プライバシーサンドボックス で、さらなるトライアルの計画: Topics API 発表からほんの数週間で

DIGIDAY

ChromeブラウザのサードパーティCookie廃止に向けた準備が進むなか、メディア業界をオンライン広告配信の新しい標準に導くべく、Googleがプライバシーサンドボックスの次のトライアルを計画している。

しどろもどろのスタートを経て、今や頓挫してしまったFLoCに代わって2023年以降もターゲティング広告を可能にすると期待される新提案のTopics APIが発表されてから、ほんの数週間しかたっていないところでの展開である。

オリジントライアル開始

2022年3月最終週に、Chromeのプライバシーサンドボックス担当プロダクトディレクターであるビナイ・ゴエル氏が、試験的な技術を外部組織がテストするオリジントライアルをChromeのCanaryバージョンで実施すると発表した。

このベータプログラムの一環として、Googleはサードパーティの開発者がTopics APIのコードをテストできるようにする。追ってアップデートも提供される予定だ。参加者は、広告のリターゲティングのためにChromeブラウザ上で広告オークションを行うFLEDGEというGoogleの提案もテストできるほか、Attribution Reporting(アトリビューションレポーティング)APIも試すことができる。

だが、詳細な話に進む前に、ここ数週間のあいだに米DIGIDAYが取材した、プライバシーサンドボックスの最新の提案に関する反響を振り返ってみよう。まとめると、FLEDGEでも広告オークションにおけるGoogleの力が大きく、Topicsでは十分なプライバシーが保証されないのではないかと懸念する声が、複数の情報筋から上がっている。

このような懸念をよそに、Googleはすべてが順調に進んでいるという立場を崩していない。

Topics APIの弱み?

Googleは、2022年1月下旬にTopics APIを発表する前、FLoCのフィンガープリンティングに対する脆弱性への懸念を受け、現行の1対1の識別の代わりにコホートを使用したターゲティングを行う提案についてパブリッシャーの意見を聞こうと、一連のラウンドテーブルを開催した。

Topicsでは個人が閲覧したコンテンツのカテゴリーに基づいて広告のターゲティングを行うが、FLoCより一般的なレベルのカテゴリー分類を使用する。提案では、Chromeが毎週5つのカテゴリーを選択する。これには無作為に選ばれるカテゴリーも含まれ、サードパーティによるシステムの悪用を防ぐ。少なくともGoogleのセールストークではそうだ。

Googleに批判的な向きは、欧州経済地域と米国でのGoogleに対する規制の目を考えると、プライバシーサンドボックスに関して同社が外部に話すことはリップサービスにすぎないと主張する。もちろん、Googleとしてはそれに同意しかねるだろう。

ワールドワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)内でインターネット上の技術標準を策定するPrivate Advertising Technology(プライベート広告技術)コミュニティグループの参加者から入手した資料に、Topics APIに関する協議の詳細がある(このグループにはGoogleも参加している)。

コミュニティグループのレベルでは極めて技術的な話し合いとなるが、所属企業の広報規程に配慮して匿名を希望する同グループ内の別の参加者は、Topics APIもFLoCと同程度の抵抗にあっていると米DIGIDAYに語った。

ある情報筋が米DIGIDAYに話したところによると、「通常の合格点には達していない」と結論付ける意見がコミュニティグループ内に幅広く、Topics APIをどう育てていくかをまだ議論している段階だという。

著名な多国籍パブリッシャーに勤めているという別の情報筋は、世界各国で政府によるプライバシー関連の取り締まり強化が進んでいるなか、Topics APIでは通用しないだろうと米DIGIDAYに語った。皮肉なことに、そのような取り締まり強化こそがプライバシーサンドボックスを推進している。匿名希望のこの情報筋は「Topicsも、結局はドメイン横断ターゲティングという考えに基づいたものだが、今はもうそれはやるべきではない」という。

