ウェルネスを重視した ソーシャルクラブ の台頭:パンデミックで需要が高まる、社交的要素×ウェルネスの融合

DIGIDAY

コートニー・カーダシアン氏、リタ・オラ氏、ショーン・ホワイト氏などのセレブが頻繁に訪れているレメディプレイス(Remedy Place)は、ロサンゼルスでもっとも高級な新しいソーシャルクラブ(会員制コミュニティ)のひとつだ。ソーホーハウス(Soho House)と同様、メンバーシップベースのモデルとバーテンダーやライブDJによるハッピーアワーがある。だが、カクテルの代わりにあるのはモクテル(ノンアルコールカクテル)。メンバーは独占イベントのほかに、瞑想クラスに参加したり、アイスバスやリンパ腺のためのコンプレッションウェアを利用することができるようになっている。

ウェルネスを重視したソーシャルクラブの増加

2020年1月にオープンしたレメディプレイスは、米国でのパンデミックの再開以来広がりつつある「ウェルネスソーシャルクラブ」のトレンドを牽引している。ブルックリンには、「ソーシャルウェルネス、音楽、アートコミュニティ」であるガイア・ノマヤ(Gaia NoMaya)が今年1月にオープン。スパ、ラウンジ、スタジオ、イベントスペースを備えたこれらの新しいビジネスは、ウェルネスという共通の関心を持つ顧客がコミュニティを築くことができるようにデザインされている。

「ここには誘惑や毒はない」と述べているのは、レメディプレイスの創設者兼CEOのジョナサン・リアリー氏だ。同氏はカイロプラクターでもありウェルネスの第一人者であり、9年前にセレブやプロアスリート、エグゼクティブクライアントらと協働しているときにこのアイデアを思いついたそうだ。顧客が酒をやめるなどの「ライフスタイルの変更」をしたとき、それは「その人の社会生活の大部分に影響を与えた」と同氏は語っている。

こうして、レメディプレイスが(バーなどの)代わりとして設立された。セレブから好評のサービスや治療には、前述のもののほか、赤外線サウナ、高圧酸素治療室、凍結療法、カイロプラクティック、鍼灸、カッピング、自然療法医学、ビタミン点滴などがある。

シックなラウンジでは、リアリー氏が「社会的な代替品」と呼ぶノンアルコールスピリッツを使ったビタミン入りのカクテルが毎週のハッピーアワーで提供されている。「どんな祝い事にも飲酒が含まれているのは文化的なことだ」とリアリー氏。「だが、それはどちらかというと有毒であり、メンタルヘルスに影響を及ぼしている」。

それぞれのクラブ創設者によると、パンデミックのせいで社会的な交流とウェルネス関連活動の両方に対する需要が高まっているという。

リアリー氏は次のように述べている。「パンデミックは大警鐘であり、皆が自分の健康の重要性を改めて認識するようになった。人々はもっとつながりを持ちたいと思い、好きな人たちと一緒に過ごして気分をアップしたいと望んでいる」。

快楽的な面もあるブルックリンのガイア・ノマヤ

ガイア・ノマヤの共同創設者、アンドリュー・ゴールディン氏は「皆、外出できずに家に閉じ込められている状態だから、交流したいと思っている。いまでは体と健康について意識が高まっていて、バランスを見つけようとしている」と述べている。

レメディプレイスとは対照的に、ガイア・ノマヤはウェルネスの快楽主義的な面に対してもっとオープンである。広さ7000平方フィート(650平方メートル)のスペースのコンセプトは、ゴールディン氏が、ブルックリンにある彼の母親のスパで開催していた「ローブ姿のとき(When in Robe)」(「郷に入れば郷に従え」ということわざの英語の一部である「When in Rome」とスパでローブ姿になることをかけている)と呼ばれた「スパのレイブ」パーティからインスピレーションを受けたという。それが、同氏のパーティプランニングブランド、ソニックジャングル(Sonic Jungle)の創業につながり、ソニックジャングルはニューヨークとマイアミでポップアップイベントを開催したりして、最終的に彼自身の常設スペースであるガイア・ノマヤのオープンに至った。

ガイア・ノマヤの感性はレイブというよりボヘミアン的で、バーとオーガニックキッチンとラウンジエリアがある。ラウンジでは、アルコール飲料と、青蓮のような成分を含むハーブの秘薬のドリンクの両方を提供しており、ゴールディン氏によると青蓮を摂取すると「とても鮮やかな夢が見られる」そうだ。イベントにはアートショーやコンサートのほか、カカオセレモニーや恍惚のダンスなどの神秘的なアクティビティがある。ウェルネスサービスにはヨガクラス、クリスタルライトセラピー、サウンドメディテーション、ソルトルーム、スパトリートメントなどがある。

