ノードストローム 、パンデミック前の水準に復調:若年層取り込みとデジタル化推進も追い風となるか

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ノードストローム(Nordstrom)は最近の報告書で、ほかの小売業者のような壊滅的な決算のパターンを打ち破った。

最大手の競合他社のいくつかが利益の減少を経験しているあいだ、同社のエグゼクティブは第1四半期の決算報告で楽観的な見方を示した。百貨店である同社は現在、会計年度の収益が以前の見通しである5%から7%を上回り、6%から8%成長すると予測している。同社は、合計実売上が前年比18.7%増の35億ドル(約4450億円)に達し、パンデミック前の水準を超えたことを報告した。同社の粗利は、実売上に対する比率として、昨年と比べて同四半期に190ベーシスポイントも増加した。

ターゲット(Target)、ウォルマート(Walmart)、コールズ(Kohl’s)などの小売業者とは異なり、同社はインフレが消費者の支出に影響を及ぼしているとは考えていないと語る。エグゼクティブは理由として、同社の顧客が一般に収入が高い層で、回復力もあることを可能性として挙げている。同社は、より大きな売上と戦略的イニシアチブから利益を得ることを期待しており、これには同社の一部店舗でオールバーズ(Allbirds)の商品を販売開始することも含まれていると述べている。

CEOを務めるエリック・ノードストローム氏は次のように述べている。「今四半期には、顧客が長いあいだ待望していたソーシャルイベント、旅行、オフィスへの復帰などの対面イベントのためにショッピングを行った。それ以外にも顧客は自宅のワードローブを再検討して、中身を入れ替えるようになった。これは当社ビジネスの中核カテゴリーや、当社のサービスモデルの中核的な能力に有利な動きであり、当社はこの機会に力を得た」。

パンデミック前の水準に

同社は、2020年の第1四半期にパンデミックのため店舗の一時的な閉鎖を余儀なくされたことにより、大きな損失を計上した。同社の実売上高は前年より40%も減少した。同じ四半期に、同社は5億2100万ドル(約651億円)の実損失を計上した。

しかし、店舗内でのショッピング、対面のイベント、および現場での仕事の復活により、同社の状況は変わってきた。男性用アパレルは同社がもっとも強いカテゴリーだが、女性向けと男性向けの両方のアパレルが昨年2ケタの成長を記録した。さらに多くの顧客が店舗に戻ってきたことから、今四半期における同社のデジタル売上高は前年とほぼ変化しなかった。

特に、ノードストロームの都市部の店舗における売上は完全に回復し、パンデミック前の水準に戻った。また同社はスタイリングや寸法直しのサービスも行い、アパレルを販売する競合他社との差別化を行っている。

オムニコム・リテール・グループ(Omnicom Retail Group)のコマース担当シニアバイスプレジデントを務めるブライアン・ギルデンバーグ氏は次のように述べている。「ノードストロームは地理的にも、都市部と郊外の関係でも、店舗の場所の構成比率について興味深いものがある。同社はおそらく、ほかのいくつかの小売業者よりも、都市部の有利な場所に多少多くの店舗を保有しているといえるだろう」。

ほかの小売業者は壊滅的な結果に

ほかの小売業者にとって、今四半期はノードストロームほど良い状況ではなかった。ターゲットの営業収入は前年比で43%減少し、これは必需品以外のアイテムから、旅行などほかのカテゴリーへの移行を表していると、エグゼクティブは語っている。ウォルマートの営業収入は16億ドル(約2030億円)減少し、コールズの営業収入は前年比で70%減と壊滅的な結果になった。

インフレ、燃料コスト、サプライチェーンの経費などの経済的な逆風に加えて、人材確保の課題も、収益性低下の主犯の一部だ。ノードストロームもこれらの問題の影響を受けなかったわけではないが、同社はそのコストを製品価格に回すことができると、サイズモアキャピタル(Sizemore Capital)の最高投資責任者を務めるチャールズ・ルイス・サイズモア氏は語っている。

同氏は次のように述べている。「より大衆市場向けの小売業者は、インフレのコストを商品に転嫁すべきでないという圧力にさらされる。これを行えば、消費者に大きな影響を及ぼす。しかし、ノードストロームはこのコストを簡単に製品価格に回すことができる。同社の買い物客はそのコストを支払うことができる。同社の顧客にとってコストが大きな負担ではないことが、最終的な違いをもたらす」。

新たな追い風の可能性

ノードストロームにとって、今後の数四半期のあいだに新たな追い風が吹く可能性もある。同社は決算発表において、サステナブルな靴のD2Cブランドであるオールバーズ(Allbirds)が、6月1日から一部店舗で販売されると述べた。オールバーズの商品は今年の夏の後半から、Nordstrom.comでも販売されるようになる。

同社は5月、ファッションブランドのエイソス(Asos)とのパートナーシップを拡大した。一部の店舗では、エイソスの商品の販売を開始し、若い消費者の取り込みを図っている。

ノードストロームは、デジタル機能を引き続き進化させる予定だ。同社は第2四半期に、注文の翌日受け取りサービスを、60を超える新たなノードストロームラック(Nordstrom Rack)店舗で、自社の20の主要な市場に拡大することを計画している。エグゼクティブは、店舗内受け取りを使用する顧客は、使用しない顧客よりも3.5倍の金額を消費する傾向があると語っている。

同社が将来の業績について楽観的であることは、新しい5億ドル(約635億円)の自社株買いプログラムにも反映されていると、サイズモア氏は語る。自社株の買い戻しは多くの場合、自信の現れだと同氏は述べている。

しかし、同社の楽観的な予測にもかかわらず、現在の経済環境は予測が困難だと、専門家たちは述べている。深刻な景気後退が発生し、人々が収入源を失ったり、ショッピングを控えたりすれば、ラグジュアリー商品の売上は劇的に低下する恐れがある。

サイズモア氏は次のように述べている。「予測よりも深刻な景気後退が発生したなら、ノードストロームにとって、少なくとも数四半期にわたる悪いニュースとなるだろう。これが同社にとって破滅的、または倒産を招く可能性があるものとは考えないが、同社の有望な見通しにリスクが存在するとしたら、経済の悪化が予測よりも急速に進むことだろう」。

[原文:Nordstrom raises outlook shrugging off economic gloom]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Nordstrom

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