Amazon の自動決済技術「ジャストウォークアウト」、遊園地でテスト導入:客単価アップにも期待

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シックスフラッグス(Six Flags)は、食品と飲料を買い求める顧客の待ち時間を短縮するため、テーマパーク事業者としては初めて、Amazonの無人自動決済技術「ジャストウォークアウト(Just Walk Out)」をいくつかの拠点で試験的に導入した。

同社は6月1日、Amazonのジャストウォークアウト技術を、ニュージャージーにある自社のテーマパークでソフトローンチした。テストが成功すれば、ロサンゼルスにあるシックスフラッグス・マジックマウンテンでも同様の運用を開始する計画だ。

同社はこれまで、空港など人通りが多い場所に取り入れられてきたジャストウォークアウト技術を、同社のアミューズメントパークの訪問客の体験を迅速化し、待ち時間を短縮することに活用したいと考えている。Amazonは2020年3月、同社のレジがないコンビニエンスストアを支えるこの技術を、ほかの小売業者に販売しはじめた。コンビニエンスストアを運営するハドソン(Hudson)は2021年、ダラス・ラブフィールド空港(Dallas Love Field Airport)で、この技術を使った自社初のハドソン「ノンストップストア」を公開し、2022年にはロサンゼルス国際空港(Los Angeles International Airport)の店舗でも運用を開始した

飲料の購入時間は50秒に

シックスフラッグスエンターテイメント(Six Flags Entertainment)の戦略マーケティングおよびパートナーシップ担当グローバルバイスプレジデントを務めるステファニー・ボルヘス氏は、テーマパークの訪問客が不快に思うポイントのひとつは常に行列だったと、米モダンリテールに語った。

「当社は常に、テクノロジーとイノベーションを活用して、訪問客の体験を向上する方法を模索している。我々は、テーマパークを訪れる消費者と、それらの消費者がその日に行うさまざまな行為を総体的に調べているが、不快に感じるポイントのひとつは常に行列だ」と、同氏は米モダンリテールに話した。

この技術コラボレーションは、シックスフラッグス、Amazon、そして飲料大手であり、シックスフラッグスの長年の戦略的パートナーであるコカコーラ(Coca-Cola)によるジョイントベンチャーの結果だ。コカコーラのアミューズメントおよびエンターテイメントパートナーシップ担当ディレクターを務めるレイチェル・チャハル氏は、このパートナーシップにより、コカコーラの訪問客あたりの小売売上額が10%増えることを期待していると、米モダンリテールに語った。「この数値を達成すれば、この技術をほかのパークにも取り入れ、最終的にすべての自動販売機を置き換えることができるだろう」と、同氏は述べる。

シックスフラッグスは、400平方フィート(約37.2平方メートル)の「クイックシックス(Quick Six)」ストアでジャストウォークアウト技術を設置する予定だ。この店舗では、飲料や食品、キャンディー、およびマグカップやTシャツといったシックスフラッグスのブランドグッズの支払いができる。顧客が入店時に使用した支払い方法で自動的に請求されるため、従来のようにレジ待ちで並ぶ必要がなくなると、同社は述べている。

この技術により、人々が飲料だけを購入する場合、合計処理時間は50秒以内になると、チャハル氏は付け加える。従来は、テーマパーク内のコーラの自動販売機や小売店で行列待ちする時間は、行列の長さによって最大6分間になることがあった。

新技術に投資する価値

コンサルティング企業のグローバルデータ(GlobalData)で小売のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏によると、テーマパークなどの場所では、訪問客が波のように押し寄せるなかで大勢の人を管理することが課題となるため、シックスフラッグスでのジャストウォークアウト技術の運用開始は理にかなっている。「この技術は、人々が急いでいる場所や、人々の数が突然急増し、対処が困難になるような場所には特に適していると考えている。そして、テーマパークは明らかにそのような場所のひとつだ」と、同氏は述べている。

しかし、Amazonは有力な小売業者に、この技術の利用を説得することが難しいことに気づいたと、同氏は語る。その理由は、この技術を導入するのが非常に高価であるためだという。「多くの小売業者、特に食料品のように利幅が小さい業者が使用をためらっている」と、同氏は述べた。「しかし、テーマパークではさまざまなグッズを取り扱い、ギフトも多く、テーマパークの訪問客は多くの場合多額の支出をするため、この技術が財務的に許容される可能性が高い」。

この新しい技術の導入は、シックスフラッグスが第1四半期に4000万ドル(約55億6000万円)の損失を発表し、自社のテーマパークの訪問者数が前年同期比で5%減少したと報告したことを受けたものだった。しかし、直近の四半期の収益は3%増の1億4200万ドル(約197億円)だった。同社はテーマパークをより的確に収益化し、より効率的に運営する方法を模索している。たとえば、ロボットを使ってプールを清掃し、労働力コストを削減するなど、ほかの分野のベンダーから技術を採用することを検討していると、ボルヘス氏は述べている。

「パークを訪問した客が、ポテトチップスとコカコーラだけを買うだけなら、行列に並ぶことなく、品物を手に取ってすぐに外に出られるという、ほかでは味わえない体験ができる。また、このスペースでスタッフが軽快に動けるようにするため、スタッフ配置の観点から見ても役立つ」と、同氏は付け加えている。

客単価の向上にも期待

飲料複合企業であるコカコーラは、取引を高速化することで、それぞれの消費者からより多くの支出を引き出すことを望んでいる。「飲み物を購入するために行列に並ぶ必要があり、ジェットコースターでも列に並ぶ必要があるなら、どちらかしか選べないことになる。この技術を使用すれば取引が高速化するため、両方を選ぶことが可能だ」と、チャハル氏は付け加える。

シックスフラッグスのボルヘス氏は、このパートナーシップが成功かどうかを、同社のクイックシックス(Quick Six)店舗のEBITDA(利払い、税引き、減価償却前の利益)などの財務指標と、売上に基づいて測定すると語る。「その店舗で売れている品物は何か、当社にとってプロフィットセンターなのか、当社のほかの一般的な小売店舗よりも多くの収益を生み出すことは可能か、などだ」と、同氏は述べる。

「当社がすべてのパークにこの技術を設置するとは思ってほしくない。当然ながら、結果が良くなければ拡大し続けることはできないからだ。しかし、当社の各パークでこれが成功することに期待している。その場合、その成功を受けて当社のパークすべてにこの技術を展開することも視野に入れている」と、同氏は述べている。

[原文:Six Flags to pilot Amazon’s Just Walk Out technology in June ahead of peak summer season]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Six Flags

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