収益拡大を実現する リテールメディア 、いかに構築するか?:Peach AviationとRoktの事例から

DIGIDAY

EC事業者がいまもっとも注目し、投資が拡大している領域のひとつがリテールメディアだ。

アメリカなどではウォルマート(Walmart)やクローガー(Kroger)といった大手リテーラーが自社のECサイトや店舗内デジタルサイネージを「メディア」とし、ブランドに広告枠を提供することで広告費やメディア支出を獲得、収益拡大に成功している。eコマーステクノロジーソリューションを提供するRoktでビジネスデベロップメントを担当する松田誠氏は、「主力事業の倍以上の利益をもたらすことができるポテンシャルを秘めている」と語る。

Roktと共にリテールメディア構築に取り組んだPeach Aviation株式会社(以下Peach)新規事業推進室・インフライト・リテール事業部のマネージャー、松本敏幸氏も「我々が有するお客さまとのタッチポイントを的確にマネタイズすることができた」と語る。「極めて単純化して表現するなら、お客さまが航空券を購入すると、チケット収入に加えて付帯収入が入ってくるような状況になっている」。

しかし、リテールメディアの構築・導入は容易ではない。前述のウォルマートやクローガーも、データ整備やシステム開発、広告営業部隊の設立などに大規模な投資を行った上での成功だ。顧客とのタッチポイントを精査し、どのタイミングでどんなオファーを提示すればマネタイズが成立するのかを見極めるのも容易ではないように思える。だが、RoktとPeachはシンプルな手法で収益とビジネスの拡大に成功したという。

どのような方法でこれだけの成果を得ることができたのか。DIGIDAYが主催するDIGIDAY BRAND LEADERS 2022にて両社登壇したセッション、「『購入完了の瞬間』に注目し、新たな収益源を創出したPeachのマネタイズ戦略とは?」の内容から、その手法を紐解いていく。

既存ビジネスは維持しつつ、さらなる拡大をもたらす

リテールメディアは小売・広告業界において、もっとも注目されているキーワードだと言っても過言ではないだろう。「リテールメディアを使いこなすことが、ブランド、小売業者両者の収益拡大において大きな意味を持つようになっている」と松田氏も指摘する。

ブランドや小売業者のビジネスは商品・サービスを顧客に提供し、利益を獲得することが基本的なビジネスモデルとなるが、リテールメディアは既存ビジネスを維持しつつ、自社と顧客のタッチポイントをメディア化することで既存ビジネスに加えて広告収入を得ることができるのだ。松田氏は「小売業者やEC事業者がもつ会員基盤を活用して、消費者の購買・行動データを集め、これを広告配信に活用するビジネスモデルになっている」と語る。

「リテールメディアを使いこなすことが、収益拡大において大きな意味を持つ」と語る松田氏。

代表的な事例はAmazonだろう。大手ECプラットフォームであるAmazonだが、コマース事業で利益は出ておらずむしろ赤字となっている。「それでもあれだけの利益を実現しているのは、リテールメディアによる広告収入だ。2021年度は4兆円以上の広告収益を得ており、さらなる投資の資金源としている」とし、松田氏は続ける。「既存ビジネスからの収益のみを投資にまわす企業と、リテールメディアを有し既存ビジネスの収益に加え、広告事業からの収益をも投資にまわす企業、より競争力があるのはどちらか? 圧倒的に後者になるだろう」。

そして、これはAmazonに限定される話ではない。Peachもまた、リテールメディアによって成果を上げている。

タッチポイントをマネタイズするという発想

そもそも、Peachはなぜリテールメディア導入に踏み切ったのか。松本氏は、「航空会社にとって航空券販売が主要な事業だが、コロナ禍によってチケット収入が大きく減少したなか、チケット収入以外の付帯収入を上げていかなければならない状況だった」と語る。「機内販売や客室乗務員活用などさまざまな形でマネタイズの多様化に取り組んできたが、我々のカスタマージャーニーをいかに活用するかという視点で注目したのが広告事業だった」。

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「コロナ禍以前からいわゆる旅前、旅中、旅後などと言われる各タッチポイントにおいて、マネタイズを実現しようとは考えていた。一例が機内販売だ。307万円のフォルクスワーゲンのビートルを機内販売するなど、ユニークな視点で売上を拡大しようと取り組んでいた」。