「私はニューヨークで育ち、ウェルネスにはとても興味があるが、楽しいことも好きだ」とゴールディン氏。「その両方が体験できて、飲む友人とも飲まない友人とも一緒に行ける場所を長い間求めていた」。

ゴールディン氏は「社交的であり、つながること」は「ウェルネスの大きな部分」であるため、その場所にはソーシャルクラブの要素が重要であると感じたという。ニューヨーク市内のほかのスパトリートメントやヨガ・瞑想のクラスの大部分では、参加者は「気分がとても上がっても、そのあと帰宅しなければならない」。ガイア・ノマヤでは、たとえばソルトルームでコンサートを催したりして、社交的な要素とウェルネス要素を組み合わせている。

スキンケアブランドも立ち上げたソーホーハウス

ソーホーハウスはもっと多くのウェルネス要素を事業に取り入れている。ソーホーハウスは、スキンケアブランドのソーホースキン(Soho Skin)を立ち上げたばかりだが、その製品はソーホーホテルの客室に置かれており、6月にはスパのアメニティが追加される予定だ。また、パンデミックが始まって以来、同社のアプリのウェルネス関連コンテンツも増えている。それにはヨガや瞑想のクラス、サウンドバスなどがある。

ソーホーハウスのリテール部門マネージングディレクター、アーリッシュ・ヨーク=ロング氏は次のように述べている。「顧客はバーにもスパに対しても同じように熱心で、繰り返し利用してくれている。なので常に『バー』と『スパ』のバランスを取ろうと努めている。山の独房に閉じ込められている人のように禁欲的であることは望んでいない。ソーホーハウスの精神がいつもどこかに反映されていなければ」。

レメディハウスのインフルエンサーお断りの理由

ソーホーハウスのような高級ソーシャルクラブの例に従って、レメディプレイスはセレブとのつながりと華やかなイベントのアクティベーションを通じて評判を獲得している。レメディプレイスはアート・バーゼル・マイアミビーチに参加していた。また、コーチェラでのイベントのためにHBOと協働しており、カンヌ映画祭ではポップアップを展開する予定である。

(ほかでは体験できないという)独占性も重要である。レメディプレイスには、マーケティングに関してインフルフルエンサーを起用しないという方針がある。「クラブの口コミや友人からの紹介などを活用している」とリアリー氏。「インフルエンサーは使わない」。ソーホーハウスの写真撮影禁止ポリシーのように、レメディプレイスでは写真撮影は「ひんしゅくを買う」と同氏は述べている。「誰かが活力を取り戻そうとしているときに一番迷惑なのはインフルエンサーにうろうろされて写真や動画を撮られることだ」。

レメディプレイスのメンバーシップは月額500ドル(約6.3万円)だが、場合によってはトリートメントが無料になることもあるという。ソーホーハウスの会費は年に約2500〜5000ドル(約32〜65万円)。

リアリー氏は、パンデミックのあいだにソーホーハウスのメンバーシップをやめてレメディプレイスのメンバーシップは維持した会員もいたと述べているが、一般的なソーシャルクラブであるソーホーハウスをライバルとは見なしていないそうだ。「我々のメンバーのほとんどはソーホーハウスのメンバーでもある。メンバーらはもう少しヘルシーを目指したいのだが、他人がソーホーハウスに行って飲んだり楽しくやっていることも理解している」。

世界の主要都市に28のクラブを抱えるソーホーハウスのように、ほかのウェルネスクラブの創設者らは自分のコンセプトを米国内、そして最終的にはグローバルに拡大したいと考えている。ガイア・ノマヤは次のロケーションとしてロサンゼルスとマイアミを考慮中だ。レメディプレイスは、マイアミ、オースティン、ロンドンを検討しながら、ニューヨークへの拡張を計画している。また、国際的にはホテルのパートナーになる可能性のある相手と話し合っているところだという。「目標は米国の主要都市すべてに進出して、グローバルに拡大すること」とリアリー氏。ソーホーハウスのヨーク=ロング氏は、「ビジネスの成長にともなってウェルネスの優先順位は高くなっている。ソーホーハウスの今後の展開にそれが反映されるだろう」と述べている。

[原文:The rise of the wellness social club

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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