ピンタレスト への広告出稿を控えるブランドの胸の内:パフォーマンス指標の弱さが課題に

DIGIDAY

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予算が厳しくなるにつれ、ピンタレスト(Pinterest)への出稿を見直すブランドが現れている。

ある代理店の責任者は、同社のポートフォリオ全体の約25%にあたる10社のクライアントが、今年に入ってからピンタレストの有料広告を取りやめたと、匿名を条件に米モダンリテールに語った。eコマース代理店のコマースキャナル(Commerce Canal)の創業者も、ピンタレストへの支出が今年大幅に減少し、同社のクライアントがピンタレストに使う金額が昨年同時期に比べて32.4%減少したと、米モダンリテールに語った。経済の見通しが良くないことから、ブランドはファネルマーケティングにおけるボトムオブファネルに注力するようになってきたと、代理店の責任者は述べている。そのため、ピンタレストは、ブランドが長きにわたって売上の誘因にするのに苦労してきたチャネルであり、一部の企業にとって選ばれなくなってきている。

ソーシャルメディアプラットフォームであるピンタレストは、ショッピングを促進するための新機能を開発中であり、ブランドが広告から撤退するのは、大きな打撃となっている。同社は昨年、ピンタレストでのショッピングを促進することで、同社の新たな成長段階をリードするべく、Googleのシニアエグゼクティブであるビル・レディ氏を最高経営責任者に任命した。今年は、顧客のショッピングの意思をさらに増強するため、加盟業者がウェブサイト上にカタログをアップロードすることを推奨し、広告主がプレミアスポットライト(Premiere Spotlight)のような新しいフォーマットをテストするのを支援していると語った。

ピンタレストはコメントに応じていない。同社は以前、第1四半期(4月27日発表)の収益成長率が1ケタ前半になるだろうと予測していた。

出稿を取りやめるブランドも

「ピンタレストは実は、2023年に自社の広告スイートで、さまざまな機能拡張や広告機能の運用を開始する予定で、非常に有望なロードマップを保有している」と、あるマーケティング代理店の責任者は匿名を条件に語った。

この人物の勤める代理店は40ほどのD2Cブランドと取引しているが、昨年同時期に同社のクライアントの約25%がピンタレストに広告を出稿していたと語る。「その後、予算が厳しくなりはじめた下半期の最初に、我々のクライアントの約半数が広告を取りやめ、年末にはすべてのクライアントが取りやめた」。

「年初にピンタレストと協力して今後の展開について話していただけに、これは残念だった。彼らは、広告の拡張や新機能の運用開始について、非常に有望なロードマップを保有している。私はそれが優れたものだと思うが、現在のところ、当社のクライアントは、求めているパフォーマンスの基準があまりにも高いため、それらを活用していない」と、その人物は付け加えた。

ピンタレストは最新の四半期である第4四半期の収益増加がわずか4%だと報告した。前年同期の成長率は20%だった。同社は2022年12月31日末の時点で8億7700万ドル(約1180億円)の収益を達成した

アトリビューションとリターンでの課題

コマースキャナルの創業者であるライアン・クレイバー氏は、同氏のクライアントのあいだで、ピンタレストへの支出が、昨年同時期と比べて4月は劇的に落ち込んだと語る。「この数カ月で明らかになったのは、人々はアトリビューションが弱いことが示されたプラットフォームから資金を引き上げているということだ。そして、ピンタレストのアトリビューションとリターンは明らかに、メタ(Meta)、Google、Bingなどのより堅調な数字と比べて、間違いなくはるかに低い」と、同氏は述べている。同氏は、ピンタレストへの支出を減らしたクライアントは、ベッドシーツ、フットウェア、衣服など、ピンタレストで良い結果を収める傾向があるカテゴリーを販売するブランドだと、名前は伏せて語った。

