美容ブランドがスーパーボウルのマーケティングに参入する利点:ジェニファー・クーリッジ氏のE.l.f.からフェンティまで

DIGIDAY

今年のスーパーボウルのマーケティングに大きく賭けているのは、ビールのブランドだけではない。美容ブランドもまた、このビッグゲームを利用している。

E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)、フェンティ・ビューティ(Fenty Beauty)、ウラヘンリクセン(Olehenriksen)といった美容ブランドが、今年、スーパーボウル・キャンペーンを実施している。これらのブランドは、修正を施したパーフェクトなものを見せる典型的な美容のテレビCMではなく、昔から男性向けと思われてきた領域に挑戦するために、ユーモアを取り入れ、トレンドのセレブリティを起用したクリエイティブなマーケティングキャンペーンを展開した。

スーパーボウルのオーディエンスの約47%が女性

E.l.f.ビューティは2月9日、ドラマ 『ホワイト・ロータス(原題:White Lotus)』主演のジェニファー・クーリッジ氏を、同番組のクリエイターであるマイク・ホワイト氏が共同脚本のスーパーボウルのテレビCMに起用すると発表した。9日にティーザーが公開され、広告はスーパーボウルの最中にニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、アトランタ、ヒューストン、ワシントンDC、サンフランシスコの各市場で放映される。

「E.l.f.は、メイクアップとスキンケアを販売するエンターテインメント企業だ。だから当社は、文化の次元、エンターテインメントの次元にまさしく参入し、一貫して『いかに製品を超越して、人々が参加したくなるような軌道を作るか』と自問している」と、E.l.f.ビューティのCMOコリー・マルキソット氏は語る。

ニールセン(Nielsen)によると、スーパーボウルのオーディエンスのうち約47%を女性が占めている。しかし、ビールや加工食品など、男性のフットボールファン向け商品の広告にくらべて、美容のキャンペーンはめったになかった。2020年にこれに正面から取り組んだのがオーレイ(Olay)で、「ビッグゲーム中に女性のための領域を作る」ことに焦点を当てたスーパーボウル広告のスポンサーとなっている。

重要なのは新たな領域に参入する意外な方法を見つけること

美容ブランドが試合中に広告を出すのは「確かに一般的ではない」とマルキソット氏は述べ、これはブランドを目立たせるチャンスだと捉えている。

今回のキャンペーンを手がけたエージェンシー、シャドウ(Shadow)の共同創業者でチーフコミュニケーションズオフィサーのライザ・スロティ氏は、「私たちは業界の常識を覆すことを目標にしている」と語る。脚本はホワイト氏とシャドウが共同で執筆し、同エージェンシーはマギー・キャリー監督と協働して、スポットの演出ではニール・ブレナン監督とコラボレーションしている。

マルキソット氏いわく、E.l.f.ビューティの「リニアTVへのビッグバン参入のきっかけ」として、同ブランドのキャンペーンは、製品の性能を強調する従来のマスマーケット向け美容広告とは異なり、ユーモアに力を入れる。スーパーボウル後には、クーリッジ氏を起用した一連のエピソードで構成される広告シリーズで、78の全国ネットワークに進出する予定だ。

「ただテレビに進出したいとは思っていなかった。それはE.l.f.のやり方ではない。当社にとって重要な要素は、新たな領域に参入するための意外な方法を見つけることだ」とマルキソット氏は述べている。

コラボレーションやオンライン広告でスーパーボウルに参入

スキンケアブランドのウラヘンリクセンもまた、スーパーボウルをめぐるマーケティングにユーモアを取り入れている。同社は、クーリングフェイシャルマスクを紹介するために、80年代のビールのパロディCMとなるオンライン限定広告を製作した。

「80年代後半から90年代前半のビールのCMは、そのトーンと、そして何より重要なことに独特のASMR(自律感覚絶頂反応)があり、すぐにそれとわかるものだった。これらのCMはエネルギッシュでプロダクトドリブンであり、シュワッとコミカルで、CM撮影の表現としてぴったりだった」と、ウラヘンリクセンのLVMH傘下の親会社でフェンティ・ビューティも所有するケンド(Kendo)の映像ディレクター、クリスティアン・メシェシャ氏は言う。

フェンティ・ビューティとサヴェージ x フェンティ(Savage X Fenty)はともに、マーチャンダイズラインのリリースに関しては、リアーナ氏が行うハーフタイムショーのパフォーマンスに頼っている。フェンティ・ビューティの場合、「NFL Game Day」の公式コラボレーションとして、スペシャルエディションのリップ製品コレクションと、フットボールをテーマにしたメイクアップスポンジがある。フェンティ・ビューティはロサンゼルスとアトランタで発売記念パーティを開催、サヴェージ x フェンティはロサンゼルスで3日間のポップアップを展開した。

フェンティ・ビューティがスーパーボウル関連のマーケティングに参入したのは、今回が初めてではない。同ブランドは2018年にビールのパロディCMとなるオンライン広告をローンチ、バドワイザー(Budweiser)の「ワサップ」という有名なキャッチフレーズをもじった動画をオンラインでリリースした。ラッパーのスウィーティー氏をフィーチャーしたその広告では、最後に彼女が言ったセリフが、将来的にリアーナ氏がパフォーマンスをする可能性を示唆していた。リアーナ氏は実際に2019年のスーパーボウルでのパフォーマンスを依頼されていたが、コリン・キャパニック選手を支持するためにそのオファーを断ったと公に認めている

視聴率は低下しても、多くの注目を獲得できる最大のイベント

いまでも1年でもっとも視聴されているテレビイベントであるスーパーボウルの広告費は、ゲームの視聴率が低下しているにもかかわらず、年々上昇していると報じられている。平均的な30秒のテレビスポットの費用は、2017年の500万ドル(約6.6億円)から、今年は700万ドル(約9.3億円)になると推定されている。ニールセンによると、同イベントの視聴者数は2017年に4700万人、2022年には3800万人だった。専門家は減少の原因について推測しており、NFLがキャパニック選手に対して冷酷な態度をとっていることを一因として挙げている。

スーパーボウル中に広告を放映する主な利点は、「この一年の主要な文化的イベントに参加している膨大な数の人々」にリーチできることだとマルキソット氏は言い、「(E.l.f.が)もっとも多くの注目を獲得できる一年で最大のイベント」と表現した。

「人々にリーチしたいなら、人々がいる場所に行く必要がある」と彼女は述べている。

[原文:From Jennifer Coolidge for E.l.f. to Fenty, beauty taps into Super Bowl marketing]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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