スレッドアップ 、大幅な処理遅延に不満続出:6カ月以上の遅れで「出品者離れ」も:

DIGIDAY

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ファッションリセールECのスレッドアップ(ThredUp)のインスタグラムアカウントでは、カラフルな服装の写真や、衣服を良好な状態に保つためのヒントの下に隠れて、同社のクリーンアウトキット(Clean Out Kit)に対する顧客からの不満が増え続けている。

コメントのひとつは、「8カ月も過ぎたのに、今頃になってようやく私のバッグを処理して、何より支払いは全部で1ドル(約132円)。話にならない」と訴える。「スレッドアップは、私が昨年8月(!)に送ったキットについてのメッセージに応答してくれない。キットはようやく処理されたけど、そこに記載されているのは私のアイテムでさえない!」と、別のコメントは怒りをあらわにする。

スレッドアップのクリーンアウトキットは、同社がこの取り組みを2011年に開始して以来、同社最大のセールスポイントのひとつとなっている。その目的は、人々が古い衣服やアクセサリーをできるだけ簡単に送れるようにすることだった。顧客は(オンライン、またはスレッドアップの再販サービスパートナーのいずれかを通じて)クリーンアウトキットをリクエストし、アイテムを詰め込んでスレッドアップに返送する。その後、スレッドアップはアイテムを処理し、品質基準を満たすものを再販プラットフォームに掲載して、出品者に代金を支払う。スレッドアップは、受け取ったアイテムのうちの通常60%がサイトに登録されると認めている。

在庫の滞留

この業界において、衣類の再販はパンデミックの最中、人々がクローゼットを一掃したときに激増した。それに伴い、スレッドアップは2021年度の収益が前年に比べて35%増加したと報告した。しかし同社はIPO(新規公開株)の数カ月前の2020年12月に、「送られたアイテムの数が多いため、通常より長い処理時間を要している」と明かした。同社は当時、在庫の滞留について、Covidの影響で配送センターの要員が不足していたためだと説明した。

現在、在庫の滞留は収まる気配がない。最近のインスタグラムのコメントによると、同社は現在2022年9月のキットを処理しており、6カ月の遅延が起きている。複数の出品者によると、このプロセスは過去、通常1カ月ほどで完了していた。米モダンリテールが取材した2人の出品者は、あまりに長く待たされ、状況の更新がないことから嫌気がさし、今後スレッドアップを使用しないだろうと語った。この在庫の山を背景に、直近の四半期では、同社の収益とアクティブな買い手の数は前年同期比で2%減少した。

スレッドアップはコメントの要請に応じて、最高執行責任者を務めるクリス・ホーマー氏の声明を送付した。「パンデミックの開始以来、当社のクリーンアウトサービスへの需要は信じられないほど増加した」。この声明では、同社が最近ダラスに施設を開設し、これによって米国のネットワーク全体の保管容量が650万アイテムから900万アイテムに増加したことが記されていた。「クリーンアウトキットを新たに注文する顧客は、バッグが7週間以内に処理されることを期待でき、我々は夏の中盤には4週間でバックログを処理する目標を達成する見込みだ」と、ホーマー氏は付け加えている。

新規出品者と再出品者がともに不満を持つポイント

上場企業にリスク要因を記載することを義務づける2021年のS-1で、スレッドアップは、「クリーンアウトキットの処理の中断と、Covid-19による中断により、送り主が再販のために送付した中古品を、当社が処理する能力が遅延し、さらに遅延する可能性がある。それにより、出品者が支払いを受け取るのが遅れるとともに、当社のマーケットプレイスでの供給品の更新が減少する可能性がある」と述べている。また同社は、これが「当社のブランドと評判を傷つける可能性がある」とも述べている。

スレッドアップは、同社への評判を頼りに、再販に関心を持つ小売業者とのパートナーシップを構築してきた。同社はこの1年間に、H&Mや、ケイトスペード(Kate Spade)、ジェイクルー(J.Crew)、そのほかいくつかのブランドと協力し、再販のサイトやサービスを立ち上げてきた。これらのパートナーシップにより、スレッドアップはより広い市場にリーチできるようになったが、同時にこれまでよりずっと多くの在庫が送られてくるようになった。同社はこの在庫の一部を、2月に同社が立ち上げた7ドル(約924円)以下のオンラインショップに引き継がせようと試みたようだ。

スレッドアップへの出品者で、ファーストネームであるベラと名乗る人物は、クリーンアウトキットを、2019年に2回、2022年に2回と、計4回使用したと語る。2019年にはアイテムが約4週間で処理されたという。2022年の8月に3回目と4回目のキットを送付したが、この2件が処理されたのは、6カ月以上後の2023年3月だったそうだ。

