インドでJKが知った常識の大誤解 – PRESIDENT Online

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インドでは毎日なにを食べているのか。インドに家族で引っ越した高校生の熊谷はるかさんは「カレーばかり食べることになると思っていたがそんなことはなかった。常識として受け入れていたことが、実は常識ではないと気づかされることがたくさんあった」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、熊谷はるか『JK、インドで常識ぶっ壊される』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

各種インド料理

※写真はイメージです – 写真=iStock.com/margouillatphotos

日本製みたいにうまく開けられないヨーグルト

インドに住んでいると言うと、大抵まず聞かれるのは食事のことだ。インドに引っ越すとまわりに告げたときも、いちばんに心配されたのは食生活だった。

「毎日カレーしか食べられないの?」
「家でもカレー食べるの?」

だが、そんなひとたち全員に言いたい。

インドに住んでるからって、毎日カレーじゃないよ‼‼

カレーを食べるのは1週間に1回くらい。それ以外は、日本とあまり変わらない食生活だ。

わたしの典型的な食事は、こんな感じだ。

朝は、ヨーグルトとたくさんのフルーツ。ヨーグルトは、インドでは「ダヒ(Dahi)」と呼ばれていて、現地人はカレーに入れたり、揚げ物のディップに使ったり、日本でも有名なラッシーのように飲み物にしたり、と意外にもインド料理において重要な食材のひとつだ。牛乳を発酵させて自家製ダヒを作るひとたちもいるが、お店でも売っている。

ただ、この市販のダヒの難点は、パックのふたが異常に開けにくいこと。日本のヨーグルトと同じように剝がして開けるタイプなのだが、その「剝がし」がうまくいかず、必ず途中でちぎれてしまったり、変に曲がって開いてしまったりするのだ。日本のヨーグルトのように、中身がフタにつかない! というイノベーションのレベルには到底達していない。だから、朝起きてヨーグルトがうまく開けられた日は、それだけで特別ラッキーな気分になれる。

マンゴーはインドの猛暑を乗り切るために欠かせない

フルーツは、意外にもインドに来てからのほうがよく食べるようになった。日本とくらべて圧倒的に安いのにくわえて、インドは「フルーツ大国」と言っていいくらい、年間を通して種類が豊富なのだ。イチジクやザクロなど、日本では珍しいフルーツに出会うのも楽しかった。

そのなかでもわたしがハマったのは、インドを象徴するくだもの、マンゴーだ。3月の終わりに気温が30度を超え始めると、「もうすぐマンゴーの季節だな」とワクワクし始め、4月の終わりに、ゴールデンシャワーという小さな黄色い花があたりの木を染め始めたら、いよいよマンゴーも旬だ。

マーケットや、ファルワラと呼ばれる果物売りが引く車輪のついた屋台には、何種類ものマンゴーがぎっしりと並ぶ。あの有名なアルフォンソマンゴー以外にも、インドには数十種類ものマンゴーがあるらしい。

お店のひとに食べごろのものを選んでもらって、いろんな種類を食べくらべたり、凍らせてシャーベットにしたり、楽しみ方もたくさんある。特に近所のアイス屋さんで売っているマンゴーアイスは、母とわたしの大のお気に入りだ。シンプルだけど自然なマンゴーの甘味は、インドの猛暑を乗り切るためにはなくてはならない。

インド人にとっての「おにぎり」はサモサ

お昼は、学校がある平日なら、校内のカフェテリアで好きなものを食べる。サラダ好きにうれしいサラダバーもあれば、アメリカンなピザ、メキシコ特有のタコスや中東風のグリルドチキンである「シャワルマ(Shawarma)」のラップが出るときもある。カフェテリアのそとでケバブメーカーが回っていたのをはじめて見たときには、さすがにおどろいた。世界中から集まった生徒たちが通う学校なので、いろんな国や地域の食文化を楽しめるのだ。

もちろん、インド料理が出てくることもある。よくあるのは「サモサ(Samosa)」と呼ばれる、スパイスで味付けした芋や野菜を皮で包んで揚げた三角錐形のもので、日本人にとってのおにぎりのような手軽なスナックだ。カレーが出てくることもときどきある。

インド料理のサモサ、チャツネ添え

※写真はイメージです – 写真=iStock.com/viennetta

また、うちの学校は韓国人生徒が多いからか、韓国料理のオプションがある日も多い。

あるとき、プルコギと書いてあったので頼んで食べてみると、舌を疑った。

あれ、インド来てからずっと食べてた鶏肉じゃない……。豚肉にしても色が濃い……。ということは……牛??

インドでは「幻」の食材を学校のカフェテリアで発見

半信半疑で家に帰って親に報告した。

「今日、学校で牛肉食べたんだけど」
「えー、豚肉でしょ~、さすがにビーフってことはないんじゃない」

親はなかなか信じてくれない。それもそのはず、ヒンドゥー教では、牛肉を食べるのはご法度だ。インドではほぼ幻のような存在で、こちらに来てから一度も食べたことも、売っているのを見たこともない。それでも、今日食べたのは、インドでよく牛肉の代替として使われるラムでもバッファローでもなかった。いや、確かにあれはビーフだったんだけどなぁ……。

そんなモヤモヤを抱えたまま、次の日に学校に行った。また昼にカフェテリアの列に並んでいると、いくつかの種類のサンドイッチが並べられたコーナーがあった。そこに、BLTやハムというのに混じって、「ローストビーフ」というラベルを発見した。

いや、ふつうにビーフって書いてるじゃん……。

こっちでは、牛肉のことは「Meat(肉)」などと隠語を使って表現するのが一般的で、それが現地の文化への尊重にもあたる。なのに、なんにも隠すことなくデカデカとビーフと書いてあるのが、あからさますぎてかえっておかしかった。

背徳感を楽しんだビーフシチューやハンバーグ

家に帰ってその話を親にすると、仰天された。そして、思い立ったら即行動派の母は、早速学校のカフェテリアに連絡して、牛肉を買うことはできるか、と問い合わせていた。

すると、なんと快諾してくれたらしい(そもそも牛肉を売ってることも否定しないんか……)。

電光石火の行動力の母が、次の日学校で買ってきた肉は、正真正銘の牛肉だった。デリーでは入手不可能なビーフがなぜあるのか、その真相はわからない。だが、もう日本に帰れるまで食べられないとあきらめていた牛肉が手に入ったのだ。それだけで最高の気分だったわたしたちは、その肉の入手経路など正直どうでもよかった。

それ以降、わたしの学校はデリーでの唯一の牛肉販売店として我が家で重宝されることになった。そして、その肉で、ビーフシチューやハンバークを作って食べ、これが上に住む大家さんに見つかったらやばいよなぁなんて言いながら、その背徳感を楽しんだりもした。

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