ジェネレーティブAI 運用に成功した、占いサイトのインジェニオ:DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT USレポート

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インジェニオ(Ingenio)は、ジェネレ―ティブAI技術を利用して、これまでに1万1000件を超える記事を傘下のウェブサイト(Holoscope.comやAstrology.comなど)で公開してきた。同社はまもなく、ユーザーに個別のスピリチュアルなアドバイスを提供するチャットボットの運用を開始する予定だ。

これらは、インジェニオのメディア担当プレジデント、ジョシュ・ジャフェ氏が、コロラド州ベイルで開催されたDIGIDAY PUBLISHING SUMMITで3月28日に登壇し、同社の戦略について語った内容によるものだ。パブリッシャーがコンテンツ制作にAIを利用する実験のひとつとして(多くはまだ懐疑的だが)注目に値する。

AIを活用してSEOの穴をふさぐ

インジェニオは、2021年末からジェネレ―ティブAI技術を利用したコンテンツ制作を開始し、OpenAIのGPT-3をコンテンツ管理システムに統合している。以降、インジェニオは夢分析に関する新たなウェブサイトを立ち上げ、700件以上の記事をAIを利用して作成してきた。

また有名人の出生図とホロスコープに関する約1万件の記事を既存のウェブサイトSunSigns.comで公開し、テコ入れをはかってきた。主力サイトであるHoloscope.comとAstrology.comでは、約1000件のAIを利用した記事を掲載し、「SEOの穴をふさいで」いると、ジャフェ氏は言う。

「このツールがなければ、夢分析のような関連トピックに進出することはできなかったし、ジェネレ―ティブAIがなければ、有名人のプロフィール記事を1万件も書くことは不可能だった」と、ジャフェ氏は述べる。

これらの記事は約90%がAI技術によって作成されていると、ジャフェ氏は説明する。記事には署名ではなく、「by Holoscope.com」といった形でウェブサイト名が明記されている。編集者が見出しの修正や正確性の確認といった形で目を通しているものの、記事作成プロセスの大部分はOpenAIの技術に任せていると、ジャフェ氏は説明する。

「我々は正確性や安全性を重視している。大規模言語モデルは技術開発の観点からは前例のないスピードで進化しており、我々はこれを頼りにしている」と、同氏は述べる。また、「安全性の観点からも大幅な改善がみられる」という。

「AIは誰の仕事も奪わない」

インジェニオの夢分析サイトであるDreamDiary.comは、「当サイトについて(About Us)」のセクションのなかで、コンテンツの「一部は大規模AI言語モデルを利用して作成しています」と情報を開示している。

さらに、「(AIが)分析結果を生成したあと、出力された内容に当チームが編集と修正を加え、当サイトに掲載された夢分析に責任を負っています」とある。

また、インジェニオはジェネレ―ティブAIを利用することで、コンテンツ制作費を抑えることにも成功したと、ジャフェ氏は語る。

「かつてないほど速く記事を作成でき、かつてないほど安価に記事を作成できる。場合によっては、これまでと同等の質を保って記事を作成できる。かつて1つの記事の作成にかかっていたコストで、1000件の記事を作成できている」

しかし、AIが人々の仕事を奪うという意見には、ジャフェ氏は否定的だ。「AIは誰の仕事も奪わないと、私は考えている。AIを利用する人が他の人の仕事を奪うことはあるかもしれないが、失われるのは退屈な仕事だ」

AIスピリチュアルガイド・チャットボットのリリース

ChatGPTの成功を参考に、インジェニオはスピリチュアルガイドの役割を担うチャットボットの開発に着手した。インジェニオは4月中にも、ヴェダ(Veda)と名付けられた、ユーザーの出生図をもとにパーソナライズされたコンテンツを提供するチャットボットをリリースする予定だ。

「(このチャットボットを)人間関係、キャリア、お金、健康の問題について、ユーザーが占星術、タロット、数秘術のレンズを通して考える手段としたい」と、ジャフェ氏は述べる。「自然なやりとりができ、即座にフィードバックが返ってくる」。将来的には、人々は「現在ほど記事という形でコンテンツを消費しなくなる」だろうと、ジャフェ氏は考えている。

インジェニオはチャットボットからの収益獲得にも期待している。とりわけ有望なのはサブスクリプションであり、これはOpenAIが月20ドル(約2650円)のプレミアムサブスクリプションによりChatGPTのチャットボットへの無制限アクセスを提供しているのに類似している。ジャフェ氏は価格について言及しなかった。ジャフェ氏はまた、チャットボットに組み込まれたネイティブ広告の販売も模索しており、チャットでの会話と関連のある商品やサービスの提案という形で展開される可能性がある。

結果は未知数

インジェニオは、ジェネレ―ティブAI技術を統合したコンテンツ制作プロセスの確立を通じて、新たなオーディエンスを獲得し、エンゲージすることを目指していると、ジャフェ氏は語る。ジェネレ―ティブAIを利用したコンテンツを大量に公開してきたにもかかわらず、今のところ爆発的なトラフィック増加は見られていない。ただし、ジャフェ氏によれば、単発の「急増」はあったという。

インジェニオは、夢分析サイトがGoogleにインデックスされ、有名人の出生図の検索エンジンでの順位がアップするのを「待っている」段階だと、ジャフェ氏は言う。

「コンテンツの公開は実現したが、それが自動的にオーディエンスの成長をもたらすわけではない。成果は即座には得られない」と、同氏は言う。「新しいサイトの立ち上げはとても難しい(中略)インデックス化には時間がかかり、SEOの観点からも課題がある」

ジャフェ氏は、AI作成コンテンツの効果の全容が明らかになるまでに、さらにいくらかのテストが必要だと語る。「プラットフォームを使用する際、どれだけリンクを組み込めばいいのか? DALL-Eを使用して作成したどんな画像を挿入すれば、最もユーザーに響き、検索エンジンでの好ましい結果につながるのか? さまざまな点についてテストが必要だが、何が効果的なのかが明らかになれば、コンテンツ制作を大幅にスピードアップできるようになる」と、同氏は述べた。

[原文:How one publisher is using generative AI to publish thousands of evergreen posts, create a chatbot

Sara Guaglione(翻訳:的場 知之/ガリレオ、編集:分島翔平)

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