「今と比べれば、4週間はなんでもなかった。それに、当時はもっと簡単にコミュニケーションが取れたと思う」と、ベラ氏は語る。同氏は、3回目と4回目のキットについて、顧客サービスは「最悪」だったと付け加える。「決して明確な回答をせず、遅延に対する解決策の提案や、補償や割引もなかった。別に期待していたわけではないが、何らかの顧客サービスがあればよかったと思う」。

ホーマー氏は声明で次のように言及している。「当社は、顧客のバッグが処理されるまで、最新の処理スケジュールを事前にメールで顧客に連絡する。顧客はメールまたはチャットで顧客サービスに問い合わせでき、質問への平均回答時間は現在のところ48時間以内だ」。

処理プロセスの透明性

別の出品者であるビクトリア・コラー氏は、2022年の前半にはじめてスレッドアップを使用した。同氏はその頃引っ越し中で、クローゼットの物を減らす方法として、友人がスレッドアップを勧めてくれた。同氏は最初のクリーンアウトキットを6月に送付した。10月の時点で、そのキットはまだ処理されていなかった。そこで、スレッドアップの顧客サービスにメールを送信し、状況の確認を求めた。スレッドアップは回答し、遅延に対して詫び、30ドル(約3960円)のクレジットを同氏に渡した。「当社は現在、処理時間を短縮するため必要な変更を加えている」と、メールに記載されていた。同氏のキットは11月にようやく処理されたが、それは同氏がキットを送ってから5か月後のことだった。

コラー氏は2022年の秋に2回目のキットを送付した。このときも、キットの処理に5カ月程度の期間を要したと、同氏は述べている。同氏は待っているあいだに、3月の2回を含めて同社に何回か問い合わせ、キットが処理される予定の時期について質問した。同社からの回答には、ほかの言明とともに、「現在のキットの処理時間は11週間前後」と書かれていた。

コラー氏は以前、ラグジュアリー再販企業のザリアルリアル(The RealReal)を使用しており、そのプロセスはより透明性が高かったと述べている。「同社はアイテムの受け取りを通知してくれる。いつ処理されるかも通知してくれる。処理のあらゆる段階で最新情報を連絡してくれる。そして、テキストの顧客サービスがあったり、連絡を受け付けてくれるローカル担当者がいる」。

新料金プランの検討

スリフトファッション用の動画アプリであるテレポート(Teleport)の創業者で共同CEOを務めるダニエル・フェルメール氏は、何年にもわたって何十もの再販マーケットプレイスサービスを使用してきた。同氏は、最後にクリーンアウトキットを送ったのは2021年10月だったものの、2015年からスレッドアップを9回使用したと語る。同氏は、スレッドアップは、「中古品をより身近に、より普通のものにするために、多くの面で新分野を開拓した」と米モダンリテールに語った。

スレッドアップは、処理時間をより効率的にするよう取り組んでおり、新しいダラスの配送センターに多くの期待を寄せていると語る。3月に行われた同社の第4四半期の決算発表において、CEOのジェイムズ・ラインハルト氏は、同社が新しい施設によって、「消費者の回復が見えはじめたとき、迅速に処理を拡大できる」と語る。

同氏は、スレッドアップがほかにもいくつかの新しい戦略を進めており、「長年にわたって無料だったクリーンアウトサービスで、新料金をテストしている」など付け加えた。クリーンアウトキットは無償で送付されるが、顧客が印刷済みの配送ラベルを希望した場合は例外で、2ドル99セント(約395円)かかる。そこから、標準の7週間以上の処理に14ドル99セント(約1980円)、2週間以上の高速処理に22ドル99セント(約3030円)を新たに徴収することになる。スレッドアップが登録しないアイテムについては、10ドル99セント(約1450円)で出品者に返送するか、無償で「アイテムをリユーズまたはリサイクル」するという。

ベラ氏もコラー氏も、以前の経験にもとづき、今後スレッドアップを使用しないと、米モダンリテールに語った。フェルメール氏は2022年に同社を使用しないことに決め、それ以来アイテムをグッドウィル(Goodwill)に寄贈するか、地元のバイナッシング(Buy Nothing)のFacebookグループの近隣住民にあげることにしたと述べる。「私にとっては、こっちの方が努力に対する結果の見返りが良かった」と同氏は述べている。

コラー氏は次のように述べている。「私は、地元のチャリティーにそのまま寄付するほうがいいと思った。よい顧客サービスがあるなら、料金を支払ってもいい。しかし、料金を支払って、しかも顧客サービスがないなら、依頼する意味はない」。

[原文:ThredUp’s long processing times are alienating some sellers]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via ThredUp

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