テレビと ストリーミング における「ID」、その現在と未来:要点まとめ

DIGIDAY

TVとストリーミングに関するID、その全容が徐々に明らかになりつつある。

従来型TVとストリーミングはこれまで、サードパーティCookieの問題をまぬがれてきた。セットトップボックス、スマートTV、そしてコネクテッドTVデバイス。これらはどれも、Cookieをサポートしていない。ストリーミングの広告バイヤーとセラーがCookie的な識別子として利用してきたのがIPアドレスなのだが、このIPアドレスは信頼性に乏しい選択肢だ

  • さまざまなIDが各種ストリーミングサービスでの採用を拡大しつつある。
  • 特定のIDが市場を支配することはない見込み。
  • オープンAP(OpenAP)とフリーホイール(FreeWheel)は、IDの総合運用性の向上に取り組んでいる。

2022年になり著しい進展が

ところが今年になって、TVとストリーミングのIDレイヤーの確立に、著しい進展が見られるようになった。「はっきりと目に見えるかたちで、IDコンセプトが形成されつつある。実用的なレイヤーが一般化するためには、このコンセプトが不可欠だ」と、あるエージェンシーの幹部は語る。

  • Unified ID 2.0(以下、UID 2.0)や、アドテク企業ライブランプ(LiveRamp)のRamp ID、アドバンスドTVおよびストリーミング広告企業であるオープンAPのOpenIDといった、各種IDを採用するストリーミングサービスが増加している。
  • 近いところでは、オープンAPは、オープンAPを共同所有するフォックス(Fox)やNBCユニバーサル(NBCUniversal)、パラマウント(Paramount)、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)などの大手TVネットワークといった、参加するストリーミング広告セラーから、コムキャスト(Comcast)傘下のフリーホイールや、マグナイト(Magnite)、マイクロソフト(Microsoft)傘下のザンダー(Xandr)が所有するSSP(サプライサイドプラットフォーム)を介して、広告主がプログラマティックインベントリーを購入する際、OpenIDを使用できるようにしている

広告主とエージェンシーのブログラマティックバイイングの管理を専門とするマイキュー(MiQ)で、アドバンスドTV部門のグローバル責任者を務めるモハマド・チュグタイ氏は、こう語る。「今年は、個人識別の領域における進歩が著しい年だ。たとえば、UID 2.0のCTVへの採用は、年初と今現在とでは、大きく違っている」。

しかし、進歩をはかる尺度という意味では、個々のIDの採用そのものは、やがて実現するであろうこれらID間の相互運用性ほどの重要性を持つことはないだろう。前出のエージェンシー幹部によれば、業界は「ひとつのIDソリューションが登場して、すべてを支配するようになるわけではない」という考えを受け入れるようになっているという。だからこそ、TVとストリーミングのIDレイヤーを形にするだけでなく、命を吹き込むためには相互運用性が欠かせないのだ。

オープンAPのCEO、デビッド・レビー氏は、こう語る。「フリーホイールからの発表には、OpenIDとフリーホイールID(FreeWheel ID)間の相互運用性が含まれている。これは双方のダイレクトキャンペーンにおいて重要なのと同時に、今回の発表においても、プログラマティックの観点から非常に重要なことだった」。

現在の取り組み

基本的には、現在進行している動きには2つある。

ひとつ目は、個々のIDをマーケットプレイス全体でサポートする体制を確立し、そのサポートを直接販売とプログラマティック販売に広げ、キャンペーンのターゲティングと測定のベースを一致させてカウントミスを防ぐことだ。その典型が、オープンAPによるOpenIDのプログラマティック販売への拡大であり、これによって広告主は、単一のIDを基に特定のオーディエンスをターゲティングし、同じIDに基づく同じオーディエンスに照らして広告配信を測定されるTVネットワークやCTVプラットフォーム、ストリーミングサービスから、広告をプログラマティックで購入することも、直接購入することもできる。

「オープンAPが基本的に取り組んでいるのは、パブリッシャーから提供される可能性のある全エンドポイントの優先リストを並べ、OpenIDを配布できるようにすることだ」と、レビー氏は語る。

2つ目は、これらのID間の相互運用性の確立となる。その典型がフリーホイールのID構想だ。

オーディエンスを活用するこうした新しい方法で取引を行いたいが、最終的には、OpenIDならいい、ほかのIDならいい、独自の広告主IDならいいといっているパブリッシャーの意向に沿いたいという、こうしたバイヤーとセラーをどうしたら結び付けられるだろうか? その両者を結び付ける接着剤になるために、我々はどうしたらよいのだろうか?」と、フリーホイールでゼネラルマネジャーを務めるマーク・マッキー氏は語る。

こうした接着剤の役目は重要だが、同時に複雑でもある──このIDレイヤーの配置に内在する複雑さゆえに重要なのだ。OpenIDやRamp ID、UID 2.0などからなるIDレイヤーの下には、個人や世帯のIDへの関連付けに用いられるデータ基盤がある。

この基盤を構成するデータの種類は、ユーザーのメールアドレスやIPアドレス、トランスユニオン(TransUnion)やエクスペリアン(Experian)などのクレジットモニタリングサービスが収集・管理する個人情報など、多岐に渡る。たとえばOpenIDなら、その中心をなしているのは、トランスユニオンのデータだ。ただし、オープンAPはエクスペリアンとライブランプのデータをライセンスすると同時に、加盟パブリッシャーのデータもOpenIDに付加している。

いまだ課題は山積み

要するに、TVとストリーミングのIDの最前線で起きている進展に関していうと、まだまだ仕事は山積みだということだ。この仕事には、さまざまな個々のIDの採用の拡大が必然的に伴う。たとえばYouTubeは、TVスクリーンの試聴時間に関していえば、2強の一角をなすストリーミングサービスだが、いまのところ前述のどのIDのサポートも表明していない。だが、これを上回る一大事業になるのが、これらID間の相互運用性の確立だ。

「最大の溝が生じているのが、クロスIDの領域、統一に関する部分だ。マーケターは二者択一の板挟みになっている。これがIDの未来だと自分にいい聞かせながら、単一IDの領域に本腰を入れるべきか? それとも、とにかくいまは下手に動かないで、業界の動向がはっきりするまで1~2年待つべきなのだろうか?」と、チュグタイ氏は語る。「マーケターの圧倒的多数が後者だと思う」。

「何らかのIDソリューションが購入できるようになること(中略)業界全体がそこに向かって進んでいる」と、前出のエージェンシー幹部は語る。「だが、これに関しては、我々は初期段階にあると思っている。これがどのぐらい現実味を持っているのか? どのぐらい大きな意味を持っているのか? 今後さらにどう進化するのか? こうしたことをまだ学んでいるさなかなのだ」。

[原文:Future of TV Briefing: The present and future of TV and streaming’s identity layer

Tim Peterson(翻訳:ガリレオ、編集:黒田千聖)

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