レイオフ を繰り返す小売企業が増えている:「今になり苛酷な調整を行おうとしている」

DIGIDAY

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数カ月前に人員削減を発表したにもかかわらず、多くの小売業者はコスト削減を行い、事業の無駄を削ぎ落すことを求めて、さらにレイオフを行おうとしている。

オンラインの家具企業であるウェイフェア(Wayfair)は昨年8月に870人の従業員をレイオフしたが、さらに1750人の従業員を削減しようとしている。創業者がeコマース事業の資金調達をするのを支援するクリアコ(Clearco)は、7月に職員の25%をレイオフしたあと、さらに従業員を30%削減する。Amazonは削減の人数を1万人から1万8000人に拡大する。そしてスティッチフィックス(Stitch Fix)は6月に従業員の15%をレイオフしたあと、さらに20%削減しようとしている。

これらの行動は全体として、消費者行動に関する共通の懸念を反映している。過去2年間、特に2021年は小売業者にとって有利な年だったが、消費者は現在支出を切り詰めつつあり、企業はその差を埋めようと試みている。国勢調査のデータによれば、インフレをひとつの理由として、2021年の第3四半期から2022年の第3四半期までの12カ月間で、米国の小売売上高は9.1%増加した。2020年の第3四半期から2021年の第3四半期までの12.8%よりは増加が小幅になっている。しかし、これらの変化は一夜で起きたものではなく、その過程で自社のビジネスを十分に適応させなかった企業は現在苦しい立場にあると、専門家は述べている。

販管費率の高い企業

ローティスブルーコンサルティング(Lotis Blue Consulting)のパートナーであるアーロン・セーレンセン氏は、「2022年の中盤、そしてホリデーシーズンに向けての成長率がどの程度かについて、誰もが計算を誤ったと思う」と、米モダンリテールに語った。「その一部として、小売業者が行っていた複雑な分析は、今後どれだけの需要があるのか、それを支えるためにどれだけの従業員が必要なのかということだ」。

企業は、自社の運営コストや、そのほかの要素を常に把握しておく必要がある。このため、「これらのコストに目を向けないと、全体的にマクロ経済の状況がますます厳しくなったとき、先に立ちはだかる障害に対処するための余裕がなくなる」と、エスエスエーアンドカンパニー(SSA & Company)のマネージングパートナーであるマシュー・カッツ氏は述べている。「問題になっているのは、途中で計画の調整を行わず、今になって大急ぎで苛酷な調整を行おうとしている組織だろう」。

ひとつの指標となるのが、収益に対する販売費および一般管理費(SGA)の割合が高い企業だ。たとえばスティッチフィックスは、2022年7月30日までの3カ月間について、4億8190万ドル(約626億円)の純収益を報告した。同社のSGAはその60%で、2億9130万ドル(約379億円)だった。2021年7月31日までの3カ月間について、同社のSGAは2億4470万ドル(約318億円)で、総収益の43%近くだった。

一方で、ウェイフェアは2022年9月30日までの3カ月間について28.4億ドル(約3690億円)の純収益を報告した。同社の販売、運営、テック、および一般管理費のコストはその23%の6億5600万ドル(約853億円)で、2021年9月30日までの3カ月には4億9760万ドル(約647億円)だった。

同業他社へのドミノ効果

また、パンデミック初期の頃と比べてeコマースは減速しており、需要を満たすため急いで従業員を雇用した企業は現在再計算を迫られている。ウェイフェアは年率換算コストの削減により7億5000万ドル(約975億円)の節約をめざしているが、そのCEOを務めるニラジ・シャー氏は、「今になってみれば、テクノロジーの同業他社と同じように、この数年間で投資を急速に拡大しすぎた」と認めている。Amazonの全世界の従業員数はパンデミックのあいだに75%近くも増えたが、同社のCEOを務めるアンディ・ジャシー氏は、同社が「この数年間は急ピッチで雇用を行った」ことを認めている。またAmazonは2020年と2021年に、現在不要となっている大量のフルフィルメントインフラを買い取った。一方でウェイフェアはドイツで容量を追加し、アジアとヨーロッパにおける物流業務を拡大した。

これらに加えて、現在のレイオフにはドミノ効果のようなものも起きていると、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)の最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は語り、多くの企業が次々と人員削減を発表しているのはそれが理由だと述べる。「各社は同業他社を見習っている」と、同氏は述べる。「一般に、これらの企業がレイオフを発表すると、投資家たちはそれに報いて、株価が上昇した。それによってほかの小売業者も突然、同じことをしてもいいという雰囲気になった」。

しかし、何回も人員削減を行えば、企業も従業員も損害を受ける。カッツ氏は次のように述べている。「リンゴは一回しかかじれないということわざがある。最初の調整ですべて、または大部分の調整を行うべきだ。経営者にとって、何回も調整を行うのは極めて困難な状況だ。チームはメッセージへの信頼を急速に失うことになる」。

[原文:Why more retailers are introducing new rounds of layoffs]

JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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