業員が立ち上げた新しいソーシャルメディアのスピル(Spill)といったプレイヤーたちが注目を集めるに十分なスペースが生まれた。Twitterの創業者であるジャック・ドーシーでさえ、ブルースカイ・ソーシャル(Bluesky Social)という新しいソーシャルメディア企業の計画を発表した。

最初は、ユーザーたちはTwitterを離れて他のプラットフォーム(ほとんどがTwitterに最も似た選択肢の1つであるマストドンを挙げた)に移ると表明し始めた。センサータワー(Sensor Tower)とeマーケター(eMarketer)によると、マストドンの利用は10月15日から10月26日の間に全世界で6380%急増し、マスクの買収後の10月27日から11月7日の間にも再び急増した。

しかしこの急成長も、多くの人が同アプリがユーザーフレンドリーではないと報告した直後に沈静化した。そしてTwitterを離れるユーザーの流れは、これ以上の大きな波にはならなかったようだ。Twitterの代替手段は何か、というのはソーシャルメディア業界ではまだ探求されていない分野であり、マスクによる上記の変更点も、Twitterから逃げ出してその未知の領域にユーザーを追いやるほど悪いものではなかったようだ。

Twitterはまだ存在している

「保守派の人々が昨年Twitterアカウントを停止され、利用禁止になり、ガブ(Gab)、ゲッター(Gettr)、マインズ(Minds)などのプラットフォームに移行したときに知ったように、どのプラットフォームもTwitterの代替となりうる」とSEOおよびデジタルマーケティングエージェンシーランク・セキュア(Rank Secure)のCEOであるバルック・ラブンスキ氏は述べた。「ただし、Twitterと同じプラットフォームは他に存在しないだろう」。

同氏によると、Twitterを離れて、時間と労力を別のプラットフォームに投資することは、すでに構築されたコミュニティを失うことに加えて、それまで持っていたオーディエンスを必ずしも反映しない新しいコミュニティを、一から構築しなければならないことを意味する。「(Twitterを含む)どのプラットフォームにおいても、変更や(費やす)時間の短縮は考えていない。Twitterは多くの好奇心旺盛な見物人を獲得しており、私にとっては存在感が高まった形となっている」と付け加えた。

この点、ラブンスキ氏は間違っていない。2022年7月から12月までの半年間だけでも、マストドンへの月間平均訪問者数は320万人、ハイブへの訪問者数は47万8000人、ポストニュースへの訪問者数は150万人だった。これらはシミラーウェブ(SimilarWeb)のデータによる。これらの数字は、マーケターたちがTwitter上で得られる月間アクティブユーザー4億5000万人と比べると極めて小さい。これらの代替プラットフォームはそれぞれユーザー数を拡大しようとしている最中であり、当然ながら豊富なフォロワーを獲得するにははるかに長い時間がかかる。

Twitter以外にも、TikTokからディスコード(Discord)まで、さまざまなソーシャルメディア・プラットフォームが用意されている。言うまでもなく、Twitterはまだ存在しており、マーケターたちが選択すれば同プラットフォームに戻ることができる。特に、予測される経済の不確実性によって広告費がこれまで以上に精査されているため、マーケターたちは時間とお金をどのように使うかを選択する必要がある。

マストドンでのオーガニック展開

Twitterの代替候補の競争には明確な勝者はいないが、マストドンはTwitterと類似点があることから、最も関心を集めているようだ。ブルームバーグ(Bloomberg)によると、実際にマスクがプラットフォームに加えた変更が理由で、一部のTwitter創業者までがマストドンに移籍したという。

ヴェラソニ・ワールドワイド(Verasoni Worldwide)、スマートリー.io(Smartly.io)、バッテンホール(Battenhall)といったマーケティングエージェンシーはマストドンを試している。「私たちは、マストドンの成長を見た上で、テック・コミュニティを追いかけるブランドたちを助けるために(マストドンの利用を)した。」とバッテンホールのCEOドリュー・ベンビー氏は述べた。「私たちの見方では、(代替手段)を使った経験から言うと、Twitterとマストドンは両方を活用することで、本当にうまく機能する」。

ベンビー氏によると、マストドンにおける戦略の大部分はオーガニックなもので、企業の広報担当者がプラットフォーム上に存在感を生み出し、ターゲットとなる顧客とつながるというものだ。しかし、プラットフォームに関する多くの不明な点があるため、悪意を持ったユーザーやマストドン・コミュニティを怒らせてしまうケースを避けるためには、さらなる傾聴と学習が必要である、と彼は付け加えた。

レベルが一つ下のチャネル

マスク以前にも、Twitterは広告主にとってのメリットを維持する点で課題を抱えていた(有料広告かオーガニック投稿かに関わらず)。つまり、広告主による広告支出や戦略的取り組みのマーケットにおけるTwitterのシェアは、InstagramやFacebook、TikTokといった既存のアプリと比較して見劣りしていた。ユーザー利用の点でも、Twitterの数字はYouTube、Facebook、Instagram、ピンタレスト(Pinterest)、スナップチャット(Snapchat)、さらにはリンクトイン(LinkedIn)にさえ及ばなかった。2021年、ピューリサーチ(Pew Research)は、米国成人の23%が定期的にTwitterを使用していると報告した。Facebookの場合、この数字はそれよりはるかに高く、米国成人の69%が同アプリを利用している。

Twitterが昨年末に買収され、一部の広告主が撤退して以来、「(Twitterで使われなくなった)広告費はどこに行くのか」という疑問が残っていた。その答えは「他のあらゆるところ」となった。

マーケターたちによると、クライアントがTwitterから離れることと、Twitterに似たプラットフォームに向かうことの間には、必ずしも相関関係はないようだ。エージェンシーの顧客は代わりに、レディット(Reddit)、TikTok、メタ(Meta)など、すでに確立されたプラットフォームを探索し、投資することを求めている。

進むソーシャルメディアの断片化

「私のクライアントのほとんどは、必ずしもTwitterをこれらのサービスで置き換えようとは考えていないが、戦略のリストに他のプラットフォームを追加しようと考えている」とラブンスキ氏は述べた。「時間が経てばTwitterへの取り組みは減るかもしれないが、Twitterの方向性を見極める必要がある」。

デジタル・エージェンシーのキャンバス・ユナイテッド(Canvas United)プレジデントであるマーク・レイナス氏によれば、このことはソーシャルメディアの断片化という現在の傾向を象徴しているという。つまり、さまざまなプラットフォームにまたがって構築されたオンラインコミュニティが増えており、そのためにマーケティング担当者はソーシャルメディア戦略を検討する必要がある。

「Twitterへの投資から手を引いた場合に、これらのプラットフォームはテストを行って学習する、論理的な次のステップである」とレイナス氏はレディットやTikTokといったプラットフォームに関して述べた。「必ずしも新しいスタートアップ・ソーシャルチャンネルがこの競争の勝者にはならないだろう。実際には、多くのソーシャルメディアプランにおける、一つ下のレベルのチャンネルのいくつかが(Twitterが失った広告支出の)勝者となるだろう」。

[原文:‘No other platform will be Twitter’: Marketers aren’t sold on Twitter alternatives just yet

Kimeko McCoy and Krystal Scanlon(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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