Twitter モーメントの消滅、トラフィック激減を嘆くパブリッシャーたち

DIGIDAY

イーロン・マスク氏のリーダーシップの下、Twitterがトラフィック参照のソースとして果たす役割は、著しく小さくなっている。

ウェブトラフィックのモニタリングを行うデータ分析企業であるシミラーウェブ(Similarweb)の分析によると、大手パブリッシャー約10社に対する2022年12月のTwitterの参照トラフィックは、同年11月と比較して、平均で12%減少しているという。ワシントン・ポスト(The Washington Post)、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)、CNN、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)、USAトゥデイ(USA Today)、BBC、ヤフー(Yahoo)といったパブリッシャーでは、前月比で10~18%の減少を記録した。

ピープル(People)にいたっては46%もの減少を記録しており、増加を記録したのは、ニューヨーク・ポスト(The New York Post)とフォックス・ニュース(Fox News)の2社だけだった。トラフィックの減少よりも増加を記録したパブリッシャーがほとんどだった2021年11~12月に比べると、これはあまりにも急激な変化だった。

米DIGIDAYが今回取材したパブリッシャーの大半は、12月に行われたTwitterモーメント(Twitter Moments)の廃止をこの急落の原因に挙げた。その結果、各社は現在、Twitterからの撤退を希望する広告主の意向をくんで、リンクトイン(LinkedIn)やFacebookなどのソーシャルプラットフォームや、ニュースレターなどのフォーマットへの投資を行っている。

データが示すTwitter参照トラフィックの減少

ウェブパブリッシング技術プロバイダーのオートマティック(Automattic)が、ランダムに選んだ大手および中小パブリッシャー21社を分析したところ、第4四半期におけるTwitterからのトラフィックは、平均で13%減少していることがわかった。このデータセットのうち、トラフィックの減少を記録したパブリッシャーは71%だった。この第4四半期のデータには、マスク氏がTwitterのオーナーになった10月末より前のデータも含まれている。

オートマティック(同社は2021年にパースリー[Parse.ly]を買収)のグローバルマーケティングエージェンシーパートナーシップを監督するトッド・ブラックモン氏は、このトラフィックの減少にはさまざまな要因が考えられると話す。たとえば、パブリッシャーが広告費を削減した場合や、Twitterユーザーが減少した結果、ニュース記事へのリンクのツイートも減少した場合などだ(編集部註:パースリーは米DIGIDAYの委託ベンダー)。話を聞いたパブリッシャー2社の幹部(匿名希望)によれば、Twitterの参照トラフィックは約半分に減ったという。

ミレニアル世代にフォーカスする大手デジタルパブリッシャーのソーシャル部門責任者によると、Twitterからの参照トラフィックは、2022年の第3~4四半期にかけて同社のサイト全体で36%減少したと話す。オーディエンスの規模が小さく、Twitterフォロワー数も少ないサイトのなかには、最大で99%もの減少を記録したものもあった。第2~4四半期にかけて、同社のTwitterトラフィックは、42%減少している。Twitterトラフィックは同社のトラフィック全体の平均3~5%を占めており、10月にモーメントが廃止されるや半減したという。

大手ローカルニュースパブリッシャーのソーシャル部門責任者によれば、Twitterからのトラフィックは年間を通して減少しているが、10~12月にかけては半減し、全体に占める割合は約5%から3%へ下がったという。

モーメント廃止の影響

両氏はこの激減の主な原因に、Twitterモーメントの廃止を挙げた。この機能を使えば、ニュース価値のある大きな出来事に関するコンテンツを、パブリッシャー各社はキュレートし、強調することができた。

「(我々は)Twitterモーメント戦略に力を入れていた。モーメントは非常に大きなトラフィックソースだった。(モーメントが廃止されたせいで)トラフィックも参照も急落した」と、ローカルニュースパブリッシャーの幹部は語る。かつてのTwitterは、Googleに次ぐ同社にとっての最大の参照ソースだったが、いまは6位に下がっているという。「かつてなら、いくらでもTwitterをあふれさせることができた。最悪なニュースでさえ、かなりの閲覧数を稼げた。それがいまは、オーディエンスの獲得に苦戦しているニュースがどんどん増えている」

その結果、同社のソーシャルチームは、「記事を読んでもらうために、完全にプロモーション目的のツイートや、人目を引くツイート、きわどいツイートに路線変更した」という。

「最大の変化は、Twitterモーメントの消滅だ」と、デジタルパブリッシャーの幹部は語る。「現在もTwitterでコンテンツを積極的に配信しており、ベースラインと呼ぶべき標準のトラフィックが入ってきていることを確認している。だが、ヘビートラフィックの大半(急上昇やバイラルに関しては間違いなく)は、すべてTwitterモーメントから来ていた」