化粧品や日用品、飲料メーカーなどの商品を預かり、客室乗務員が機内アナウンスで商品紹介を行い配布する機内サンプリングなども実施してきたという。このようにカスタマージャーニーに合わせた各タッチポイントの最大活用によってマネタイズに取り組んでいたPeachだったが、さらなる収益拡大の必要性を強く感じていたと松本氏は語る。「そのためには、デジタル化を進めるしかないと考え、Roktとのパートナーシップを決めた」。

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「リテールメディア三方良し」をもたらすソリューション

すでに一定の成果を上げていたPeachに対しRoktが提案したのが、リテールメディアというコンセプトのもと「購買の瞬間(トランザクションモーメント)」とファーストパーティデータに着目したソリューションだ。Peach の場合、それは「航空券を予約する瞬間」ということになる。「購買の瞬間というのはお客さまがもっとも集中している状態」だと松田氏は指摘する。その瞬間に広告を出し、さらにPeachが有する顧客データを活用し、それぞれのお客さまに合ったオファーを提供する。これにより、Peachの広告事業をさらに加速させることができると考えた」。

具体的にはPeachのサイト上でチケットを予約する際、購入ボタンを押した直後の「予約確認画面」が表示されるタイミングで、ポップアップで広告が表示される。購入した瞬間にAIが購入者の分析を行い、クレジットカードや健康サプリ、動画ストリーミングサービスなど様々な種類の広告の中から、もっとも親和性の高いオファーをピックアップして順番に表示する。松田氏によると、これにより高いパフォーマンスの提供にもつながっているという。「Peachのチケット購入時広告は、平均して7.1%の購入者がクリックしている。この高いクリック率も、購買の瞬間に広告を表示しているからこそ。漠然とSNSや動画視聴をしているタイミングでは、これだけの数値を実現できないだろう」。

松田氏は「これにより、『リテールメディア三方良し』が実現する」とし、こう続ける。「広告主側の立場からは、サードパーティCookie規制などの影響下でも、正確に、本当にリーチしたい消費者にメッセージを届けることができる。消費者側からすれば、自分に合ったオファー、本当に欲しいものが提示される。そして事業者側はオファーのクリックに伴う付帯収入を拡大することができる」。

しかし、冒頭で述べたとおり、リテールメディア化のハードルは決して低くない。Amazonやウォルマートのような巨大企業であればシステム構築やAIの導入、広告獲得のための営業リソースの確保、データ整備やプライバシー規制対応なども単独では可能かもしれないが、すべての事業者が同じ対応を取ることは不可能だ。だが、松田氏はRoktならそのハードルを限りなく引き下げることができると語る。「リテールメディア化に必要なエンジンをすべて提供でき、広告主の獲得も可能。収益拡大に貢献できるリテールメディアを容易に導入できるのが我々の強みだと自負している」。

導入・運用コストをかけることなく、新しい収益の柱を獲得したPeach

PeachがRoktのソリューションを導入してから2年が経過しているが、松本氏は想定以上の成果が出ていると笑顔を見せる。「具体的な金額は明かせないが、月単位でもかなりのインパクトで付帯収入が向上している」。

Peachでは想定以上の収益拡大に成功したと松本氏は語る。

導入から運用まで最低限の負担で、トランザクションのタイミングを確実にマネタイズすることができているとし、松本氏は現在を「お客さまに航空券を買っていただくと、何もしないでも付帯収入が得られるような状況」と表現する。「コロナ禍以降、社会の回復が進むことでインバウンドが再び増加すれば、さらなる成長が期待できるだろう。ここ数日の国際便も、搭乗率は90%に達しており、ここからまたグローバルのトランザクションも増加していく。旅行需要が伸びていくモメンタムのなか、Roktとリテールメディア構築ができた意味が非常に大きいと感じている」。

松田氏も、「今後も両者共に成長できるよう取り組んでいきたい」とし、こう続ける。「リテールメディア導入のハードルは決して低くないが、我々はPeachをはじめグローバルでも多くの事業者のビジネス拡大に貢献している。実績と可能性を併せ持つリテールメディア導入を、これからもサポートしていきたい」。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO
Photo by 原 祥子

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