ピンタレストの利用者は、商品リサーチをはじめたばかりのときにこのプラットフォームを利用することが多く、これはピンタレストの歴史的にもっとも大きな課題のひとつだった。その結果、同社は自社のプラットフォームが売上に寄与していると示すことに長いあいだ苦闘してきたが、この点に関するブランドの懸念に対処するために、いくつかのツールをリリースしようと試みてきた。たとえば同社は昨年、ブランドがキャンペーンの成績を包括的に把握し、オーディエンスが広告主のサイトで行った行動を測定できるよう、新しい「API・フォー・コンバージョンズ(API for Conversions)」ツールを追加した。同社は2019年にも、D2C企業と直接協力し、適切なアトリビューションウィンドウの設定を支援する専任販売チームを設立し、アトリビューションの問題への取り組みに力を入れてきた。

また、ピンタレストは現在、ピンタレストプレミアムスポットライト(Pinterest Premiere Spotlight)のベータ版をテスト中だ。これは新しい引継ぎツールで、検索結果においてブランドを目立つように配置するものだ。これにより、小売業者やブランドは、ユーザーの発見から購入決定までを支援する機会を得られる。

クレイバー氏はピンタレストによる広告スイート構築への取り組みについて、「ユーザー1人当たりの平均売上を増やす可能性が高い」とする一方で、「同社のユーザーベースの増加速度は十分ではない」とも警告している。同社の全世界的のユーザーベースは第4四半期に前年同期比で4%増加したが、米国とカナダでのユーザー数は横ばいだった。また、全世界の月間アクティブユーザー数は4億5000万人だとしている。これらの数値は、TikTokが3月に米国の月間ユーザー数が1億5000万人に達し、全世界で10億人を超えていることや、メタのインスタグラムが全世界で20億人を超えるアクティブユーザーを抱えていることに比べると見劣りがする。

トップオブファネルでの効果

ピンタレストは歴史的に、ブランドについての認知を促進する要素が強く、それに対してメタやGoogleはよりボトムオブファネルのプラットフォームだと、クレイバー氏は語る。

それでも、いくつかの小規模ブランドは、少ない予算で柔軟に対応できるため、ピンタレストに投資することにメリットを感じている。エスカービューティー(Esker Beauty)の創業者であるシャノン・ダベンポート氏は、ピンタレストが「不可欠ではないが、保有していると役に立つ。しかし、今のところはまだ誰にも答えはわからないとも思っている。絶対的に信頼できるプラットフォームは存在しない」と、米モダンリテールに述べている。

同氏はピンタレストに毎月1万ドル(約134万円)ほどを支出しており、「ピンタレストは間違いなくトップオブファネルの要素が強い。ROAS(広告の費用対効果)が非常に強いことは期待していない。すなわち、ROASが負になることはないが、2倍や3倍のROASが得られることもない」と述べている。

しかし、ピンタレストは依然としてトップオブファネルの認知を広めるためには優れていると、同氏は付け加える。

ティヌイッティ(Tinuiti)で有料ソーシャル担当のバイスプレジデントを務めるアビィ・ベン・ツビ氏は、ブランドがピンタレストを「よくあるパフォーマンスマーケティングチャネル」として扱い、Google、Amazon、メタといった競合他社と同様に評価するなら、「確実に失敗する」と語る。同氏の代理店では、ピンタレストへの投資撤退を経験しておらず、実際のところ投資の数は増えていると述べている。

同氏は、ピンタレストの有効性を正しく測定するには、ブランドがインクリメンタルテスト(増加テスト)、ハロー分析、マーケティングミックスのモデル化、マルチタッチのアトリビューションソリューションなどへの投資を検討するべきだと語る。

「ピンタレストには、コンシューマージャーニーにおける発見段階において、計り知れない価値があるが、メタ以外のほとんどのプラットフォームが直面しているのと同様、測定とアトリビューションの問題に悩まされている」と、同氏は述べる。それでも、「ピンタレストは多くの新商品を追加してきており、当社はそれをテストしてきた。それにより、キャンペーンのインパクトを測定するためのより円滑な方法を見つけることができた」。

[原文:Some brands pull back on Pinterest ad spend because of weak performance metrics]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Pinterest

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