プレミアムパブリッシャーは、ユーザーのデータが異なるウェブサイト間で自由に流れるというTopicsの提案は(データが集約されるかとは関係なく)マイナスの影響を及ぼす可能性があるという立場を取っている。前述の情報筋は「誤った情報を後押ししてしまう可能性がある」と話した。「データがパッケージングされてドメインを越えて売られているために、ソーシャルメディアプラットフォームに超バイラルな見出しを展開するウェブサイトと、人々が毎日ニュースを見るために訪れる著名な一流ニュースサイトが同じ収益を得られるという状況を考えてみてほしい。これはビジネスにとって本当によくない」。

FLEDGEを巡る警戒感

一方で、外部サーバーではなく、Google Chrome上で広告オークションを実施しようというプライバシーサンドボックスの提案、FLEDGE(First Locally-Executed Decision over Groups Experiment、ローカルで実行される集団決定の初回実験)も警戒感を引き起こしている。

具体的には、Googleのマーケットプレイス内のプログラマティックオークションにおいて、サプライサイドのプラットフォームがすべて平等に扱われるのかという懸念がある。通常、パブリッシャーはヘッダービディングパートナーを通して広告を販売するが、入札はGoogleアドマネージャーというマーケットプレイスを通る。

FLEDGEでこれらのオークションに対するコントロールをGoogleが手放すかはまだ明らかになっていない。というのも、Googleは手放すと示唆してはいるものの、複数の情報筋が、詳細についてはこれまで明言を避けてきたと米DIGIDAYに語っている。RTBハウス(RTB House)のプログラマティックエコシステム発展・イノベーション担当バイスプレジデントであるルカス・ヴォダルチク氏は「Googleから明快な回答はまだない」と話す。

アドテク業界としては、現在Googleアドマネージャーが占めている役割を、独立的な立場の調停者が引き継ぐのが理想的だ。アドテクベンダーのオープンエックス(OpenX)のソフトウェアエンジニアであるジョエル・マイヤー氏は、今こそプログラマティックオークションのコントロールをGoogleアドマネージャーからより中立的な組織に移す好機だと米DIGIDAYに語った。

マイヤー氏は「Chromeがプログラマティックにおける最終的な調停者となったときに、ぜひGoogleアドマネージャーには平等の立場で参加してほしい」と付け加え、「期待は別にしても、Googleにはこの選択肢を少なくとも検討してほしい。パブリッシャーの利益にかなうことだから」と話した。

2月初旬に開かれたW3Cのワーキンググループの会合では、Googleの代表団はこの考えを推しているように見えたが(同会合の議事録の詳細はここ)、米DIGIDAYの複数の情報筋によると、参加者すべてがそれを信じていたわけではなかったという。

Googleはまだ模索中

プライバシーサンドボックスの提案に対する異議によって、ウェブで最も人気の高いブラウザであるChromeのサードパーティCookie廃止にはすでに遅れが生じ、当初予定されていた2022年の開始日も後ろ倒しになっている。今回の議論も、歴史は繰り返すという事例になるのでは、と憶測する声もある。

だが同じ2月に、Googleのプロダクトマネジメント・広告プライバシー・ユーザー信頼担当ディレクターを務めるデビッド・テムキン氏は、IABの年次リーダーシップ会合の出席者に向け、すべては予定通りに進んでいると請け合った。「システムにはそれを達成できるだけの十分なバッファを織り込んでいると確信している」そうだ。

W3Cを主にソフトウェアエンジニアリングの団体であるとするテムキン氏は、そうはいってもプライバシーサンドボックスは現在と2023年末とのあいだにまだまだ多くの試行錯誤を要するだろうと話し、W3Cでプライバシーに取り組むメンバーたちが広告業界の代表たちと意見が一致するには、かなりの調停が必要だと付け加えた。

テムキン氏は最後に「これは長い道のりであって、もちろん、完璧にはならない。セルフサービスソフトウェアに完璧はないものだ。こういうものは、だいたいバージョン3.0あたりでよくなる。これは長い道のりで、基本的な変革なのだ」と締めくくった。

[原文:Google plots further Privacy Sandbox trials but concerns still linger

Ronan Shields and Seb Joseph(翻訳:SI Japan、編集:長田真)

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