Twitterトラフィックの重要度

これらはどれも考えさせられる数字だが、Twitterの参照トラフィックの影響そのものは、(少なくとも今回取材したパブリッシャー3社にとっては)それほど大きくはない。ガーディアンUS(Guardian U.S.)の編集者であるベッツィ・リード氏は、トラフィックリファラーとしてのTwitterは、「ごく小さな」存在にすぎないと話す。「Twitterが戦略の要点なったことは過去一度もない。したがって、ガーディアンUSはこの現状の影響をほとんど受けていない」と、同氏は語る。

パブリッシャー分析企業のチャートビート(Chartbeat)によるデータでは、Twitterの2022年の参照トラフィックは、前年比で20%減少したという。このデータには、「ニュースおよびメディア」カテゴリーに属するチャートビートの顧客、1200サイトのデータが含まれている。

トラフィック参照ソースとしてのTwitterは、「一年以上前から信頼性に欠ける状態が続いている」と、前出のローカルニュースパブリッシャー幹部は話す。同氏のパブリッシャーのソーシャルチームは、このトラフィックの減少に備えて、リンクトインやPinterest(ピンタレスト)といった、そのほかのプラットフォームや、ニュースレターでの配信と実験を強化してきた。

「大きいと同時に恐ろしくもある実存的疑問は、『ソーシャルメディアはこれからも報道機関のトラフィックソースであり続けるのか? それとも、ストーリーテリングあるいはマーケティングのためのプラットフォームになっていくのか?』だ」と、同氏は語る。

このトラフィックの減少は、「我が社に大きな影響を及ぼす要因とはみなされていない」と、前出のミレニアル世代にフォーカスするデジタルパブリッシャーの幹部は話す。このパブリッシャーはTwitterから撤退しつつあるわけではなく、「もし2022年に年間を通じて成長が確認できていたら、おそらくソーシャルチームがTwitterに注ぎ込むリソースはもっと多かっただろう」と語る。昨年夏に路線変更を行って、Facebookでショートフォームのバーティカル動画を配信するようになって以来、同プラットフォームからの参照トラフィックのほうが安定しているという。

広告主からパブリッシャーへ:Twitterはノーだ

Twitterは、パブリッシャーに多くのトラフィックを送らないだけではなく、パブリッシャーと広告主との契約の面でも貢献していない。前出のローカルニュースパブリッシャー幹部によれば、Twitterでの広告出稿はすでに中止しているため、同プラットフォームで共有されるスポンサードコンテンツにタグ付けしないように依頼してきた広告主もいたという。

「いま現在、Twitterでの広告出稿に興味を示しているクライアントはほとんどいない」と、前出のデジタルパブリッシャー幹部は語る。Twitterは、「アンプリファイ(Amplify)」プログラムを通じて、同氏が所属するパブリッシャーの動画コンテンツに対する広告を販売できる。同パブリッシャーは「Twitterで常に出稿していたが、ここ数カ月はTwitterからのプログラムは何もない」と語る。セールスピッチの場でも、広告主であるクライアントから、「企画書にTwitterを盛り込まなくていい」といわれるという。

Twitterとパブリッシャーの未来は未完の物語

ニュース配信に関するTwitterの役割は、今後どうなっていくのか? それはまだわからない。アメリカン・プレス・インスティテュート(The American Press Institute:以下、API)が約50のニュース編集室を対象に先日行った調査によれば、Twitterの認証バッジを保持あるいは追加するために料金を支払うつもりはないと、調査対象者の67%が回答した。わからないと回答したのは28.3%、払ってもいいと回答したのはわずか4.3%だった。今後もTwitterを配信プラットフォームとして使い続けるかという質問に対しては、59%がほぼ同じように使う、20.5%が利用頻度を減らしていくと回答した。残りの調査対象者はそれぞれ「控えめに利用する」「もっと利用する」「利用するのをやめる」「慎重に事を進めていく」などと回答している。

APIで製品戦略担当バイスプレジデントを務めるエリート・チュオン氏によれば、ニュースレターなどのオーディエンスと双方向のつながりを持つほかの手段と比べ、Twitterは、いまも主にパブリッシャーの情報拡散プラットフォームとして利用されているという。

「Twitterはこの数年間、エコシステム内にユーザーをとどめておくために進化し続けてきた。Twitterスペース(Twitter Spaces)の提供を開始して、認証バッジの価値を高めようとしていた」と同氏は語る。「バイラルを簡単に生み出せるという点では、Twitterの右に出るプラットフォームはそうはなかった。しかし、報道機関がオーディエンスにリーチするために利用できる、進化したプラットフォームのひとつに過ぎず、コンテンツを特集してノイズに飲み込まれないようにするためには、製品のアップデートに対応しなければならなかった」。

[原文:Publishers lament the removal of Twitter Moments as referral traffic dips

Sara Guaglione & Marty Swant(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)

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