メタバース をホリデー商戦に取り込むブランドたち:早期参入の利点は「エンゲージメント」

DIGIDAY

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ブランド各社はこのホリデーシーズンで、買い物客にマーケティングを行うため、ますますメタバースに傾倒しつつある。

たとえばパックサン(Pacsun)のホリデーキャンペーンは「パックバース(PacVerse)」と呼ばれている。同社は発表の中でロブロックス(Roblox)上でのパックワールド(PacWorld)体験の拡張を予告しており、ホリデーギフトショップや仮想試着が行われるとしている。同社は、これらの機能拡張により、ブランド価値とカスタマーエクスペリエンスを高めることができると述べている。一方、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)は、自社のeコマースサイト上で利用できる、マルチブランドのメタバース百貨店を開設し、ホリデーシーズンをテーマにしたスペースで買い物ができるようにした。

このホリデーシーズンにノイズを排除するため、各小売業者はこのホリデーシーズンにメタバースにおけるプレゼンスを確立し、買い物客に独自のエクスペリエンスを提供しようと試みている。いくつかの小売業者は今年メタバースの実験を行ってきたが、長期的な戦略の一環として、このチャネルをホリデーマーケティングの計画に組み入れ、売上を生み出すことに期待している。買い物客はこのホリデーシーズンにもさまざまなチャネルで買い物をするため、各ブランドは近い将来、メタバースが買い物でより大きな役割を果たす可能性を手にしている。しかし、メタバースから費用対効果が得られるようになるのはまだ先のことだと、専門家は警告している。

人々が生活の大部分を過ごす場所に

インフルエンサーマーケティング企業のインフルエンシャル(Influential)のCEOを務めるライアン・デタート氏は、このホリデーシーズンにおける小売業者のマーケティング関連の決定に影響を及ぼす要因がいくつかあると語る。多くのマーケターにとって、メタバースは、たとえ自社のオーディエンスが、店舗内や、店舗の付近にいなくても、ブランドとデジタル領域でつながることを可能にすると、同氏は語る。メタバースはいまだ実験段階だが、早期にこのプラットフォームに参入したブランドにとって多くの可能性を秘めている。

同氏は次のように述べている。「メタバースは、人々が生活の大部分を過ごす没入感のある場所となることが見込まれている。そのような場所に、店舗、ブランドの広告、エクスペリエンスを置くことにより、さらに多くの収益と、収益化の機会を総体的なレベルで生み出すことができると期待されている」。Z世代、ミレニアル世代、X世代は今後5年間に、メタバースで毎日4時間から5時間を過ごすと、マッキンゼー(McKinsey)の調査では予測されている。

一方、このホリデーシーズンは、1年のうちでも、各ブランドがクリエイティブなマーケティングチャネルをテストするのによく使われる時期だ。たとえば、化粧品ブランドのトゥーフェイスド(Too Faced)は、SMSのコンシェルジェサービスエクスペリエンスを利用して、買い物客にギフトの案を提示し、いくつかの質問に回答する。また、JCペニー(JCPenney)は、Facebook Liveを活用し、セレブリティの出演や、ゲームを取り入れた1時間の番組を配信している。

エンゲージメントが成功のカギに

メタバースは今年、ブランドにとって、特に若い層の消費者にリーチするための人気のあるチャネルとなった。たとえば、パックサンのメタバースキャンペーンでは、ブルーク・モンク氏やマシュー・シモノー氏など、TikTokの人気コンテンツクリエイターを起用し、これらのクリエイターのフォロワーの注目を集めようとしている。パックサンは以前、メタバースやNFTに関する取り組みを進めるにあたり、Z世代の消費者に注力していると、以前の対談で米モダンリテールに語った

パックサンの共同CEOを務めるアルフレッド・チャン氏は当時、「当社の消費者は、我々が次世代と呼ぶ層だ。現在は主にZ世代で、数年後にはアルファ世代になるだろう」と述べていた。同社は、デジタルファースト戦略の一環として、これらの活動により、若年層の顧客獲得を図りたいという。同社の2021年5月のデジタル売上は、2020年の同時期と比較して65%も増加した。

また専門家は、マーケターがメタバースを使用する方法は、従来型のチャネルとは大きく異なり、買い物客がブランドと関わることができるような要素を追加しているものもあるという。たとえばブルーミングデールズの仮想百貨店では、ラルフローレン(Ralph Lauren)やネスプレッソ(Nespresso)などのブランド用に独自の空間が用意されている。ラルフローレンに割り当てられた空間では、買い物客がスキーロッジに入ることができ、ネスプレッソの空間ではパリ風のカフェを訪問できる。

エンプリファイ(Emplifi)の最高戦略責任者を務めるカイル・ウォン氏は、メタバースの初期の頃は、エンゲージメントによって戦略の成功が定義されていたと語る。ナイキ(Nike)などのブランドが、メタバースでブランドのエンゲージメントを構築する際、ユーザーに報酬を与えていたのは、そのためだ。ナイキは11月に行われた別の発表で、仮想商品を共同で作成し、ロイヤルティを獲得する機会を、消費者に提供すると述べている。

同様に、アメリカンイーグル(American Eagle)は季節ごとのプロモーションでロブロックスと協力しており、利用者が参加すると5ドル(約695円)のギフトカードが当たるといった、インタラクティブなチャレンジも開始している。

売上と結び付けるには早すぎる

しかし近い将来は、エンゲージメントだけでは十分な効果が得られない可能性があるだろう。ウォン氏は次のように述べている。「新しいプラットフォームはすべてそうであるように、メタバースも成熟するにつれてコンバージョンと測定が重要になるだろう。ブランドがメタバースの研究開発とマーケティング資金に多額を投資するなら、ダイレクト販売については複眼的にしっかり検討する必要があるだろう」。

このホリデーシーズンに、メタバースを活用する小売業者が増えていることは、小売業者がメタバースを単なるブランド構築ツールではなく販売を促進するものと見なす傾向が増していることを示している。たとえばコールズ(Kohl’s)は、Facebookとインスタグラムのユーザー向けに、メタバースエクスペリエンスを提供しており、ユーザーは拡張現実レンズを使用して商品を選び、コールズの専用キャッシュで購入できる。

しかし、消費者がこの期間にメタバースで買い物をするよう促すのは、また別の課題となる。CI&Tのコネクテッド小売消費者インサイト調査(Connected Retail Consumer Insights Survey)によると、回答者の81%はメタバースで買い物をしたことがあるかという質問に「ない」と回答した。

デジタルコンサルティング企業のCI&Tの小売戦略ディレクターを務めるメリッサ・ミンコウ氏は、次のように述べている。「メタバースは依然、エンゲージメントを売上と結び付け、完全に相関させる能力という点においては、まだ実用段階ではない。エンゲージメントが得られることは間違いなくすばらしいことだ。しかし、そのエンゲージメントによって、そのオーディエンスから堅調な売上を得られると断言できるかは疑問だ」。

[原文:How brands are incorporating the metaverse into their holiday marketing]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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