ラグジュアリー消費者 が強い。値上げに踏み切るブランドが続々【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

ラグジュアリーは不況に強いという古くからの俗説は、景気後退と個人消費の減少が続いた昨年1年は真実だった。GAPのような企業が億単位の損失を出す一方で、エルメス(Hermès)やシャネル(Chanel)といったブランドは記録的な売上をあげている。ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)は、こうした状況で過去最高の時価評価額を達成したほどだ。

このような動きのなかで、これまで低所得や中間層の消費者を対象としてきたブランドや小売業者が一斉に、高所得の消費者をターゲットにする方法を検討し始めている。非ラグジュアリーブランドが、シャネルやエルメスのようなブランドと肩を並べるほど完全に方向転換するのは非常に難しいにせよ、これらのブランドはそうした顧客を惹きつける方法を見つけている。

世界に数点しかない高級ジーンズ

4月、デニムブランドのフレーム(Frame)がそうした取り組みを行った。同ブランドの主力ジーンズは確かにプレミアムで、1本300ドル(約4万円)近い価格で販売されているが、グッチ(Gucci)のように1000ドル(約13万6000円)以上のデニムを販売するブランドの価格レベルにはほど遠い。4月末、フレームは英国ヴォーグ(Vogue)のファッションディレクター、ジュリア・サー=ジャモア氏と共同制作したコレクションを発表した。かぎ針編みのビキニや絞り染めのキャミソールワンピースなどのスタイルがあり、すべてフレームの通常価格帯で販売されたが、1アイテムだけ例外があった。それはスワロフスキー(Swarovski)のクリスタルをちりばめたジーンズで、1万1995ドル(約163万円)で販売されている。

そのクリスタルのジーンズの生産数はごくわずかで、10本に満たない数しか作られなかったが、フレームの創業者でクリエイティブディレクターのエリック・トルステンソン氏は、このジーンズがフレームの通常の商品にはない、あるレベルの排他性をもたらすことを期待していると述べている。

「私たちは究極のイブニングジーンズを作りたかったのだが、スワロフスキーのクリエイティブディレクターで友人のジョヴァンナ・バッタリア氏が、その野望を実現するのに最適な人物に思えた」とトルステンソン氏は言う。「1万2000ドル(約163万円)という価格は高いと思われたが、すでにかなりの興味を持ってもらっており、限定生産分は完売する見込みだ。この価格は、このジーンズを一本一本作るために費やされた職人技を反映している。私たちにとって、このジーンズはひとつの芸術品だ。このジーンズを手にする少数の幸運な人たちは、自分が世界で数人しか所有していないうちのひとりだと知ることになるだろう」。

低価格商品の売り上げが減少し、高額商品の売り上げが上昇

5月9日に報告されたスレッドアップ(ThredUp)の2023年第1四半期の業績では、もっとも低い価格の製品セグメントの売上が24%減少した一方で、もっとも高価なセグメントの売上は6%増加したことが明らかになった。CEOのジェイムズ・ラインハルト氏は決算説明会で、スレッドアップは今後数四半期、予算に敏感な買い手が戻ってくると予想される年末までは、マーケティングメッセージとホームページで紹介する製品については予算を意識しない買い手をターゲットにする方向で調整していると述べている。

買収の分野では、エアロポステール(Aeropostale)やフォーエバー21(Forever 21)などのショッピングモールブランドを所有することで知られるオーセンティックブランズグループ(Authentic Brands Group)が、4月にヴィンスホールディング(Vince Holding Corp.)と契約し、ヴィンスの服を販売することになった。ヴィンスは純粋なラグジュアリーではなく、価格的にはフレームと同程度である。だが、オーセンティックのポートフォリオにあるほかの多くのブランドよりはワンランク上だ。当時、オーセンティックのCEOであるジェイミー・サルター氏はこの買収を、小売業のハイエンドをターゲットとする同社の目標の一環だと述べている。

ハイエンドなラグジュアリーの消費者の強みは、マイテレサ(Mytherea)やタペストリー(Tapestry)といったブランドの最近の業績にも表れており、そこではディスカウントや格安のアイテムよりも高価でフルプライスの商品が売り上げを牽引している。

タペストリーが5月11日に発表した第3四半期決算では、売上高が9%増加して予想を上回ったことが明らかになった。CEOのジョアンヌ・クレボイスラット氏は、この売上は主にフルプライスの売上によってもたらされたと述べている。

「特に北米ではフルプライスでの売上が増加した一方で、ブランド力の強化に注力するなか、オフプライスでの露出を減らし続けている」とクレボイスラット氏は言う。

コーチ(Coach)のプレジデントであるトッド・カーン氏も同様の戦略が同社において特に効果的であったと話す。同ブランドは商品数を減らし、もっとも収益性が高いいちばん高価な商品のみに注力している。

「3年前にイノベーションと変革を始めてからSKU数のほぼ半数を削減した」とカーン氏は決算説明会で述べた。「我々はトップラインを追い求めてはいない。マージンを確保し、より高い(平均小売単価で)取引を行う新たな顧客ベースを構築している」。

ラグジュアリーの消費者はいまだに強い

5月10日に発表されたマイテレサの業績からも同じ傾向が伺える。前四半期の18%の売上増加の大部分は、フルプライスで割引のない顧客が占めていた。さらにマイテレサでは、消費額の高い顧客からの商品総額が6.7%増加している。

「第3四半期は、当社のマージンは多くの競合他社の強力なプロモーションの影響を受けたが、収益性の高い成長を実現できた」と同社のCEOマイケル・クリーガー氏は述べた。「当社は最高の顧客体験と高いフルプライスシェアという戦略に非常に重点を置いており、第3四半期には36.8%のトップカスタマーの流通取引総額(GMV)の成長をもたらした」。

ラグジュアリーハンドバッグの再販プラットフォーム、リバッグ(Rebag)のCEO、チャールズ・ゴラ氏は、より多くのブランドが注目すべき点は、ラグジュアリーの顧客の強さだという。

「3年間、我々は不況について話してきた。そして、ラグジュアリーの消費者が何らかの形で減速するのではないかと予想していたかもしれない」とゴラ氏は言う。「だが、実際にはそうなっていない。Covidやインフレーション、地政学など、さまざまなことがあるにもかかわらず、ラグジュアリーの消費者はまだそこにいて、いまだに強い。LVMHはいま世界の時価総額トップ10に入っている。明らかに何かが機能している」。

[原文:Fashion Briefing: Brands are hiking prices to target the recession-proof luxury consumer]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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