「 ファーストパーティ アイデンティティグラフの構築を真剣に考える必要がある」:アクシオム CEO チャド・エンゲルガウ 氏

DIGIDAY

リテールメディアネットワークの明らかな爆発的成長について、大手エージェンシーグループであるIPGが所有するデータ界の巨人、アクシオム(Acxiom)も当然把握している。

そこに存在するビジネス機会についても然りであり、同社はより多くのリテーラーを参画させられるように、そしてより多くのブランドが受容性に富むオーディエンスを見つけられるように、多くのデータを供与できる機会をまさに手ぐすねを引いて待っている。

より多くのブランドがファーストパーティデータを収集するなか、市場にはいま、「誰もがアドネットワークになれる機会」と、アクシコムCEOチャド・エンゲルガウ氏が語るような状況が生じている。「ウーバー(Uber)はアドネットワークだ。プレミアムストリーミングサービス勢はこぞって、広告付きサービス化に向けて動いている」と同氏は話す。

ベテラン社員から2020年前半にCEOとなったエンゲルガウ氏は、このほど米DIGIDAYの取材に応じ、何がリテールメディアネットワークの隆盛をもたらしたのか、メタバース内の消費者が生む情報をアクシコムはどう利用するのか、そして、より効果的な内部データの連結へのフォーカスが、いまなぜマーケターに求められるのかを語ってくれた。

なお、スペースの都合および簡明性を考慮し、発言には編集を加えてある。

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――リテールメディアネットワーク(RMN)の成長におけるアクシコムの役割とは?

RMNは基本的に市場でお金を使う買物客をもとにして出来ているため、オーディエンスデリバリーに関して、我々アクシコムや同業他社を介して構築できる方法論が存在する。そこでは、我々はこのオーディエンスセグメントが欲しいといえるわけであり、それは特定の個人、集団、ある種の人々にかかわらず、そのネットワークを通じてデリバリーできる。

そのネットワークには、クリーンルームにおいて、あるいはクローズドループ効果測定ソリューションにおいて、エクスポージャーデータをプロバイダー勢と共有できるという自信がある。ソーシャルメディアネットワークでも、モバイルネットワークでも、あるいは自身の効果測定データを混合させたくないほかのネットワークであっても、それは変わらない。ブランド勢はオーディエンスを育むために、自身のコンバージョンデータを信頼できるパートナーに提供できるようになりたいと考えている。

自身のエクスポージャーデータをどこかの第三者に渡し、結局、効果測定報告書をもらうだけ、というようなことはしたくない。だからこそ、この相乗的エコシステムはそうしたダイレクトマーケティングの成功に打ってつけのインフラストラクチャーを創出するわけで、そこには、明瞭に理解される結果が必ず出る、という高度な自信が存在する。

――データがより厳密になるなか、RMNがCPG(消費財)以外の分野を惹きつけるようになるのは、いつ頃になると?

私が話をしている多くのCMOは、メディア支出の最適化を望んでいる。「私が持っているこのブランドエクスポージャーをすべて理解できたら、どんなによいか。そのブランドエクスポージャーが私のパフォーマンスメディアに実際、どのように連動しているのか。さらには、私は何回、いわばその線の上と下の人々に、しっかりとリーチできているのか。そして、それが実際のところ、何をしているのかも、理解できたら」と、彼らはいう。

というのも、そうした分野ではどこにおいても多額の支出がなされており、いずれも真には連動していないからだ。そうなれば、ずっと楽になる。同じプラットフォーム上でブランドとパフォーマンスの両マーケティングを行なえるようになるし、自分が誰にリーチしているのか、その人たちに対してどれくらいの頻度で露出が行なわれているのかについて、確たる自信を持てるようになるからだ。

これに対する障壁は、こういう見方だ。いまや25以上のウォールドガーデンがあり、どこも各々の効果測定データを混合させようとしないなか、我々にはすでにマルチタッチアトリビューションというものがあるではないかと。いや、何をいっているのか、という話だ。マルチタッチアトリビューションは死んでいる。マルチタッチアトリビューションよ、安らかに眠れ、といえる。マルチタッチアトリビューションでは、せっかくのデータセットを混合できないからだ。データサイエンスは早晩、新たなレベルに達するだろうし、人々が本当に望むような明確なレベルにまでデータを引き上げることが必要になる。

――クリーンルームのさらなる活用は、すでに複雑な市場をさらに混乱させるだけなのでは?

