ギター初心者 に照準を合わせる、フェンダーの TikTok 戦略:「音楽はTikTokの一部になっている」

DIGIDAY

ギター大手フェンダー(Fender)は、TikTokマーケティング演奏の音量を上げている。初心者に刺激と習得のコツを伝授する動画コンテンツで、ブランドの親和性をさらに高めるのが狙いだ。

2022年に創業76年目を迎えた老舗ギターブランド、フェンダーがTikTokに参入したのは2021年9月。現在、フォロワー数は100万人を越えており、毎月約14万2000人を新規に獲得してきた計算になる。フォロワー数増を目指し、同社はペイド・オーガニックの両アプローチを取り、ミュージシャンおよびインフルエンサーの力を借りるとともに、基本的な練習パターンやコツなどを教える、初心者向けのハウツー動画を配信している。

「2021年、フェンダーのハッシュタグはTikTokで1億5700万回視聴された」と、同社CMOエヴァン・ジョーンズ氏は話す。「それがいまや5億回に達した。ギター・トック(Guitar Tok:ギターにフォーカスするTikTokコミュニティ)の総視聴数は実に25~30億回にのぼる。つまり、ギターを弾くオーディエンス、それもフェンダーを使うオーディエンスは、固定客として確実に存在するということだ」。

コミュニティ感覚の創造が狙い

フェンダーのデータでは、過去2年間に初めてギターを手にした人は1600万人に上るという。

「彼らが弾けるようになるための、そして自分に合ったギターを選ぶための手助けをしたい、というのが我々の基本的姿勢だ」と、ジョーンズ氏は続ける。「さらに、インフルエンサーやクリエイター、ギタリストたちと深く繋がり、音楽的創造を中心とするコミュニティ感覚を確実に育むことも、我々にとっては重要となる」。

コミュニティ感覚の創造は実際、2021年9月の参入以来、同社のエージェンシーであるプレイテル(Praytell)とともに実行するTikTokコンテンツ戦略のひとつだ。同社はまず、ハッシュタグ #FenderJamSesh を付けた投稿から始め、TikTok上に数多く存在するギタリストたちとの、いわばデジタルジャムセッションの場を創造した。以来、フェンダーはTikTokにおいて、ブラック・ピューマズ、トム・モレロ氏、スネイル・メイル、ジャパニーズ・ブレックファストをはじめ、30組のアーティストと組み、商品デモやジャムセッション、ハウツー動画などを制作している。

TikTokに投入する予算額も、現在の総メディア費についても、フェンダーは明かさなかった。ただ、ジョーンズ氏によれば、年間収益の10%をマーケティングおよびデジタルメディア戦略に費やしているという。調査会社カンター(Kantar)のデータによれば、2021年度、フェンダーのメディア支出は420万ドル(約4億6200万円)であり、2020年度の150万ドル(約1億6500万円)を大きく上回った。ただし、ソーシャル支出はカンターの調査対象外であるため、この数字にソーシャルメディア費は含まれない。

「音楽はTikTokの一部になっている」

ギター初心者へのリーチを目指し、コミュニティ構築にフォーカスする手法は、フェンダーにとって理に適った戦略であり、その理由は、すでに「音楽はTikTokの一部になっている」事実にあると、パフォーマンスマーケティングエージェンシー、テイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者デュアン・ブラウン氏は話す。「然るべきインフルエンサーや音楽および音楽関連の物事に熱心な人々を適切に選べば」、この戦略は間違いなく当たると、氏は言い添える。

フェンダーは今後も、インフルエンサーの力を借り、TikTokやほかのソーシャルメディアチャネルにおいて、ハウツー/教則動画の配信を続けていくという。

「ギターの習得は楽しい、刺激に満ちた、誰でも手軽にできること、という事実を周知させるべく、なおいっそうの努力を続ける我々の姿が見られることになると思う」とジョーンズ氏は話し、自社のデジタルおよびソーシャルチャネルにおいて、「習得を中心とするコミュニティ」を構築する計画があると言い添える。

「ギターの習得は堅苦しい、退屈なものである必要はないし、昔ながらの教授法という固定観念に縛られる必要もない」と氏は語る。「さまざまなインフルエンサーやアーティストがおり、教え方の好みもさまざまだからだ」。

[原文:‘Built-in audience’: Inside Fender’s educational, inspirational TikTok strategy to tune in new guitarists

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU

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