2022年がコマースメディアの年だとすれば、2023年はコマースメディアが縦割りの内部構造を打破して、測定を向上する傾向を強める年になるかもしれない。
IPG傘下のUMは2013年以降、ショッパーマーケティング分野で静かに活動し、従業員がエイミー・オーウェン氏しかいないUMショッパー(UM Shopper)部門を設置した。そして現在、この部門をUMコマース(UM Commerce)部門に変更しようとしている。これは、(新型コロナウイルス感染症パンデミック以前の)2019年の1億2500万ドル(約170億円)から、現在の約10億ドル(約1370億円)へとメディア支出の増加を促してきたコマースメディアの成長を反映している。
テクノロジーの進化と消費者購買の変化が成長を押し進めた
UMの正式なコマース担当責任者であるオーウェン氏は現在、約50人のスタッフを監督しており、適切な市場環境を構築してUMコマースへと進化できたのは、以下の3つの要因のおかげだと考えている。
Advertisement
- QRコードの再登場や、在庫切れについての技術といったテクノロジーの進歩
- 新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、拍車が掛かった消費者習慣の変化
- アクシオム(Acxiom)のデータへのアクセスなど、カスタマージャーニーの追跡により適したデータトレイル
「これら3つの要因が重なったことにより、10年以上にわたって、この分野で行ってきたことを加速できた。テクノロジーの各側面すべてによって、消費者の立場から、これまでとは異なる買い物の仕方や発見力(の生成)を生み出している」とオーウェン氏は語る。
業務効率向上のために縦割りの内部構造を打破
同氏は、IPG傘下の大手データ管理企業アクシオムへのアクセス向上や、エージェンシーがアクシオムのデータにより効率的にアクセスすることを支援するテック企業2社キネッソ(Kinesso)とマターカインド(Matterkind)を含む、全分野の持株会社の代表が含まれるグループ内評議会の結成などを社内改革として挙げた。評議会のほかの参加者は、パフォーマンスエージェンシーのリプライズ(Reprise)、IPGのコンテンツスタジオであるIPGメディア・ラボ(IPG Media Lab)、エージェンシーを横断したストラテジストなどだ。
「評議会は我々に力を与えてくれるが、同様に、真に大規模に統合されたストーリーを構築するための、より大きな概念の創造に力を与えてくれる」とオーウェン氏は述べ、業務効率向上のために縦割りの内部構造を打破する重要性に言及した。「顧客向けワンストップサービスのために、それをすべてまとめたのだ」
そうした顧客には、EJ.ガロワイナリー(EJ Gallo Winery)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、虫除けグッズメーカーのサーマセル(Thermacell)、菓子メーカーのストーク(Storck)などが含まれる。
「UMコマースチームは、誰にどんなメッセージでリーチすべきかを評価するだけでなく、リーチすべきタイミングや、さらに一歩進んで消費者が広告にエンゲージした時に誘導すべき場所も検討する。そのおかげで、消費者が買い物したい気分の時や、当社が消費者体験を確実にシームレスにしたい時に、消費者にリーチできる」とE.&J.ガロワイナリーで統合メディア担当マネージャーを務めるリラ・ギルスタイン氏は話す。
「UMとの提携は、小売り分野に参入する足掛かりになった」と、ストークのプレジデント、ケリー・クック氏は語る。「主要な小売業者のメディアネットワークへの投資を増やして、新しい適切なやり方で戦略的に消費者に出会うことができた。消費者がその瞬間に当社を求められているかどうかに関係なく、適切な方法で消費者にリーチし、バスケットサイズを大きくしてキャンディの購入を促している」
2023年はリテールメディアの測定と効率化に大きな変化がある可能性
コマースメディア成長の原動力となっている要因の幅広さを考えると、 IABでプログラマティックおよびデータセンター担当バイスプレジデントを務めるジェフリー・ブストス氏にとって、UMのコマース拡大のニュースは驚きではない。
「リテールメディアネットワークでのアクティベーションとターゲティングの大幅な増加を目にしてきた。数多くの新しいリテールメディアネットワークも、出現し続けている」。そう語ったブストス氏は、UMコマースの進化について具体的にコメントするのは避けながらも、2023年の予想を話した。
「2023年には、リテールメディアが推進する測定と効率化において大きな変化があると予想している。来年の焦点は、ビューアビリティ(可視性)の基準を満たし、複数の小売業者にまたがる成果に注目できるかどうかになる」とブストス氏は付け加えた。
同氏は、「ビューアビリティのアトリビューション」「アトリビューション範囲の理解」「リテールメディアにおけるクリックとインプレッション間のアトリビューションの違いの理解」の3分野が、コマースメディアでは改善が必要だという。
オーウェン氏は、UMがショッパー事業、および現在はコマースメディア事業に参入してきた10年間について指摘しているが、オムニコムメディアグループ(Omnicom Media Group)や独立系メディア企業を含め、こうした急成長するメディア分野をメディアエージェンシー業界が真剣に受け止めていることは明らかだ。
それはなぜか? 12月初旬に、アクシオムの最高経営責任者(CEO)であるチャド・エンゲルガウ氏がDIGIDAYに語ったように、すべてのものが広告ネットワークになりつつあるからだ。
Michael Bürgi(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:島田涼平)