いま、2つのことが起きている。1つは、すべてはアドネットワークであり、そうしたアドネットワークのすべてはウォールドガーデンになる、ということだ。Appleでさえ、いまや広告プラットフォームであり、諸々が入っていくだけで、出てこないという点でいえば、彼らは最大のウォールドガーデンになるだろう。

それはまた、オープンウェブの力を物語ってもいる。というのも、オープンウェブのなかでは、そして業界の標準的ものを介せば、エコシステム全体、各種プラットフォーム全体、消費パターン全体、それぞれのなかで何が起こっているかをより広く、より良く把握することができるからだ。クリーンルームは新たなクリーンルームテクノロジーの点において興味深いが、そのコンセプトの根本にあるのはあくまでも、マーケティングコラボレーションだ。そして我々はマーケティングコラボレーションを優に10年以上、提供し続けている。コブランドクレジットカードはその一例だ。我々はそうしたデータを安全なFTP(ファイル転送プロトコル)を介して管理するとともに、そうしたデータを混合し続けている。

それはつまり、テクノロジーによるデータコラボレーションの強化および促進の継続的進化であり、それはオーディエンスクリエーション(創造)についても、共有インサイトについても、キャンペーンマネジメント(管理)についても、効果測定についても、その他諸々についても、然りだ。

――メタバースおよびWeb3におけるマーケティングが始まろうとしているなか、御社の今後の関わり方は?

ゲーマーたちは以前から常にメタバースにいる。だからこそ、体験的なエンゲージメントの創出が重要となる。ゲーミングプラットフォームは、プレイステーション・ネットワーク(PlayStation Network)にしろ、ロブロックス(Roblox)にしろ、必ずオーディエンスの収益化を図る。すべてはアドネットワークだからだ。それはたとえば、Facebookが過去にしたのと同様のかたちで起きることになる。

彼らはまずユーザーのeメールアドレスに基づいて、誰がログインしたのかを知る。そして、そのeメールをハッシュすることもできるし、そのエコシステム内で見られる行動についてその人に語りかけることもできる。アクシコムにできるのは、それがどんな人々なのか、そしてそのプラットフォーム外で何をしているのか、彼らがより明確に理解できるよう手助けすることであり、それは我々がIPGの、そしてより大きな広告エコシステムに属するから可能なのだ。また、それだけでなく、同様のオーディエンスの創造や、リーチできるオーディエンスの割り出し、効果測定についても手伝うことができる。

――2023年に起きるアイデンティティにおける最大の変化は?

ブランド勢には、ファーストパーティアイデンティティグラフの構築を真剣に考えることが必要になってくる。ただ、それは簡単なことではない。専門家が不可欠だ。それは事業のあらゆる部分に及ぶ。自社ウェブサイト、モバイルアプリ、販売店、インストア体験、ダイレクトメール、eメール、デジタルマーケティングと、すべての部分に及ぶ。もっといえば、広告エコシステム全体との関わり方に至るまで。

人々に関して持っているそれらの全情報は、UID(ユーザー識別子)といったキーに紐付けできるし、自身のPII(個人情報)を晒すことなくデータおよび情報を共有できる場、クリーンルームに持ち込むこともできる。それは、所有権を有し、よりいっそうの透明性を得るというブランドの未来にとって、文字どおり基盤となる側面のひとつだ。

この先、人々が直面する最大の壁は、その問題は自分で解決できると、誰もが気楽に考えてしまう姿勢だ。世界中の顧客データプラットフォームはどこも、自分の顧客データは自分で管理できると、我々には御社のクライアントに関する鍵となる情報を与えられると、断言する。ただし、それを現実にするには、SaaSプラットフォームひとつでは不十分なのだ。

[原文:Acxiom’s CEO on why everything’s an ad network now, and what that means

Michael Bürgi(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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